三角の部屋 レコードコレクション 

                                            

 

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[35]胸を打つチェコ ヴラフ四重奏 - 投稿者:taro

眠気を誘うハイドンの弦楽四重奏を聴きながら、その前にかけたベートーヴェンの弦楽四重奏18番の感動の余韻に酔いしれていた。
このハイドンに比べれば、なんと感動的な演奏だったことか。なかなかベートーヴェン演奏の優良盤に巡り合うのは難しいが、この古いヴラフ四重奏の演奏は四人の演奏によって創り出される美の世界を目の前に繰り広げてくれたような気がする。
音楽の美とは実に漠然としているように聞こえるが、それは均衡の取れた音の響きによって、聞き手である人間の精神が「知」の世界に満たされることを言う。浮薄な「情」の世界ではなくあくまで人の精神の中に宿る気高い意識のことを言うのだ。このLPの演奏は1962年といういうステレオのできた初期の録音によるオリジナル盤だが、演奏には決して奇抜さもなく、実に自然なベートヴェンのイメージを作り出そうとしているように感じた。

 それに引き比べ、冒頭のハイドンの弦楽の響きはどうしたことだろう。なんとも眠たげに演奏する演奏者のせいというより、ベートヴェンの師であるハイドンが聴衆を唸らせるような音楽創作の意欲が薄れていた頃の作品かもしれない。
 私の好きなハイドンのピアノソナタとは雲泥の差がある。

( 2020年10月13日 (火) 13時06分 )
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