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頭からの新スレを立てるのは、ページが重くなると思いますので、更新分のみ掲載させていただきます。悪しからず…。
第十四話 空を制する者たち 序 二度目の帝国軍キメラBLOX部隊の襲撃を退けた共和国軍BLOX戦闘隊『Glints』。あの戦闘から数日経った今、帝国軍航空隊の航空偵察の頻度が以前よりも増してきているようであった。 1 「それにしても最近は帝国の航空偵察が多くなりましたね」と司令室の窓から空を眺めながらエリナが言った。二度目の戦闘後、キリクリウスから最も近い帝国軍基地から昼夜を問わず、航空偵察を行っているのである。「正直、目障りだな」バイスがエリナの傍らで言う。「しかし兄さん、撃墜したら更に増えるか、近辺一帯空爆される危険性がありますよ」と一言返す。「それもそうか・・・」腕を組み、考え込む。「どうしたでござるかな?兄妹揃って悩んでいるように見えるでござるが」どこからともなくサスケの声がした。「えっ、サスケさん?どこにいらっしゃるのですか?」周囲を見渡すエリナ。「ここでござるよ」天井を離れ、ルティッシュ兄妹の前に姿を現す。「何を考えていたでござるかな?エリナにバイスよ」「貴方もお気づきでしょう。先日の戦闘以後、この辺一帯の偵察の目が厳しくなっているということを」バイスが答える。「そのことでござったか。その事については拙者も少し頭を抱えていたでござるよ」頭を掻きながら言う。「撃ち落したいのが本音でござろう、バイスよ」とバイスの目を見て言う。「本音はそうですが、エリナがさっき言った通り空爆の恐れが…」と口をつぐむ。「なら、こちらから仕掛ける、というのはどうでござるかな?」と二人に問う。「こちらから仕掛ける?」疑問符付きで復唱するエリナ。「そうでござる。奴らはここから一番近い帝国軍基地から飛来しているのでござろう。大した距離でもない。BLOXでも往復は可能でござろう?」と返す。「いくらなんでも無茶な話じゃ」と突っかかるバイス。「それは百も承知。大佐殿が許してくれるかはわからぬでござるがな」と返すサスケであった。「細かいことは後で大佐殿に話すでござるよ。夕刻ここにエリナはユイアを、バイスはヒオウとキスカを連れてきてくれ」と言い残し姿を消したのだった。エリナは直立不動、バイスは腕組をして立っていたのだった。 2 夕刻になりサスケの指示通り、ヒオウ、キスカ、ユイア、バイス、エリナそしてガイズの7人が顔を揃えた。「やっと俺たちの出番ですね」キスカが気分上々で言う。「兄貴、そんなんだと死ぬぞ」とヒオウ、一言兄の発言に突っ込む。「何だと!」キスカがヒオウに掴み掛かろうとした時、「やめんか、お前ら!」ガイズの拳骨が二人の頭に降った。二人は殴られた頭を抱えその場に座り込む。「これは非常に危険な作戦にござる。浮き足立つ者は除外するでござるよ」二人を睨みながら言うサスケ。「すみません」小声で謝る二人であった。「にしても珍しいな。お前がこんな無茶も承知のような作戦を持ちかけるとは」サスケの方を向いて言うガイズ。「昼夜問わずの敵の偵察が正直目障りだというのと、いつも敵から攻められてばかりではさすがに厳しいと思ったからでござるよ。それに拙者たちの機体の足なら強襲を掛けて直ぐ帰投も可でござるし」と答える。「いつも俺たちが攻められては突き返す一方だったからな。正直黙ってられんのは解るが、勝算はあるのか?」不安を隠せないガイズ。「心配御無用でござる。ここにいるのは皆ホムラ准将の傘下にいた精鋭ばかり。それに機体に装備してある迷彩を見破れるのは拙者のみ。帝国軍に破られることなど無いでござるよ」と思慮深げに答える。「わかった。だが、無理は禁物だ。何かあったら直ぐに連絡を入れろ。増援を送る」と念を押しながらも作戦遂行を許可するガイズであった。「了承いただき感謝でござる」と謝意を示す。続けて、「目標はここから南西に500km離れたライガルフ空軍基地。ここには計200機近い空軍ZOIDSが配備されているでござる。そして、その要塞を守備する帝国キメラBLOXが約50機。陣容はほぼ新鋭機のみ」と語る。更に、「昼間に襲撃をかけるには拙者たちに分が無いでござるから、夜襲をかけるつもりでいるでござるが、どうかなバイス?」そう尋ねるサスケ。「確かに夜襲の方が我らにとっては有利。しかし、この兄弟が不安なのですが…」とヒオウとキスカの方を見るバイス。「俺たちをなめるな!」とバイスを睨むキスカ。サザナミ兄弟、兄『サザナミ・キスカ』。最近ロールアウトしたばかりのジェットファルコンを駆る空軍大尉。同じくフェニックスを駆る空軍中尉である弟『サザナミ・ヒオウ』。共に階級は低いもののその潜在能力は計り知れない。「そこまで言うのなら、しっかりとやってもらわねば困るでござるよ。よいか、キスカ、ヒオウよ、これは訓練ではない。本物の戦争にござる。生半可な気持ちでかかられては困るのだ。それを肝に銘じておくがよかろう」と鋭い目つきでサザナミ兄弟に言うサスケであった。「了解しました、中佐」直立不動で敬礼をするサザナミ兄弟。こうして彼らの決死の奇襲作戦が実行に移されるのだった。 3 キリクロイス山格納庫。「サラよ、出番でござるよ。お前の真の力を見せ付ける日が来たでござる」とサラマンダーF‐44に声をかけるサスケ。『ゴォォォォォォォォォォン』低い声を上げて答えるF‐44。「ハハハ、久々に戦場へ出られるのが嬉しいのでござるな。今回の作戦は夜間空爆、敵空軍ZOIDSの掃討戦にござる。お前の得意分野でござろう。お前は通常のサラマンダーを空中戦闘能力、爆撃能力を向上させてサラマンダーの傑作機。准将殿もすごいことを思いついたでござるな」と言う。『グゥゥゥゥゥウ』少し悲しげな声を上げるF‐44。「おっと、自分でも気づかなかったでござるよ。昔のことを思い出させてしまったでござるな。拙者とて辛いでござるよ。あの方を失ったことは…」と虚空を仰ぐのだった。 一夜明け、作戦実行の日の朝、Glints航空隊の面々はキリクロイス山格納庫に通された。「こんな場所があったんですね。今まで全然気付きませんでした」とてつもなく広い格納庫に驚くユイア。「これからは、ここが我らGlints航空隊の格納庫にござる。一機、一機余裕を持って格納出来るでござるよ」と隊員達に告げるサスケ。「デカすぎる…」キスカが口を開けたまま周囲を見渡す。「では、各員機体の格納場所を決め、機体を移動し、今夜の作戦用の兵装搭載をするように」と指示を出すサスケ。サスケはこの時点で航空隊の指揮権をガイズから委譲されていたのであった。「さて、拙者も行くか」愛機F‐44の許へ走る。機体の前には今回の作戦で使用する兵器が並んでいた。現在、F‐44は通常のサラマンダーと同一の武装を施してあるが、今回の作戦は爆撃により、武装を換装することとなった。 腹部の多連装バルカンを25連装マイクロミサイルポッドにへ、背部対空ミサイルを20連装ミサイルポッドに、そして、翼下に対地拡散弾を搭載することにしたのであった。 サスケは大型クレーンを駆使し、各武装の換装を手早く行った。今、彼が行っている作業が終了した後の姿がF‐44の真の姿に近いのかもしれない。しかし、その全容を知るものは誰一人としていないのである。サスケは彼の体質上、通常機体と同一の武装状態にしていたのであった。作業開始から数時間後、「よし、完成にござる。この姿も凛々しいが、重たそうに見えるのが本音にござる」と小声で言ったのだった。 4 早朝からの武装の換装作業は昼には完了し、航空隊隊員たちも含め、『Glints』隊員一同に会し食事を摂ったのだった。その昼食の席で、「皆、手を止めて聞いてくれ」ガイズが隊員全員に声をかける。皆、直ぐにガイズの方を向く。「皆も知っての通り、この間の戦闘以来、帝国空軍の航空偵察の目が厳しくなってきている。そこでサスケが無茶を言い出して、ここから南西に500km行ったところにあるライガルフ空軍基地を叩くことに決定した。この作戦は空軍独自の作戦となる」と告げる。「俺たちは仕事無しかよ」ライが愚痴をこぼす。「だが、空軍だけでは厳しい際には、我らGlints全機体による全面作戦へ移行する」と付け足す。「スサノオ」「はっ」「アイツを出せるようにしておいてくれ。念のためにだ」と指示を出す。「了解しました。隊長」スサノオは答える。『タケガミ・スサノオ』中佐。共和国軍高速強襲隊に所属している敏腕の陸軍中佐。本隊にいた当時は『シャドーフォックス・ランサー』に乗っていた。が、Glintsへの転属となり、B‐CASの実験的機体である凱龍輝のカスタマイズ機、『炎龍輝』に乗ることとなった。「空軍は今夜2300時に強襲をかける。これに際し、我らは基地一帯に厳戒網を張る。もし、連絡が有れば直ぐ様全機出撃とする」と言う。全員起立、敬礼しこれに答える。「以上だ。食事を続けてくれ」緊張の空気を残しながらも食事を皆済ませ、自室に戻っていった。航空隊員たちを除いて。 5 作戦の最終確認をするでござる。拙者たちは2230時にここを出て、M1.5でライガルフへ向かう。30分もあれば飛行可能な距離にござる。寝込みを襲う形になるでござるが、敵空軍ZOIDSを先に潰すでござる。それと平行して電波妨害、通信施設の破壊をしてもらうでござる」と概要を告げるサスケ。「電波妨害はエリナ。投弾後地上へ降下、ディメトロの3Dレーダーで電波妨害をやってもらうでござる。妨害半径は最大で。次に通信施設の破壊をユイア。エリナと同様に弾薬を投下後、通信に用いられるアンテナ等を片っ端から叩いてもらいたい」と先ず女性陣に指示を与える。「俺たちは何をするんですか?」ヒオウが尋ねる。「お前たち2人を含め、拙者たちは投弾後、生き残った敵機の掃討戦に移るでござる。空中戦も覚悟しておくでござるよ」と返す。「よし、了解しました。暴れてやります」「だから…」バイスが勇み立つキスカの耳を摘む。「わかってますよ、中佐」キスカが耳を押さえながら言う。「バイスよ、おそらくはロドゲと差しでやり合うでござろう」と告げる。「セオリー通り、腕の武装を破壊し、核を叩きます」と答える。「迷彩を纏っていればそんなこともないかと…」ユイアが小声で言う。「それもそうでござるな」珍しくボケらしきものを見せるサスケであった。それを見てユイアは横でクスクス笑った。「気掛かりなのは、ジェノ系、BF系がいるかどうかでござるな」と険しい表情で言うサスケ。「奴らの荷電粒子砲はまともに受けたら終わりですからね」と追従するバイス。「もしいたとしたら最優先で叩くのみ」と言うサスケ。続けて、「空中戦でかかってきても敵ではござらん」と余裕の表情を見せる。「無理だけは絶対にするな」重々しくガイズが口を開く。「それは重々承知しているでござるよ、大佐殿。現に大佐殿はスサノオに声をかけているではござらんか。アレを呼び覚ますほど拙者たちはヘマはせんでござるよ」と返す。「なら、いいが。こういう時のお前ほど怖いものはないよ」とサスケに正面から向き合って言うガイズであった。「大丈夫でござるよ…」と軽く流し、「よし、この辺でよいでござろう。各員機体の最終チェックをし、2130時に格納庫に集合」と作戦開始前の最終指示を下す。「了解」皆答える。「では、解散」出撃前の最終会合が終わったのだった。 6 集合定刻1時間前、2120時。「出撃1時間前、この緊張感、本隊にいた頃を思い出すでござるな」F‐44の足元で言うサスケ。「思い出すも何も、半年前までは本隊にいたではないですか」とコツコツと足音を立てながらユイアが姿を現す。「少し早かったですかね?」と微笑みながら言うユイア。「定刻10分前。早くもなかろう」バイスがエリナを伴って自分の機体の影から現れる。「集合が早すぎることに越したことはないでしょう」「ですね」サザナミ兄弟も姿を現す。「何でござるか。皆集まったか」続々と集まって来た航空隊員たちを見て言う。「部屋にいるよりここにいた方がいいんですよ」とエリナ。「ハッハッハ、お主たちも准将殿に少し似てきたでござるな」と軽く笑う。彼の言う准将ことホムラ・アスマ准将についてはご存知かと思うが、彼もよく格納庫で愛機の傍にいたのであった。「それもそうですよ。皆あの方の部隊の出身なんですから」とユイア。クスクス笑いながら言う。「全員揃ったか。では、定刻も近いことでござるし、機体の再最終チェックにかかれ」と指示を出す。彼以外の者は自分の愛機の下へ走る。彼は夕食後ずっとここでF‐44のコクピットにいた。細かい調整を済ませ、静寂の時を愛機と過ごしていたのである。『グゥゥゥゥゥ』不意にF‐44が声を上げる。「どうしたでござるか、サラ」そう言いながらコクピットに駆け上がるサスケ。コクピットに着き、ディスプレーを覗き込む。すると、左翼の拡散弾ユニットの接続基部が点滅していた。「何でござるかな?」F‐44に左翼を広げさせ、綱を渡し接続基部を覗き込む。「あらま、こんなところに…」接続部と翼の間の狭い隙間に小鳥が入り込んでいたのである。「ユイア、ちょっと来てくれぬか」ユイアを呼ぶサスケ。「何ですか?サスケさん」「すまぬが、クレーンを動かしてくれぬか?拡散弾ユニットが少々おかしいのでな」と旨を伝える。「了解しました」ユイアは直ぐにクレーンに飛び乗り、ワイヤーを拡散弾ユニットに近づける。サスケはクレーンの先から伸びるワイヤーを素早くユニットに巻きつける。「ゆっくり上げてくれ」指示通りゆっくり動かすユイア。接続を解かれたユニット、翼から離れる。そして、「ほっと」隙間からフラッと落ちてきた小鳥を手で受け止めるサスケ。その頃、ユイアはユニットを地面に降ろしていた。サスケ、下に降りる。「どうしたんですか?」サスケの顔を見て言うユイア。「この小鳥がユニット基部と翼の間に挟まっていたのでござるよ」と小鳥を見せる。「可哀そう、怪我してる」ユイアは直ぐに応急処置をする。数分後、小鳥は目を覚ましたのだった。「危なかったでござるな。あと少し遅かったら戦場まで連れて行ってしまうとこだったでござるよ」と笑みをこぼす。「サラよ、よく気付いたでござるな」グッと手を出すサスケ。『ゴォォォォ』低い声で答えるF‐44。「私、この子を本部のほうに預けてきます」ユイアはサスケから小鳥を受け取る。「しばしの別れぞ」小鳥の頭を撫でるサスケ。ユイアは小鳥を落とさぬよう慎重に本部の方へ送り届けた。彼女が戻ってくると同時に、「チェック終了です」と皆戻ってきたのだった。「どうしたんですか?」エリナがサスケの顔を見ながら言う。「実はですね‥…」とエリナの耳元で囁くユイア。「そうだったんですか。良かったですね」と微笑むエリナ。バイス、ヒオウ、キスカらは何なんだ?という顔つきでその場を見ていた。「出撃まであと数分、皆気を引き締めよ」先ほどまでとは打って変わった表情でサスケが言う。「しっかりな」ガイズが姿を現す。続けて、「決死攻に近いことを忘れるな」と声をかける。「はっ!」航空隊一同敬礼し答える。「機体に搭乗、そのまま待機」出撃予令を下すサスケ。各員機体へ乗り込む。「では、行って参ります」ガイズに再度敬礼するサスケであった。 7 「定刻2230時。Glints航空隊、出撃!」サスケの合図と共に各機システムを起動、ユイアのナイトワイズを先頭に、ディメトロプテラ、フェニックス、ジェットファルコン、シャドーイーグル、そしてサラマンダーF‐44の順に格納庫から大空へ飛び立つ。キリクロイス山上空で迷彩を起動。陣形を組む。「行くぞ!」各機、機体を目標へ向ける。Glints航空隊の堂々たる出撃の時であった…。
第十五話 閃光の風 序 帝国軍航空隊による航空偵察の目が厳しくなったキリクリウス地区。これに対し、サスケを頭とするGlints航空隊は、キリクリウスから最も近い帝国軍空軍基地『ライガルフ』に対し、空爆を掛けるという作戦を立案し、実行となった。今、『孤高の荒鷲』の傘下にいた者たちの真の力が発揮されようとしているのだった。 1 「Glints隊員総員に告ぐ。これより我々は厳戒網を張る。各員指示通りの位置に展開せよ」ガイズが司令室から指示を出す。各機自分の持ち場に展開する。「スサノオ、お前はどうする?」炎龍輝に搭乗し、スタンバイしているスサノオに尋ねるガイズ。「自分も出ます。炎がうずうずしているので」と答える。「了解した。お前はポイントWSWへ」位置を告げる。「了解」敬礼し答える。通信を切り、ゆっくり歩を進める炎龍輝。特別の隔壁が開き外へ出る。そして基本通りに迷彩を起動する。「では行くぞ、炎」各部スラスターを起動、ホバリングで所定の位置へ向かう。「何もなければよいのだが」と空を仰ぐ。漆黒の空に星が輝いていた。だがスサノオはこの闇の中に何かが潜んでいるのではないか、と心中不安でもあった。 2 キリクロイス山上空15000。「サスケより各員へ。お互いの位置は把握しているな」と普段とは異なる口調で話すサスケ。「OKです」皆異口同音に答える。「サスケさん、本気のようです」と小声で言うユイア。サスケの口調が変わる時、それは彼が本気であることを示す。「皆昼に渡したマニュアル通りに、拙者の機体を中心に鶴翼陣に展開、完了し次第出る」と陣形形成の令を出す。皆直ぐに決められた位置に着く。「いざ、参らん」『グォォォォォォォウ』F‐44の咆哮と共にGlints航空隊各機、M1.5での飛行を開始する。目標のライガルフまでを30の予定。「500kmだったら空戦ZOIDSなら一っ飛びだから楽勝だな」キスカが軽く言う。「兄貴、また説教されるぞ」ヒオウが突っ込む。しかし、周囲からは何も言われなかった。普段ならバイス辺りから一言言われるはずだからである。皆真剣そのもの。この作戦は決死行に等しいもの。無駄口を聞いていられるほど余裕などないのである。そんな時、「サスケより総員へ、前方50000に敵陸軍ZOIDSを捕捉。いかにするか?」と堅い表情を維持して言う。「叩くがセオリーかと」とまた小声でユイアが言う。「俺たちが行きます」キスカ、ヒオウが口を揃えて言う。さすが双子と言うべきか。「よし、では軽くあしらってやれ。核を撃ち抜いて起動停止にしてやればよい」と返す。「「了解!」」二人同時に答え、機首を振る。一気に高度1000近くまで降下するのだった。 3 F‐44のレーダーに映ったのはBZ‐014〜017の帝国軍新鋭BLOX。おそらくライガルフへの帰投の途中であろう。スティルアーマーを先頭に菱形の陣形で行動していた。「兄貴、俺が衝撃波で吹き飛ばす。そこを透かさずショックカノンで撃ち抜いてくれ」とキスカに言うヒオウ。「あいよ!任せておけ!」ヒオウ、兄の返事を聞き、高度を50まで下げる。地表スレスレとまではいかないが、かなりの低空飛行である。何も無い荒地に粉煙を巻き上げる。敵との距離、更に縮まる。フェニックス、M2.5まで加速。その後方をM2.0でファルコンが追う。「おらよ!」ヒオウ、敵機に接触するか否かの所で急上昇、衝撃波を敵機にぶつける。敵BLOX、後方からの急激な力に逆らえず、次々と衝撃波の波に呑まれる。「もらったぁ!」キスカ、操縦桿のボタンを押す。胴体と翼に装備されたAZショックカノン計4門火を噴く。手始めにダブルストームこと、シザーストーム、レーザーストームを瞬時に破壊する。最後尾に位置していたディアントラー、フェニックスの衝撃波の直撃で大破、身動きが取れない状態となった。「兄貴、スティルが残ってるぜ」キスカの上空からヒオウが言う。「わぁ〜ってるよ!もういっちょ連携行くぜ!」と声を掛ける。「あいな!」ヒオウ、中空域から急降下、スティルの直上から衝撃波を浴びせる。2度目の衝撃波に耐えられず、ソードレールキャノンが圧し折れる。「終わりだぁ!」キスカ、ファルコンを地表近くまで降下。アームを展開し、右側のバスタークローを展開、スティルアーマーの二つの核ブロック、コクピット、頭部切り裂いたのだった。見えない敵からの襲撃。帝国陸軍BLOX小隊、為す術なく壊滅したのだった。「任務完了だ。合流するぞ」キスカはファルコンをフェニックスに近づける。「あいさ」ヒオウも答え、航空隊本隊を目指した。 4 「任務完了しました。敵BLOX4機を粉砕してきました」と本隊に合流し、報告するヒオウ。「よし、ご苦労。元の位置に戻れ。残り数分で敵地だ」と返すサスケ。「「了解」」モニターを介しサスケに敬礼するサザナミ兄弟。直後元の位置に戻る。この時、ライガルフまでの距離100000を切っていた。「もしかしたら敵空軍ZOIDSが基地上空を飛行しているかもしれませんね」エリナが一言進言する。「それもありえるか。だが、そんなもの拙者の敵にはござらん」普段の口調に微妙に戻っているサスケの横で、「敵がいるなら、俺が叩く」バイスが口を挟む。「では、任せようかバイスよ」と告げる。「了解」一言答えるバイス。彼の今回の作戦の中での仕事は投弾後は敵空軍ZOIDSの掃討。先に出てこようが後だろうが半ば関係ないのである。「残り10000」ユイアが残りの距離を告げる。「よし、総員1500まで降下。爆撃用火器のロックを解除。距離1000で拙者が先制をかける。それに続き各機所定の目標を攻撃、与えた任を遂行せよ」と爆撃前最終指示を出す。「了解」各員から威勢の良い返事が返ってくる。彼らの攻撃開始時刻が刻一刻と迫る。 5 「距離3000」再びユイアが距離を告げる。サスケ、F‐44を少し上昇させる。「見えた」ライガルフ空軍基地に灯る明かりを見て言うサスケ。「総員へ。作戦行動変更。迷彩を完全から夜戦へ。どこの舞台か判別不可になればよし。我らGlints航空隊の力を見せ付けてやろうぞ」と突然作戦の一部を変更する。この作戦を遂行する上で最も厳守されなければならない部分の変更であった。「危険では?」ユイアが問い返す。「お前たち、どこの部隊の出身だか忘れてはいないだろうな?」と返す。「そうでしたね。了解」気を引き締め答えるユイア。「俺たちの力、帝国の奴らに思い知らせてやりましょう」乗り気のサザナミ兄弟。「危険を伴うも戦か」とバイス。皆、様々な反応を示しながらも迷彩を完全仕様から夜戦仕様に切り替える。全ての機体、黒く変色。これを見、帝国軍基地騒然。突如空から敵機が現れたのだから。空襲警報鳴り響き、探照灯闇夜を照らす。「やはり夜戦はこうでなくては」と独り言を言うサスケ。速攻を取りやめ、じっくり叩くことにしたのであった。そこへ、「おっと」ロードゲイルのエクスシザースが空を切る。「甘いでござる」余裕で交わすのだった。 「空中で俺に勝てると思ってか?」2機のロードゲイルに背を向け闇夜を駆けるシャドーイーグル。射撃武装が一つしかないロドゲ、右手甲のマシンガンをただ撃ち散らすのみしかできなかった。「まだまだだな」不敵な笑みを浮かべ、ロドゲの上方へ機体に捻りを加えながら急速旋回、背後を取る。「撃てぇぇぇぇぇ!」イーグルのAZバスターキャノン、轟音を轟かせ火を噴く。目前のロドゲの2つの核ブロックを粉砕し、2機共撃墜する。バイスの数ヶ月ぶりの戦果であった。「まだまだ甘い」余裕の表情を見せるのだった。 「弱いでござるな」2機のロドゲを空中で蹴り飛ばし、焼き払いながら言うサスケであった。重武装のF‐44を見事に扱いこなしていた。「よし、そろそろ本来の作戦を開始するでござるよ」と空中戦をする友軍に告げる。「了解」全機高度を上げ加速、帝国空軍機を突き放す。「全機完全迷彩起動。基地より一旦離れ雁行陣へ」と更に指示を出す。機体を視認可能な夜戦迷彩から、完全に姿を隠せる完全迷彩へと切り換える。そしてライガルフより10000離れて陣形を組みなおしたのだった。 6 「先制爆撃は拙者が掛ける。斉射後各機投弾せよ」と言い、雁行陣の中心にいるF‐44を少し前に出すサスケ。彼にとっても何戦ぶりかの夜戦。そして失敗の許されない作戦。士気高ぶる。サスケ、F‐44の射撃管制機器にライガルフの形状、敵機個体数ななどの情報を叩き込む。各機攻撃態勢に移行する。「サラ、斉射用意!」攻撃予令を出す。距離1000。「全弾発射!」腹部マイクロホーミングミサイルポッド2基・50門、背部20連装ミサイルポッド2基・40門、翼下対地拡散弾ユニット2基・40門、計130門の一斉発射。F‐44、硝煙に包まれる。「なんて数だ。100は裕に超えるか」バイスが翼下に搭載していた弾薬を投下後上昇中にF‐44から発射された弾薬群を見て驚く。「すげー」「ありえない」サザナミ兄弟、目を丸くし、口を揃えて言う。F‐44の一斉射撃は見る者全てを圧倒した。一機のZOIDSから100以上もの弾薬が発射されるのである。その搭載能力の高さは、あらゆる空軍ZOIDSの能力を遥かに凌駕しているのだった。「あれがF‐44の本来の力…」ユイアもF‐44の火器に驚きを隠せなかった。が、彼ら以上に帝国軍の方が慌てふためいた。敵の来襲かと思いきや敵機の姿が消え、一瞬安堵感の色を見せたところで空からのミサイルと爆薬の雨である。飛び立とうとした機体、一旦着陸しようとした機体、格納庫から引き出され、スタンバイ状態にあった機体など、ことごとくこの鉄の驟雨に呑まれライガルフは火の海と化したのだった。「エリナ、どこにいるでござるかな?」と回線を開く。「真下にいますよ」と返すエリナ。ライガルフに到着し、すぐに降下、弾薬を目標に投下、その後電波妨害を始めていたのであった。「下にいたか。夜戦の醍醐味を追及したものだから、すっかり初期設定とはズレてしまったでござるよ。すまぬ」と謝辞を言う。「初めに決めた通りにやってくださいよ。お陰で大急ぎで仕事をしなくちゃいけなくなりましたよ」とユイアが横槍を入れる。「すまぬ、すまぬ。して首尾は?」と一言。「上々です。外部通達の隙は与えませんでしたよ」とエリナ。「こっちも9割がた済みました」とユイア。「そうか。では残るは敵ZOIDSの掃討のみにござるな」と思考を巡らすサスケであった。「中佐、そろそろ撃ち漏らした連中が動き出しますよ」とヒオウが上空から会話に割り込む。「本気で空中戦をしたいのでしたら、迷彩を解いてはいかがです?」とサスケの戦闘を見ていて感じたことを直に言うバイスであった。「何と?本気とな?拙者はこれでも本気にござるよ」と返す。「いえ、貴方はまだ内心遊んでらっしゃるはず。先程の空中戦、敵をからかっているようにしか見えませんでしたが」鋭く突くバイス。「ハハハハハ、やはりお主にはわかっていたか。確かに敵をばからかっているでござるよ。あまりにも手応えが無いのでな」「やはり…。貴方に勝てる人間などここには誰一人としていませんよ…」と小声で返すバイスであった。「ところで、ユイアよ。一つ頼みがあるのでござるが、よいかな?」ユイアに問いかけるサスケ。「はい、何でしょう?」「すまぬが戦線を離脱してキリクリウスに戻っては来れぬか?空戦ZOIDSをば全て引っ張ってきたのでな、向こうの空の目がいないのでござるよ」と考えながら言うサスケであった。「了解しました。武運を祈っております」ユイアはサスケに敬礼し、ナイトワイズを最高速M3.1まで加速。一路キリクリウスへ先行帰投する。「いいんですか?あんなことして」下空からキスカが口を挟む。「これも戦の勉強なり」思慮深げに返す。「そろそろ敵の掃討戦をば始めようか」とヒオウ、キスカ、バイスに問う。「いつでも行けます」「OKです」「任せてください」それぞれ答える。「では、サザナミ兄弟、お主たちには敵陸軍ZOIDSの掃討をしてもらおうか。空は拙者たちに任せよ」「「了解」」威勢の良い返事をする。「行くぜ、ヒオウ!」「おぅ、兄貴!」二人の若き少年兵士の闘志、更に燃え盛るのであった。 7 先制の空爆によりライガルフに配備されている帝国軍機は少なからず損害を被った。陸軍機65機中38機、空軍150機中58機。軽微とも取れる損害ではあるが、帝国側からすれば、甚大な被害と言えるものである。「さて、残るは何機だ?」キスカがヒオウに言う。「どんなもんだろうな。多分、約半分ってとこじゃないか?」と返すヒオウ。彼らはライガルフ基地全体を見渡せる高度へ上昇、滞空する。「半分かよ。やたら多いな。まっ、これを壊滅するのが仕事だがな」と愚痴半分に思える言葉を言うキスカ。「愚痴は無しだぜ、兄貴。さっさと片付けようぜ」口調は半ば軽いが、顔は真剣そのもののヒオウ。「おし、行くか。だがどうする?別々か、それとも連携か」と問い返す。「俺たちに任されて仕事だし、兄貴が決めてくれ」「そうか、なら手始めに個人戦といこうや。キツくなりゃ連携といこうや」「OKだ、兄貴」サザナミ兄弟、戦闘の筋を決める。彼らが上空で滞空している間、運よく生き残った陸・空両軍のZOIDSたちが動き出す。「さて、敵さんたちも動き始めたことだ、キメラ狩り始めるぜ!「おぅ、兄貴!」サザナミ兄弟、機体を振り降下する。「さてと、敵の陣容は…」ライガルフ上空を円軌道を描きながら降下するヒオウのフェニックス。「キメラは、8、11、14、15、16、17。通常機はIC、BC、ザバットくらいか。こんなんなら楽勝だろう」敵の陣容を把握して余裕の表情を浮かべる。「空軍は無視。陸軍のみだ」「行くぜ、フェニックス!」『ピィィィィィィィイ』フェニックスが甲高い雄叫びを上げた後、大胆にも迷彩を解き、夜戦迷彩に切り換える。迷彩を解くことにより、敵のレーダーにフェニックスの機影が映ることになる。レーダーに敵機を捕捉した帝国軍キメラBLOX部隊、対空砲火を開始する。「こんな生温い対空砲火じゃ、この不死鳥は墜ちん」ヒオウ、熾烈極まる弾幕を華麗な機体裁きで難なく交わし、地上スレスレまで降下、迷彩を切り換え姿を隠す。「さっきまでの砲火はどうした?」敵機に急速接近、敵前で飛翔、衝撃波を起こす。一瞬迷彩で姿を消されたことに気を奪われた所に至近距離からの攻撃。フレームの弱いディアントラーは足を圧し折られ横転。シザーストームのチェーンシザー、レーザーストームのクレセントレーザーホーンをへし曲げる。デモンズヘッドは核を含め一撃で機能停止に陥る。「脆いもんだ」吐き捨てるヒオウ。「だが、核を破壊せにゃ意味無し」再度降下に掛かる。夜戦迷彩にまた切り換え、敵直上から垂直落下する。敵機からの砲火再度始まる。「ならば、空神奥義『旋風鎌鼬』」ヒオウ、フェニックスを2つの核ブロックを中心に急速回転させ、機体の周囲に気流の壁を生み出す。敵の砲火、気流の壁に阻まれフェニックスの届くことは決してなかった。「これだけではない!」翼下の2連装レーザー砲計12門を起動。敵機頭上からレーザーの雨を降らせる。高速回転からの砲火、敵機瞬時に蜂の巣になる。「仕上げだ!」機能停止寸前の敵に頭上から再度衝撃波を浴びせ、その場にいた17機を壊滅させたのだった。「これで残った連中の約半分ってことか」上空で戦闘態勢を整えキスカが言う。「残るは兄貴だぜ」そう言い、ファルコンの横をかすめ飛翔するのだった。 8 「にしても見事に吹き飛んだな。まさか鎌鼬を使うとはな」ヒオウの戦闘を残るスティルアーマー群を見下ろしながらキスカが見ていた。「俺も始めるぜ!」ファルコンの翼を振るキスカ。彼の機体の下にいるのはここライガルフ基地所属キメラ陸軍の中枢をなすスティルアーマーが群れをなしていた。急降下に備えての防御円陣。その数10機。これまでの戦闘で陸軍65機中55機を失い、この10機が陸軍最後の砦であった。「まぁ見事な防御円陣だこと。こりゃ迷彩解いたら蜂の巣にされかねんな。どれか一機潰して陣形を乱したところを各個撃破するか」普段とは少々違う表情を浮かべ、思考を巡らすキスカ。少年兵士と言えど一軍人である。やるときはやる、ということだ。「さて、どれにする?んっ、一機だけ形成色が違うのがいるな。あれがおそらく残存部隊の頭だな。あれだな」一機だけが機体全体が黒で塗装されたスティルを見付けるキスカ。この機体は、ここライガルフ所属のスティルアーマー部隊の隊長機であり、ライガルフ陸軍の旗艦機でもある。「逆落としで十分だろう」そう言いながら、黒いスティルの上空100に着け、砲口を向け、照準を合わせる。「くらえ!」キスカ操縦桿のボタンを押す。4基のショックカノンから0.5秒間隔で砲弾が撃ち出される。直下のスティル、砲の発射音を聞き、頭部を上へ向けるが何も映らず。が、次の瞬間にはファルコンの撃ち出した砲弾が機体に降り注ぐ。ソードレールキャノンを圧し折り、マグネイズホーンを折り、シティルシールド、ストロングアーマーに穴を開け、核ブロック、コクピットを破壊。部隊の頭を瞬時に蜂の巣にしたのだった。「なんだよ、隊長機でも通常機と何も変わらないじゃないか」と愚痴を漏らす。彼がこう言っている間にも地上からソードレールキャノンが撃ち上げられる。照準無しでのでたらめの砲火である。頭脳を失い取り乱すスティル部隊。陣を乱し、散り散りになる。「こっちの思うがままに動いてくれちゃって、ダメな奴ら」と再度愚痴をこぼす。が、彼の瞳に浮かぶ闘志は更に燃え上がるのだった。「派手に行くぜ!」乱れた円陣の中心に向く方向へファルコンを向け、弟と同様に迷彩を解くキスカ。スティル、レーダーに映ったファルコンを撃墜するため機首を向け、ソードレールキャノンを再度撃ち始める。頭脳を失った以上、各人の判断による行動となる。「またまたご丁寧に。狙ってくれ、って言ってるんじゃない」と言い、「ファルコン!」叫ぶキスカ。『キィィィィィ』キスカの叫びに呼応し雄叫びを上げる。機体密着型のEシールドを展開、敵弾を全て弾く。「まだまだ!」ショックカノン4門再度火を噴く。スティル9機全てのソードレールキャノンを正確無比に根元から撃ち抜く。スティル隊、唯一の射撃武装を破壊され、後退を始める。「逃がすかよ!」ファルコンの両側のバスタークローを最大長で展開。高速で敵機に迫り、近い機体から次々と斬り捨てる。「こんなんで全滅されちゃ困るぜ!」そう叫ぶと機体を上昇させる。既に半分は鉄屑と化していた。「これで決めるぜ!隼王粒子砲スタンバイ!」キスカがそう叫ぶと、ファルコン、バスタークローを前方に向け、ブレードを正三角形の位置取りに移動。ブレードを展開。すると、バスタークローの中心の砲口が光を帯び始める。3本のブレードで作り出した三角錐状の空間から荷電粒子を取り出し、収束しているのである。「砕け散れ!隼王粒子砲撃てぇぇぇぇ!」展開していたブレードが砲口と平行の位置になるまで急速に閉じる。そして空間上の粒子を急速収束し、撃ち出したのだった。光の波、周囲のものを全て呑み込み、焼き払う。ジェットファルコン単体での最終奥義であった。残った5機のスティル、急速に迫る光の波を呑まれ、一瞬の内に消し飛んだのだった。「弱いぜ!」そう吐き捨てるキスカ。これで彼の任務も終了したのだった。「相変わらず派手だな、兄貴」ヒオウが通信を入れる。「お前もな」と返すキスカ。サザナミ兄弟、負った任を完遂したのだった。「よし、上へ戻るか」と言い、サスケたちのいる上空へと飛翔するのだった。 9 「またまた派手だな。まっ、あれがあの兄弟のやり方か」と二人の戦闘が終了したことを確認してサスケが言った。「でも、私たちの戦闘はこれからですよ」と返すバイス。彼ら二人は大胆にも迷彩を解き、敵空軍機に完全包囲されているという危険極まりない状態にあった。「さて、こちらも始めようか」とサスケ。「返り討ち」と一言バイス。Glints航空隊・名空軍ZOIDS乗り二人の空中戦の火蓋が切って落とされようとしているのであった。
第十六話 天翔ける翼 序 帝国軍空軍基地ライガルフへの決死の空爆を決行することに決定した共和国軍BLOX戦闘隊Glints航空隊、沈黙の闇に紛れ空爆に成功し、基地を守る陸軍BLOXを全機撃破したのだった。そして残るは本命の空軍ZOIDS92機。作戦を立案したサスケ、いかにしてこの大群を打ち破るのであろうか…。 1 「さてさて、敵の数はいくつかな?」と軽い口調で言うサスケ。「よくこんな状況でそんなに落ち着き払ってられますね」口を尖らせて言うバイス。彼ら二人は空爆を免れた敵空軍ZOIDS計92機に包囲された状態にあるのだった。「落ち着いているのではなく、この状況を楽しんでいると言った方が正確にござるよ、バイス」とゆっくりとした口調に変えて返す。「呆れた。貴方って人はいつもそうだ。周りは緊迫しているというのに、貴方だけはどこか抜けている。よくここまで数多の戦を抜けてこられたものだ」明らかに呆れきった表情を浮かべてバイスが言う。敵機に完全に包囲された状態にありながらも落ち着き払い、尚且つ戦を楽しんでいるというサスケという男はどういう人間なんだと内心でバイスは思っているのであろう。それと同時にいかにしてこの状況を打開するかに彼は頭を悩ませていた。「数は92か…。とすると、空爆では58機を破壊となるか。少ない戦果にござるな」バイスの言ったことを聞き流したのか否かはわからぬが、尚も状況分析を続けるサスケ。表面上は軽く見えども、内面では何を考えているか不明なのが彼のある意味での真骨頂である。打開策などとうの昔に思いついているのであろう。「さてさて困った。のんびりとサザナミ兄弟の戦闘を眺めていたら見事に囲まれてしまったでござるな」尚も緊張の色を見せぬサスケ。バイス、呆れきって何も言おうとしない。「が、この状況を切り抜けなければ忍びの恥にござる」と静かに言う。「忍び?」バイスはその意味深長な言葉を繰り返したが、それ以上何も言わなかった。打開策が最重要項目であるからであった。 2 バイス更に悩む。この膠着状態を打開する方法を紡ぎだすために。敵も敢えて撃とうとはしない。なぜなら下手に砲門を開けば、見方同士の相討ちになりかねないからである。サスケも動こうとはしなかった。しかし、数十秒後、彼が何かぶつぶつと独り言を言っているのが聞こえてきた。そしてどのようにして発生したのか、敵機をも巻き込む煙の雲が周囲を包み込んでいたのである。「破・砕・撃・衝・陣・龍・閃・砲・流・連・戦・震・乱」サスケが囁いていたのは東方大陸に古代より伝わる言語であった。「『火遁・龍王蓮華の術』」F‐44、周囲に火炎輪を生み出す。そして煙に含まれる微粒子に反応、火炎を更に拡大させる。「今でござる!」サスケがバイスにそう叫んだ瞬間、周囲で巨大な爆発が起こった。F‐44、シャドーイーグル、持ち前の機動力と爆圧を利用し天高く飛翔、包囲の輪を逃れる。「あんな危険な逃げ方しかなかったんですか?」緊張の糸がプツりと切れてサスケに言うバイス。「いやはや、まさかあぁまで派手に爆発するとは思わなかったのでな。しかし、包囲の輪を逃れられたことに越したことはないでござろう」と表情を変えて答えるサスケであった。「まぁ、それはそうですが…」何故か小声になるバイス。サスケの気迫に押されてのことであろう。「いい加減のんびりとしてもおられまい、始めようぞ」と戦意を込めて言うサスケ。「何のためにここに来たのです?」と返すバイス。気質のまるで違う二人。しかし二人の目的はただ一つ。敵の殲滅。この短い会話ご直ぐに各個行動を開始するのだった。 3 敵の包囲を逃れ飛翔したのも束の間、帝国軍航空隊、未だ残る爆煙の中から、F‐44、シャドーイーグルに向かい空を翔る。「おぅ威勢のいいこと、やはり空中戦はこうでなくては」余裕の表情のサスケ。「呆れた。この期に及んでまだ楽しんでいる」と吐き捨てるバイス。続けて、「のんびり構えているとまた囲まれますよ」と忠告の言葉を言う。「そうでござるな。同じ手は2度も通用しないでござろうし」緩い顔で言うサスケ。だが、目は本気である。モニターを通してサスケの顔を見るバイス。サスケに心の奥底を見透かされているように思えて少し畏怖を感じたのだった。「どうします?半分ずつ叩きますか?それともかかってきた順に数関係無しでいきますか?」これからの戦法について尋ねるバイス。「これから始まるはドッグ・ファイト。生き残った者のみが勝者。ならば、数など気にしてはおれぬでござろう」と返す。「りょ…、了解」表情が急に変わったサスケから威圧感を感じずにはいられないバイスであった。この会話の間にも敵機迫る。サスケ、バイス共に滞空状態を解き、機体を振る。動き出した敵機に砲門を開く帝国空軍ZOIDS。先鋒はレドラーBC。両翼上部に搭載されたブースターキャノンのブースター出力を最大にし、尚且つ砲を放つ。半ば死に物狂いにも見えかねなかった。「下からの支援砲火を失って気狂いしたか?」追い縋る敵機を見ながら言うバイス。「そうではなかろう。帝国軍人の誇りとして、少数部隊に壊滅させられるものかと躍起になっているだけでござろう」と返すサスケ。「まさか6機の少数部隊でこんな大部隊に戦を仕掛けるなど考えなかったのだろう」と続けるサスケ。「確かに6機で30倍以上の大規模な部隊に戦闘を仕掛けたなどという前例はないでしょうな」納得しながら返すバイス。彼ら二人は会話をしながらも悠々と敵の砲火を交わしているのである。神業とも言えようか。「そろそろ本当に始めませんか?いつまでこの終わりそうにもない追いかけっこをしているつもりです?」と言うバイスに対し、「いや、拙者はいつ始めても一向に構わぬでござるよ。拙者はサラが爆装の状態でどれだけ俊敏に動けるかを実践試験していたのでござるよ」と返す。「実践試験とは大それたことを…。首尾は上々に見えますが?」「上々にござるな。しかし、やはり武装が重い」「重いのでしたら放棄すればいいではないですか?」「それもそうでござるな。空爆はこれが最初で最後でござろうし。もし必要とならば裏ルートを使えばよいし」と言い、武装解除用のスイッチを押す。6基の空爆用の武装がF‐44から切り離される。機体、軽くなる。『ゴォォォォォォォォォン』身軽になったせいかF‐44雄叫びを上げる。「おぅ暴れたくて仕方がないようでござるな。なら望み通り始めようぞ」と言うサスケ。「やっとその気になった」ため息混じりで言うバイス。2対92の空前絶後の空中戦が今、幕を上げようとしていた。 4 「サラ、最大長開翼。天空龍の完全再臨にござる」サスケがそうF‐44に言うと、『ゴォォォォォォォォォン』先程よりも大きな雄叫びを上げ、少ししか開いてなかった翼を広げる。これと同時に急加速。巨体に見合わない速力、M3.5を叩き出す。高速のあまり翼の先に雲を引く。「まだまだ」サスケ、高速で飛翔するF‐44に捻りを加える。そのまま天高く飛翔。その姿、正に天空龍。敵機、上昇能力にかなりの劣りを見せる。「いざ、参る」高高度で急速反転、敵機へ機首を向け、逆落としの姿勢を見せる。急降下の姿勢を見せたF‐44に敵機慌てふためく。密集陣形乱れる。サスケ、その瞬間を見逃さなかった。乱れた陣形の一画にF‐44が通過可能な隙間が出来ていたのです。F‐44、落下エネルギーと自慢の速力でその隙間に翼を徐々に閉じながら突っ込む。慌てふためく敵機群、反転がため速力を一瞬落とす。そこをF‐44通過する。陣形の穴の周囲に位置した敵機、空中で強烈な衝撃波に晒される。F‐44、落下後再度開翼、飛翔。敵との間合いを取り、天空を翔ける。「なんて荒々しい戦い方なんだ。あれこそが天空龍と呼ばれたF‐44の真の姿なのか」目を瞠ってF‐44を見るバイス。「敵機に触れることなく損害を与える、すごい」下空で迷彩を張りながら滞空していたヒオウが言う。先の一撃で穴の周囲にいた敵機8機が鉄屑と化し、地に墜ちていった。「8機とは少なかったな。ならば次は一術使おうか」独り言を言うサスケ。高速での飛翔、高度20000など目ではない。裕に飛び越し、更に高高度から下空を眺める。「行くぞ」再度翼を閉じ、急速落下、10000を過ぎたところで開翼。翼の先でレドラーの首を切り裂く。管制を失った機体、次々と墜ちていく。20機をほぼ瞬殺。敵機のパイロット、F‐44を視認した次の瞬間には機体の首が落ちているのである。高速戦妙技恐るべし、と言えようか。「レドラーごときでは相手にならん」高度5000で開翼滞空するF‐44のコクピットで敵機のあまりの軟弱さに嘆くサスケであった。そこに警告音。「おっと」ロドゲ3機にうかつにも背後を取られた。いや、敢えて背を見せたと言った方が正しいだろうか。3機のロドゲのマグネイズスピア計6本を紙一重で交わしたのである。「手始めに貴様たちからだ。サラ!」叫ぶサスケ。『ゴォォォォォォォン』サスケの叫びに呼応するF‐44、3機のロドゲを瞬時に蹴り飛ばす。「受けてみるがいい!『火遁龍神火球連』」蹴り飛ばした3機のロドゲに巨大な火球を高速且つ連続して撃ち出すF‐44。撃ち出された火球、ロドゲの両腕、両脚、両翼と順に焼き払い、最後に核を含む胴体を焼き払う。ロドゲ、跡形も無く消え失せたのだった。 5 「なんて技だ。あの人に勝てる奴などいるのか?」バイス、敵機に応戦しながらF‐44の戦闘を見る。「F‐44、恐るべし」と言い、「俺も負けてはいられない」と己に言い聞かせる。そして、機体を加速させる。「行くぞ、イーグル!」『キィィィィィィィイ』イーグル、バイスの叫びに呼応。翼を翻し、敵機を下空に突き放す。逆落としへの姿勢、高高度へ飛翔間合いを計る。バイスのイーグルに対するは、ロドゲの小改良機、ダブルシザース。両手がエクスシザースに換装された機体。ダブルスピアとの連携攻撃を得意とするが、パートナーのダブルスピア、遥か下空。この機種はパイロットによってはっきりと癖の判る機体であった。「ロドゲにしては妙な武装になっているな。撃墜する痛い分には関係無いことだが」と吐き捨て、「イーグル、バスターキャノン撃てぇぇぇぇぇ!」背部AZバスターキャノン再度火を噴き、砲身から硝煙を吐き出す。超高初速の砲弾、ロドゲの頭部、核、翼の基部を貫徹する。バイスが主に使用するは炸裂弾ではなく、徹甲弾。敵の核を打ち抜いて尚突き進み、下空の敵機にも被害をもたらす。下空を飛行していたザバット隊、上空から落下してくるロドゲの残骸と、イーグルの砲弾の雨に遭い、全機壊滅。「どうやらザバットは壊滅のようだな。あんな骨みたいな機体、高高度のドッグ・ファイトには役に立たん」砲弾の行方を見て言うバイス。ここまでの戦闘でサスケと合わせ、51機を撃墜。高速戦ZOIDSだからこそ成せる業。「大体半数は墜ちたか。このまま増援無しに終わればいいが」と残る敵機を見回して言うバイス。 「有人機と言えど弱い。BFでも出てくれば楽しめるのだがな」バイスよりわずかに下空域で敵を次々と薙ぎ払うサスケはそう言った。サスケはロドゲを完全に無視し、レドラーの掃討戦にかかっていた。レドラーの残数は16。数分あれば落とせる数であったが、サスケは敵をからかいながら落としていく。 「サスケさん、意図的にレドラーを狩っているな。俺への試練か?」ロドゲの残数を確認するバイス。ロドゲ残数26。内訳、ダブルシザース8、ダブルスピア12、通常機6。一般の空軍ならばかなり手を焼く陣容。しかし、Glints航空隊のこの二人にとっては恐れるに値しない敵である。 6 ロドゲ部隊、先の砲撃を鑑み、恐れをなして敵に一瞬の隙を見せる。バイス、この隙を見逃さず、「隙見せれば命取り」そう叫び、ダブルスピアとの間合いを詰め、両脚のバスタークローで正面から敵機を蹴散らす。直後機体を後方に振り一斉射。通常機2撃墜、3機大破させる。「まだまだこれからだ!」揺れる機体を振り再度敵機との間合いを詰める。ダブルシザース8機、両手甲の連装マシンガン、計32門をイーグルへ砲門を向けて放つ。しかし、初速遅く、ことごとく回避される。「撃てぇぇぇぇぇぇぇ!」ダブルシザースの真下に潜り込みバスターキャノンを撃つ。直下からの至近砲火、8つのブロック全てを撃ちぬき、コクピットをも抜く。2機を鉄屑に変える。ロドゲの残数、徐々に減っていくのであった。バイス、砲撃後高速の利を活かし、敵から離れる。 「見事なまでに成長したでござるな。さて残るレドラー12をまとめて消そうか」と一言言うサスケ。12機の敵機を数十分間空中でからかっていたのである。残る12機、分散したら敵の策に嵌ると考え、密集陣形を維持する。「その密集陣形こそ拙者が望むお前たちの最期ぞ」と言い、「サラ!」そう叫ぶと、サスケの意図を理解してか迷彩を起動、姿を隠す。「終わりでござるな。いざ、『火遁・業火龍王炎の術』」密集するレドラー群の周囲に複数の巨大な火炎輪を生み出す。「終」敵機群目掛け巨大な火球を撃ちつける。以前、キリクリウス上空でロドゲ一機に対し用いたものと同様の技ではあるが、その時の威力を遥かに超える。12機のレドラー群を一機たりとも逃さず全て焼き尽くす。炎が消えた時には残骸は無く、煙だけが残った。「よし、これでレドラーの掃討は終わったでござる。拙者もロドゲ狩りに行こうか」と術を発動する前の表情に戻し、また戦を楽しむ表情を見せるサスケであった。この時、作戦発動から1時間半が経過しようとしていた。 7 「レドラーが全て消えたみたいですね」上空を見上げると同時にレーダーを見、エリナは言った。彼女は依然として電波妨害を続行しているが、作戦開始当初よりは出力を抑えていた。されど、残るロドゲ20機に外部通達をさせない出力は維持しているのだった。「作戦終了も近いみたいですね」と敵機残数をディスプレーに出しながら言うエリナであった。 「また空が燃えたぞ」「だな」サザナミ兄弟、初めて見る『業火龍王炎の術』に驚いていたのであった。「やはりあの人に勝てる帝国軍人なんていないな」と一言ヒオウが言う。「勝てる奴がいれば会ってみたいもんだ」と弟の言うことに追従するキスカ。彼ら二人とエリナを含む3人はただただ、下からサスケとバイスの空中戦を見守ることしか出来なかった。サザナミ兄弟の本音は今も続くこの空中戦に参加したい、であろう。しかし、それをおそらくサスケは許さないであろうからこそ、陸軍掃討に尽力し、下空で待機しているのである。お呼びとあらば即上昇可能な状態でもあった。 「バイスよ、残りは16。一機に叩くぞ」とレドラーの掃討を終えたF‐44が下から翔け上がって来る。「わかってますよ、サスケさん」と返すバイス。サスケがレドラー12機をまとめて落とした間にもバイスはロドゲの生き残った通常機を全て撃墜していたのである。「小改良機であろうと、拙者には何とも変わらぬ」そう言いながら、ダブルシザース2機を蹴り飛ばし破損させる。「切り裂け、イーグル」バスタークローを振り下ろしながら叫ぶバイス。ダブルスピア2機を3つに引き裂く。そして、イーグルに背を見せた機体には容赦無く砲火を浴びせる。「この戦の中で二歩、三歩成長しているでござるな。まだまだ上の階級へ進めるであろう。この男は」と思慮深く言うサスケであった。「拙者も参ろうか」戦闘態勢へ移行するサスケ。高度を更に上げ、反転。再度逆落としの姿勢を取る。「早期終結といこうかぞサラよ」F‐44に呼びかけるサスケ。『ゴォォォォォン』天高く雄叫びを上げるF‐44。「行くぞ。『火遁・龍神火砲天華閃』」F‐44、逆落としの姿勢から幾線にもなる火線を生み出す。F‐44の生み出す火炎、触れたら最期、全てのものを焼き尽くす。炎に飲まれたロドゲ、瞬時に焼き尽くされ、天空から姿を次々と消していく。 「撃てぇぇぇぇぇぇ!」サスケの戦闘と平行しバイスも残る敵機を叩く。次々と友軍を失う帝国軍、挙動不審に陥り、退避行動に移る機体も出てきた。「逃がすか!」高速で逃走しようとする敵機に追い縋り、至近弾を浴びせる。「終わりだ!」最後の一機のロドゲに5斉射、10発を撃ち込み撃墜、全ての敵空軍機を撃墜したのだった。 8 「よし、全機撃墜したようでござるな」周囲を見渡し言うサスケ。「終わりましたか」緊張の糸を解いてF‐44にイーグルを寄せるバイス。「すごい空中戦でした。勉強になります」「あんな戦闘初めて見た」とヒオウ、キスカも合流する。「エリナ、敵影は?」バイスの直下にいるエリナに尋ねる。「敵影無し。全機撃破です」と索敵結果を報告するエリナ。「任務完遂ですね中佐」ヒオウが言う。「中佐と言われても困るでござるな。のぉバイス」と言い、バイスに振る。「確かに。サスケさんも中佐、俺もそうだ」と返すバイス。「あっそうでした。すみません」頭を下げるヒオウ。「まぁ気にするな。同じ階級だと少し面倒なだけだ」軽い口調で返すバイス。そんな時、警告音響く。「何?」「サスケさん、9時の方向より高エネルギー反応。こっ、これは、荷電粒子砲」エリナが告げた方向からGlints航空隊へ向けて荷電粒子砲が一筋。皆回避に移る。初速の速い収束荷電粒子砲、F‐44に迫る。「サスケさん!」航空隊皆叫ぶ。F‐44、光の渦に消える。 「ライガルフの方で炎が見えて来てみりゃ、共和国軍航空隊か。まぁ旗艦のサラマンダーはあれで墜ちただろう」とバーサークフューラー(BF)を駆る帝国軍人が言った。空にはまだ粒子の光が残っていた。が、数秒後その光は消え、驚くべき光景を帝国軍人は目にした。「何だと?荷電粒子の直撃を受けて傷一つ無いだと?」「いやいや、驚いたでござるよ。しかし、このF‐44、そう易々とは墜ちぬでござるよ」サスケ、頭を掻きながら言った。「サスケさん!」皆歓喜の声を上げる。確かにBFの放った荷電粒子砲はF‐44に命中した。しかし、彼は無傷であった。「皆、驚かせてすまぬ。サラのお陰でござるよ。直撃の寸前に強力なEシールドを張って全て受け流してくれたのでござるよ」と軽く説明する。「よかった」航空隊隊員全員から安堵のため息が漏れる。「さて、そこの若造、この礼たっぷりさせてもらうぞ」表情を変え、BFを見るサスケであった。「何故だ?何故無傷なんだ?」焦りを見せる帝国軍人。「墜ちなかったなら、空中戦で落としてくれるわ!」スラスター全機出力最大、バスタークローを前方に展開し、F‐44に突進をかけるのであった。 9 「貴様のような若造、5分もあれば充分」吐き捨てるように言うサスケ。普段の戦闘の時以上に険しい表情を浮かべる。本気の中の本気と言えようか。「サスケ、いざ参る」サスケ、F‐44を最大翼長展開、出力最大でBFの攻撃を回避する。「このスピードに付いてこれるか?」M3.5で天空を翔ける。BF、出力足らず、突き放される。「おのれ、食らえ!」BF、バスタークローの中心にあるAZ185ミリビーム砲をF‐44に向けて放つ。素早い連射で弾幕を張る。 「そんな甘い攻撃ではこの機体は落とせん」サスケ、F‐44をBFに向ける。そして逆落としに移る。 「墜ちろ!墜ちろ!墜ちろ!」間断無き連射。されど、F‐44には一発とてかすらない。 「Eシールド展開」サスケ、F‐44に機体密着型のEシールドを展開、BFに急接近する。敵のビーム砲の命中コースに入るが、シールドが全て弾く。「これだけでござるか?」落下角90度でBFに接近、翼でバスタークローを切り落とす。 「何!」よろめく機体を無理矢理戻す帝国軍人。右側のバスタークローは基部から寸断されていた。「おのれ!」残った左側のバスタークローを回転させながらF‐44に突進する。が、足遅く全て交わされる。 「甘い、甘いでござるよ」と言い、接近しBFを一蹴。 「ぐわっ!」蹴り飛ばされた衝撃で座席に押し付けられる。「もう一発食らわせてやる!」BF、空中で荷電粒子砲発射態勢に入る。 「サスケさん、もう一発来ます!」エリナが叫ぶ。 「撃たせはしない!」サスケ、そう言い、BFの直上から逆落としをかける。 「上か!」BF、機体を上へ向けようとするが遅かった。 「『火炎龍神秘奥義・火遁業火龍天墜の術』」F‐44、口から火炎を噴き出し、BFを炎で包む。「はぁぁぁぁ!」サスケ、BFをかかと落としを入れる。足をBFに接触させたまま地表まで降下。 「くそっ!」BF荷電粒子発射まで残すところ数秒。 「終わりだ!」サスケ、地表から100のところでF‐44の足を振り下ろし、更に火球を撃ちつける。BF、地上着地と同時に荷電粒子砲を発射。それはF‐44へではなく、地面へであった。高エネルギーを発するか荷電粒子砲、BFをも飲み込み、天空まで上る巨大な火柱を上げたのだった。 「なんてやりかただ。恐ろしい」バイスはサスケの戦法に驚き、それ以上何も口から出せなかった。「あの人に勝てる帝国軍人なんていない」エリナも驚きを隠せなかった。サザナミ兄弟は言葉を失い、ただ呆然と天を焦がす火を見つめた。 10 戦の終わりを告げる火柱も消え、Glints航空隊全員合流。帰投の路に就く。「ようやく終わったでござるな」顔の表情をようやく緩めサスケが言った。「終わりましたね」エリナ、ただ一言返す。「急いで帰りましょう。向こうで何かあったら一大事ですし」とヒオウ。「そうでござるな。では皆、速力最大、目標キリクリウス」と帰還命令を出すのだった。 こうしてGlints航空隊のみでの作戦が終了し、キリクリウスへと帰投するのであった。
第十七話 紅の咆哮 序 帝国軍空軍基地『ライガルフ』への決死の空爆作戦を成功させたサスケ率いるGlints航空隊。ライガルフに配備された全ての機体を破壊し、基地としての機能も完全に奪ったのであった。そして今、彼らはまだ尚深い闇夜の中を隠れ里キリクリウスへ向けて帰投の路に就いたのだった。航空隊の帰投の路、事無く進む。しかし、その頃キリクリウスでは、また何か起ころうとしているのであった。 1 「あと十五分ほどで航空隊も戻ってくるだろう。各員、機体を格納庫へ」と二時間前から張り続けている厳戒網の解除を告げるガイズ。「やっと終わりますか。向こうはすごいことになってそうですけど。こちらは何事もなく、良かったです」と空からユイアが安堵のため息を溢す。彼女はサスケの命で先にキリクリウスに帰投し、上空の監視の任に就いていたのであった。「何事も無いとやはりつまらん」互いに場所は離れているが、ラウスとライが似たようなことを言った。各員指示通りに機体を格納庫へ入れる。ユイアとスサノオを除いて。「隊長殿、私は航空隊が戻るまで残ります」タケガミ・スサノオがガイズにそう告げた。「わかった。が、何か気になるのか?」と返す。「いえ、ただ妙な予感がするので…」と答える。「そうか。何かあったら直ぐに連絡しろよ」「了解」ガイズに敬礼し答えるスサノオであった。「ユイアはどうする?」キリクロイス山上空に滞空を続けるユイアに尋ねるガイズ。「私も航空隊の皆さんが戻るまで残ります。先に下に降りたらサスケさんに対し、失礼ですし」と静かに答える。「同じく無理するなよ」「はい」ガイズ、ユイアとスサノオとのやりとりを終え、機体を格納。キリクロイス山近辺にはユイアのナイトワイズ、スサノオの炎龍輝の二機が残った。「あと十分」空を仰ぎ見ながらスサノオが言った。その時、『ウォォォォォォゥ』炎龍輝が声を上げる。「どうした炎?」話しかけるスサノオ。すると、「ほほぅ」炎龍輝のレーダーディスプレーに敵機を示す光点が現れる。「二十機か」不敵な笑みを浮かべる。「厳戒令が解除される時を待っての奇襲作戦か。だが、運が悪かったな。地上にはまだこの俺が残っているんだからな」スサノオがそう言った。瞬間、敵機全てキリクロイス山へ向けて走り出す。「そうはさせるか」スサノオ、炎龍輝のイオンブースター、スラスターを起動。敵機の方へ機体を向ける。「楽しませてくれるよな」更に表情を険しくするスサノオ。彼も戦闘となると性格が少し変わる人間の一人であった。 2 敵機との間合い詰まる。スサノオ、敵機陣容把握にかかる。「レブラプター夜戦型十、同パイルバンカー六、ディロフォース四か。小型の奇襲部隊としてはなかなかの陣容だが、この奇襲作戦、失敗に終わるぞ」と言うスサノオ。相対距離三〇〇〇。炎龍輝、既に戦闘態勢。有効射程内「まずは一発行くか!」操縦桿のボタンを押すスサノオ。背部スラスターの側面に装備されたビームバルカン、一斉射四発、敵の先頭目掛けて飛ぶ。この後すぐに間合いを更に詰める。距離一〇〇〇。撃ち出された弾丸、先頭を駆けるレブラプター二機を打ち抜き、鈍い音を立てながら崩れ落ちる。見えぬ敵からの狙撃に驚き、慌てる。そこへ、「追いついた!」炎龍輝姿を敵機に晒す。敵機群更に慌て、後ずさりを始める。「たかが二十機では、このキリクリウスは落とせん」吐き捨てるスサノオ。すると、ディロフォース四機、炎龍輝の目前に出、重心を下げる。荷電粒子砲の構えである。「ほぅ、荷電粒子か。やってみるがいい…。こいつには全く通用せんがな」と余裕の表情を浮かべる。彼は炎龍輝が身に纏う集光パネルを薄い鋼板で覆っているのであった。からして、敵からしてみれば大型の二足龍型の機体にしか見えす、凱龍輝の派生型とは気付かぬのである。目前の敵もこの炎龍輝をただに二足型の機体と判断し、ディロフォースの荷電粒子砲で一蹴しようと考えたのである。ディロフォースの口内の砲口、荷電粒子の光を帯び始める。大気中から電荷を帯びた粒子を吸収、射出する。四つの光の波、炎龍輝に迫る。敵機、命中・撃破を確信したのであった。「炎、鋼板排除、集光発動」叫ぶスサノオ。炎龍輝、スサノオの叫びに呼応、集光パネルを覆う鋼板を強制排除する。直後、炎龍輝光の波に姿を消す。が、徐々に光が小さくなり、代わりに集光パネルが光を帯びる。その姿は燃え盛る炎の如く。一機でも中型ZOIDSを破壊するディロフォースの荷電粒子砲。四機による一斉射撃を受けて全て機体内でエネルギーに転換する。対セイスモサウルスへの秘策、凱龍輝系列機の新システムの力の発揮であった。 3 帝国軍強襲隊、目を見張る。ディロフォース四機の撃ち出した荷電粒子砲を全て吸収し、そして数分前とは異なる姿をした敵機に驚き、口々に、「凱龍輝だ」と叫んだ。そう叫んだのはディロフォースに乗る帝国軍兵士であった。バーサークフューラーの荷電粒子砲をも受け付けぬ力を秘めた機体だ、と彼らの間では噂になっているのであった。顔から血の気が引き、大慌てで逃げ出そうとするディロフォース隊、俊足を生かし逃走する。 「逃げられるのは困るな」と炎龍輝に背を向けるディロフォースに言うかのように言い、「飛炎、炎月!」そう叫ぶスサノオ。すると、炎龍輝の肩、脚部、尾、背部ユニットの装甲が本体から分離、二機の小型BLOXへ姿を変える。燕型のBLOX飛燕の派生型・飛炎、カブトガニ型のBLOX月甲の派生型・炎月が姿を現す。そして、遠ざかろうとする敵ディロフォース4機に襲い掛かる。飛炎、高速で敵に迫り、マグネッサーウィングで敵を真正面から真っ二つにする。炎月、ビームバルカンで脚部ブレード、腕、脚を撃ち抜き、自慢の強靭な甲殻で敵機を弾き飛ばす。無人機ながらも有人の小型BLOX以上の力を持つこの2機、炎龍輝のサポート並びに合体による核の共振で絶大な力をもたらすのであった。飛炎・炎月が分離した際には、炎龍輝本体には腕、脚、尾の一部の装甲をまとってはいるが、ほぼ素体に近い状態になる。素体の状態とは言えど、炎龍輝の機動力はライガー系列の高速ZOIDSに劣ることは無いのであった。装甲の分離機構は、ライガーゼロのCASに由来するが、素体は帝国軍機バーサークフューラーに由来する。そしてZOITEC社のBLOX技術とCASの技術を融合させたのが、B‐CASである。そして、その実験機が炎龍輝の元である凱龍輝であった。 「頼みの綱の荷電粒子砲は通用しない。そして撃てるディロフォースは落とした。さて、どうする?」分離していた飛炎・炎月と合体、ディロフォースの残骸を踏みながら機首をレブラプター隊に向ける。 4 「逃げるなどということは考える訳ないだろう。誇り高きネオ・ゼネバス帝国の軍人として…」敵と睨み合う形で共に動かぬ状態が数分続く。4分が経過しようとするか否かの時、パイルバンカー(PB)1機が炎龍輝に向かって突進を掛ける。「そうこなくちゃ!」PBの攻撃を紙一重で交わし、尾で薙ぎ払う。1機の行動に乗じて残る15機も動き出す。「キリクロイスには行かせない!」ビームバルカンを再度発砲、炎龍輝に背を向ける形となっている敵機、背後から核を撃ち抜かれ崩れ落ちる。「4つ!」反転し突進を掛けてきた機体を尾で薙ぎ払い、敵が宙に浮いた瞬間にスラスターで離れた距離を詰め、キラークローをお見舞いする。「これで6つ」早業で15機の内の6機を叩く。「もう一度だ、飛炎・炎月!」2機のサポートBLOX、再び分離する。そして炎龍輝に迫る機体を迎撃する。スサノオ、残る敵機の位置をディスプレーに写す。「くそ、逃がすか!」接近戦をしている間に5機がキリクロイスを目指し駆け出していたのである。炎龍輝、素体の状態で駆け出す。そして1分もかからぬ内に敵機に追いつく。「手始め」最後尾を走るPBの尾を掴み、「あらよっ!」炎龍輝に気づいた1機に投げつける。振り向いた敵機、飛んでくる僚機に驚き回避に移るが行動遅く僚機のカウンターサイズで首を落とされたのだった。そして、投げ飛ばした機体もシステムフリーズを起こしたのだった。「残り3」そう言ったのとほぼ同時に後方から飛炎・炎月が合流する。「戻ってきたってことは、後ろに置いてきた4機を落としたってことか」そう言いながら合体する炎龍輝。残るは6分の1以下の3機。キリクロイスへの侵攻を諦め、炎龍輝の砲へ転進する。「ほう、やはりやり合う気になったか。端からだが容赦はしない」敵を迎え撃つ構えを採るスサノオであった。 5 地上での戦闘が始まって10分が経過しようとしていた。闇夜に薄く煙が立ち上る。「えっ?煙?」ユイアが辺りを見回して言う。「タケガミ中佐、どうなっているのですか?」と問う。「ユイアか、スマンな。連絡入れてなかったな。帝国陸軍高速機動中隊と交戦中。あと数分で片がつく」と返す。「えっ?敵が潜んでいたのですか?ワイズのレーダーには映りませんでしたよ?」と問い返すユイア。「映らなかったのは、戦闘前までシステムを停止していた、ということと、戦闘に入ってからは俺があっさり敵を撃破しているから気付かなかったのだろう」と答えるスサノオ。「そうでしたか。本部へ連絡しますか?」「いや、いい。もう少しで片がつくと言っただろう」「そうですね、了解です」と返すユイアであった。「ワイズ、貴方のレーダーには敵は映らなかったの?」と問うユイア。するとワイズ、戦闘の経過を示す光点図をディスプレーに映し出す。「えっ、ちゃんと捕らえてる。寝てしまったということ?」『クルゥル』(そうだ)と言わんばかりに返すワイズ。「久々のミスですね…」と反省をするのだった。 「おぃおぃ、さっきまでの威勢はどうしたんだ?」向かってくる敵機を撃破する炎龍輝。敵の攻撃を紙一重で交わし続け、敵機の持つ運動量に更に力を加えて蹴散らしているのであった。「貴様で最後だ!」最後の1機になった敵機に急速接近する炎龍輝。敵機のパイルバンカーを掴み、首筋をキラーバイトファングで噛み砕いたのであった。最後の1機の最期であった。「よし、掃討完了。離れたことだし、戻るか」と機体をキリクロイスの方へ向けるスサノオであった。 6 レーダーの出力を最大にし、ホバリングで基地に向かう炎龍輝。そこへ、「この高エネルギー反応、中佐、荷電粒子報です!」とユイアから通達が来る。スサノオもこれを捕らえていた。「出てきたか」空から降り注ぐ荷電粒子を交わすスサノオ。そして空を仰ぎ見ると狂王バーサークフューラー(BF)が姿を現したのだった。「まさか、まさか同系機同士でやり合う機会に巡り合えるとはな」と言うスサノオ。BFの繰り出すドリルバスタークローを交わしながら言う。「ユイア、本部にBFが出たと伝えておいてくれ。付け加えて増援無用と」と大声で言うスサノオ。「了解です」一言返すユイア。そして直ぐに、「本部へ、こちらユイア」Glintsだけの秘匿回線を繋ぐ。「こちらシンシア。どうしました?」と返す。「BFです。バーサークフューラーです」と慌てて言う。「フューラーですって?誰が相手しているのですか?」と冷静に返すシンシア。「タケガミ中佐が現在交戦中。増援無用とのことです」と返すユイア。そこへ、「報告遅いぞ、ユイア」ガイズが口を挟む。「BFだったな?」「そうです。ですが、ほんの少し前にディロフォース4機、レブラプター夜戦型10機、同パイルバンカー6機をタケガミ中佐が撃破しました」「今度はどこから来やがった」「わかりません。が、この地区の近辺を通りすがった敵部隊をタケガミ中佐が領内に引き寄せ撃破したものと思われます」と返す。「スサノオ!」と叫ぶガイズ。「はい、なんでしょうか大佐?そんな大声で」「この戦闘の経過を説明しろ!」と言う。「いや、今は後にしていただきたい。目の前のクズを叩くのに集中したいので」と落ち着き払って返す。「少々気に食わぬが終了後きっちり説明しろよ」と返すガイズ。「了解」そう返し、回線を切断する。「思わぬ邪魔が入った」バスタークローの連撃を易々と交わしながらスサノオは言った。「あのバカ、無理は禁物だと言っておいたのに…」と下を向いて言うガイズであった。シンシアは、「ともかく敵は1機です。彼なら数分で終わらせるでしょう」といつも通りの落ち着いた口調で言うのであった。そして、「ユイア、貴方しっかり周囲を見ておきなさい。特にライガルフの方を」と言う。「了解です。戦闘経過のデータを転送します」「ありがとう」ワイズから一連の戦闘の経過を示すデータが本部に転送される。これを見て、「驚くべき速さですね」と感心するシンシア。横目でガイズが、「本隊の人がアイツにアレを渡した理由が良くわかる」と言ったのだった。 7 「どうした一発も当たらぬぞ」途中から半ば敵機をからかう形になってきたスサノオ、突き出るバスタークローを爪で弾き飛ばす。「そろそろやるか!」と小言を言い、「はぁ!」BFのバスタークローの軸を掴み、「おりゃ!」BFを投げ飛ばす。それと同時に右のバスタークローを付け根から捩じ切ったのだった。投げ飛ばされた側のBF、直ぐに起き上がりスラスター出力最大、ホバリングで突進に移る。「この森の中でのホバリングは厳しいぞ」と突進を交わす。まだそれほど熟練ではないらしく、勢い余って木々に突っ込んだのだった。「おい、素人か?」とはき捨てるスサノオ。敵の出来の悪さに呆れ始めてきたのである。「BFだからもう少し楽しめるかと思ったら、やっぱりダメか」と言うと、敵に聞こえている筈はないのだが、BFが脚を広げ重心を下げたのだった。「来るか?来るなら来い!」と言い、BFから50m離れて脚を止める。BF、アンカーを展開し、尾のラジエータを展開、荷電粒子砲発射態勢に入る。BFの口内の銃身、光を帯びる。そして、炎龍輝に向かって放たれる。光の波、炎龍輝を覆う。「炎、収光!」そう叫ぶスサノオ。『ウォォォォォォォゥ』炎龍輝咆哮する。炎龍輝を覆う荷電粒子の光、全て吸収される。通常機の場合、全体の70%を吸収し、残り30%を外圧として受け流しているのだが、炎龍輝の場合は違っていた。敵機の放つ荷電粒子を全て吸収、自己エネルギーへと完全変換するのである。「そっくりそのまま返してやる。収光荷電粒子砲発射用意!」『ウォォォォォォォゥ』スサノオの叫びに呼応する炎龍輝。アンカー・ラジエータを展開、脚を広げ重心を下げる。荷電粒子砲を全て吸収した炎龍輝に驚き後退しようとするBF、「撃てぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」その叫びと同時に荷電粒子砲が放たれる。BF以上の初速の粒子の波、BFを一瞬に覆い尽くし、消し去ったのだった。「BFと言えどやはり弱いか…」と呆れるスサノオ。この一撃で戦闘が終結したのであった。 8 炎龍輝がBFを撃破して数分後、まだ闇残る空に轟音が響いた。「戻ってきたようだ」スサノオがそう言いながら、空を見上げるとライガルフへ爆撃に向かったGlints航空隊が頭上を通り過ぎていったのだった。「どうやら一戦あったようでござるな」大地に転がる残骸を見て言うサスケ。すると、「お帰りなさい、サスケさん」ユイアがF‐44の横にナイトワイズを着ける。「今戻ったでござるよ、ユイア。任務ご苦労」と労いの言葉を掛けるサスケ。「こちらこそお疲れ様です」と返す。「下の残骸、ざっと20といったところでござろうか?ユイアも参戦したのかな?」と尋ねるサスケ。「いえ、私は何もしていません。タケガミ中佐がお一人で全て撃破なさいました」「ほぅ、やはりなかなかの腕のようでござるな」と感心するサスケ。そして、「航空隊全員終結を確認、各員格納を開始せよ」と作戦完全終了を告げたのだった。「作戦お疲れ様です。ヒムロ中佐」スサノオがF‐44に回線を繋ぐ。「スサノオもお疲れでござる。同じ階級なのでござるから、名前で呼んでくれて構わぬのに」と返す。「いいえ、同じ中佐であっても私はまだまだです」と素直に答えるスサノオ。「そうでござるか。ならば精進せねばな」と返す。続けて、「スサノオも戻った方が良かろう」と言い、通信を切る。航空隊、キリクロイス山格納庫に機体を格納、2時間ぶりに地に脚を着ける。スサノオも機体を格納庫に入れ、任務を終了したのであった。 こうして航空隊のライガルフ襲撃、キリクロイス山近辺での戦闘に終止符が打たれた。共和国軍BLOX戦闘隊Glintsはまた大きな戦闘を終え、更に先へと進むのであった………。