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(131)投稿日:2005年01月26日 (水) 20時09分
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早くも今年の高値、到来?――信用評価損益率に過熱感(スクランブル)2005/01/21, 日経金融新聞, 20ページ, 有, 1511文字
二〇〇四年十二月九日以来約一カ月半ぶりに日経平均株価の下げ幅が一〇〇円を超えた二十日。市場では「ネット競売大手イーベイの決算を受けた今夜の米国株が下がる可能性を事前に織り込みにいった」との説明がもっぱらだった。本国の株式相場下落に合わせて外国人投資家が売っているとの声もあった。 だが、日本株自体に過熱感が出ていたことが原因との見方も多い。例えば信用取引の評価損益率上昇。〇四年五月に株価が急落した後はマイナス一〇%前後で推移していた評価損益率は、グラフのように十四日時点でマイナス二・九八%まで上がった。 信用取引の評価損益率は、信用取引で株を買っている投資家が平均どの程度の含み損益を抱えているかを示す指標で、日本経済新聞の木曜日付に原則として掲載している。通常、信用取引の買い手は値上がりしている銘柄には早めに利益確定売りを出すが、値下がり銘柄の反対売買は遅れがちなため評価損益率もマイナスになることが多い。 □ ■ □ 株価が上昇し信用取引の買い方の採算が改善すれば評価損益率がプラスに接近することもある。「そうなった時は通常、相場が天井を打つタイミング」(新光証券の瀬川剛エクイティストラテジスト)。実際、グラフを見ると分かるように評価損益率がマイナス三%付近まで上がってくると株価はその前後か少し遅れたところで高値を付ける。 特に信用取引が多いインターネット証券の評価損益率は高い。松井証券では十一日に評価損益率が市場全体を上回るマイナス〇・九%まで上昇しており、「警戒感の強まる水準」(同証券)。「会社によっては評価損益率がプラスになっているところもあるのでは」(準大手証券)との声も出ている。 他にも高値警戒感が強まるデータはそろっている。東京証券取引所第一部の値上がり銘柄と値下がり銘柄の比率である騰落レシオ(二十五日移動平均)は十九日に今年最高の一三六%まで上昇。コスモ証券の東健一ストラテジストは「ここまで上昇するのは通常年に一回あるかないかで、その後株価は必ず調整する」と指摘する。「裁定取引の現物株買い残高が十二月上旬から約一カ月で三〇%強増えたのも、将来の上値を押さえる要因」(プラウド投資顧問の井上哲男最高経営責任者)との声もある。 □ ■ □ 過熱感を示す指標に株価が敏感に反応するのは市場参加者に占める短期投資家の割合が大きいため。委託取引に占める個人の売買シェアは約三〇%と外国人(五〇%弱)に次ぐ規模で、その多くは短期の値幅取り中心のネット投資家によるものだ。加えて「最近は個人の動きに追随するヘッジファンドも出てきた」(国内系運用会社)。高値警戒感が広がれば短期投資家はすぐ利益確定売りを出し、株価は下がる。 問題は、グラフを見ると分かるように過去には評価損益率がピークを付けた時が株価の年間高値になる事例が多いという点だ。経験則通りなら今年は早々に高値を付けるタイミングが到来してしまったということになる。 市場ではそこまで悲観する人は少ない。景気や企業業績といった経済の基礎的条件はまだ強いとの見方が多いからだ。「年半ば以降に世界景気回復が進むのを織り込むかたちで株価は〇四年の高値一万二一六三円を上回る」(第一生命経済研究所の嶌峰義清主席エコノミスト)との声もある。目先は過熱感で下げても、いずれは景気や企業業績を反映して株価も再び上昇するというわけだ。 とはいえ、足元で株価が伸び悩んでいるのは、目先の値動きを追う短期投資家の影響が大きいためでもある。「評価損益率のピークが年間高値」にならないためには、長期の投資家がもっと増え、市場の厚みが増すことが欠かせない。(水口博毅)
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