尊師・谷口雅春先生著『善き人生の創造』第二十六章<新生活への出発> (1382) |
- 日時:2016年05月06日 (金) 06時58分
名前:平賀玄米
これだけでもエバンスの家庭はもう充分悪過ぎるほど悪いのだが、かてて加えてエバンスはシカゴにいる自分の妹のケイトから今手紙を受取ったところである。その手紙には妹の娘のジェニーが 身体が虚弱なので、もっと暖かい気候の所へ転地する必要があるという医者の診断なので、日光の豊かなカリフォルニアに居を構えているエバンスの宅へしばらく同居させて欲しいという手紙であった。
シカゴにいるエバンスの妹はエバンスがどんな惨めな生活をしているのか知らないらしい。知らないからこそこんな手紙を寄こすのである。妹の家は経済的に豊かであって、エバンスの家庭などでは見たこともないような贅沢をしているので、その妹の娘のジェニーがこの家へ来ると云うことはエバンスの家庭にとっては恐慌であった。
「私いやだわ。ジェニーさんが家へ来たりしたら、私などとても及ばない立派な服装をして私達に見せびらかすに決まってるわ。そんなこと私耐えられないわ」と娘のエディスはぶつぶついうのであった。
「ジェニーはこんなぼろぼろの家になんか住めっこないわ。」と母親のエバンスも何の部屋飾りもないみすぼらしい部屋を見廻しながら言った。「ケイトにお母さんは手紙を書いてあげるわ、来て頂くにも部屋がないって。」
エバンは呟いた。嘘を書かねばならぬと思うと、ちょっとためらって顔は赤くなった。「部屋がないなんて嘘だわ。だけれども部屋っきりで何の飾りも無いんだもの。」と彼女はもう一ぺん呟きながら何かをこらえるように口唇を引き締めたが、「そんなことは問題にならないわ。」
つづく
<平成28年5月6日 謹写> ありがとうございます 合掌。
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