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プロローグ東方大陸のブルーシティから遠く離れた田舎町・ウインドタウン。ここにバイクで運び屋をしている青年・アルウス・ボナパルドがいた。彼はある日、白銀のライガーゼロに出会い、それ以来白銀のゼロとともに運び屋の仕事とゾイドバトルをこなしていた。だがある日、ウインドタウンとその周辺の街でズィーファイター誘拐事件が発生。その事件に彼の友人であるヴィバルド・レーヴェが関わっていることを知ったアルウスはウインドタウン治安局とともに事件の元凶・軍事組織『ガゼス』と戦い、見事打ち倒した。これはその戦いから数日後のことだった。
どこまでも広がる水平線。海に出るのは久しぶりだ。俺は仲間の『運び屋』のドラグーンネストに乗って東方大陸の北方にある島へ行こうとしている。もちろん『運び屋』の仕事でだ。それは昨日のことだった。カラン カラン「いらっしゃいませー。・・・ってあんたは!?」「こんにちはマイティさん、そしてアルウスさん。」喫茶店に来たのは技術屋リヒトだった。あいかわらずつばの長い帽子の下からのぞく目が怖い・・・しかもなにやら長い筒状のケースを持っていた。彼の腰ほどの長さがある。「あ、まさか・・・仕事、ですか?」でもあまり嬉しくないような・・・以前あんなことがあったものだから・・・「たぶんこないだのことでお疲れのようですがお願いできますか?」そんな目で見られて断るわけにはいかない。「あ、ああ。もちろんだ。 ・・・ところでその中身は?」「とりあえずあなたに向かってもらう『島』ではとても貴重なものです。」「『島』・・・?」「ええ。とても困難な仕事になるかもしれませんがこれを『グリフ』さんという方に渡してください。」カウンターでなにやら地図を広げだす。リヒトが指差した先は東方大陸の北方の小さそうな島。ここへ向かえと・・・「『アニマ島』と言います。」「よ、よし、その島へ行ってそれをグリフさんという人に渡せばいいんだな?いいぜ、まいどあり!!」と、いうわけではじめての海外出張。地図ももらったし、たぶん大丈夫だ。「どんなところだろうな、ゼロデュナミス。」「グゥゥゥ。」とりあえず災難がありませんように。そう願うだけだ。なんか海が荒れてきた。お決まりのパターンだな。だがこれでこそプロの運び屋としての仕事だ。「おい、大丈夫なのか!?」「ああ、これぐらいの荒れは何度も経験している!!」海の運び屋は逞しい。暴れるドラグーンネストをなれた舵さばきで進めていく。「グルルル・・・」「ん? どうした?」ゼロデュナミスが何かを感知したみたいだ。と、いうことは目の前かもしくは周りに何かいる可能性が高い。突如ドラグーンネストが大きく揺れた。俺はなんとか柱につかまってその場を凌いだ。「どうした!?」「強烈なジャミングウェーブだ!!」ジャミングウェーブ。ゾイドのコンバットシステムを狂わす電磁波。それのせいでドラグーンネストが暴れだしたというのだ。「は!? 何でそんなものがこの海に!? 」「わからない。でもとにかくヤバイことにはかわりない!!」ドラグーンネストが激しく揺れだす。もう立つのが精一杯だ。「おい、目の前!!」モニターからドラグーンネストのキャノピーごしを映し出した。何かがいる。赤い目を光らせた亡霊のようなもの。たぶんゾイドだがこんなゾイドは見たことがない。「!! ハッチを開いてくれ!! 俺が追っ払う!!」「無理なこというな!! 今開ければ・・・ っておい!!」ハッチを突き破り、外に出た。ドラグーンネストの頭部に群がる『ゾイド』・・・? いやゾイドじゃない気がする。暗くてよくわからないがそんな気がした。だがこれは言える。あれはやはり『亡霊』だ。「離れやがれー!!」爪を輝かせて亡霊の群れに突進する。「ストライクレーザークロー!!」ゼロデュナミスの爪が数機亡霊を海に突き落とした。「どうだ!!」すぐさま周りを確認。しかし、「な!?」足に何かひっかかっている。さっきぶっ飛ばした亡霊だ。ゼロデュナミスの足をつかんでいるのだ。「は、離せ!!おいコラ!! ・・・!!」油断した。身動きのとれなくなったゼロデュナミスに向かってまだ頭部に群がっている亡霊の1機が捨て身の突進をかましてきた。俺とゼロデュナミス、そしてその亡霊はともに暗い海へ落とされた。気づくと俺は海岸にうちあげられていた。太陽がまぶしい。まるでさっきの荒波がうそのようだ・・・荒波? そうだ、そういえば俺は・・・「ドラグーンネストは? それにあの亡霊に・・・!!」ゼロデュナミスがいない。辺りを見回す。後ろを向けば海。前を向けば森林。ゼロデュナミスがどこにも見当たらない。さらに依頼ブツ・・・は、しっかりと手に持っていた。さすがプロだ。自分を褒めた。だがブツは少し破損していた。筒に穴が開いていた。「ん? でもコレって・・・」俺は穴の奥に見えたものが気になったので、筒を(無断で)こじ開けた。刀だ。しかもけっこう立派そう。タキが喜びそうだ。しかしなぜこれがここの島の人にとって貴重なんだ?ここはもしかしてサムライの島とか?でも依頼人はリヒト。だったらこれはそういう系の価値のあるものではないはずだ。「しかし困った・・・」愛機がいないし、地図もない。(ゼロの中に置いてきたからだ)それに届けてもどうやって帰るんだ?いろいろな不安が積もる。とにかく、町か村か人がいそうなところを探そう。それにはこの森を通らなければならないらしい。とにかく俺は刀を腰のベルトに挟み、森の中に入った。やはり彼の依頼は危険だ。今後どうなるんだ、俺?森の中を進むと、気の少ない広場のようなところに出た。その中央に巨大な石碑のようなものが建っている。日光がその石碑をアピールするように照らす。こけだらけでしかも鎖でグルグル巻きになっている。「なんだ、これ・・・」石碑に近づき、そっと手を触れる。そのときなんか嫌な気配がした。『殺気』? 後ろを振り向くと・・・1機のライオン型ゾイド。でも今回は前の亡霊のようなのではなく、ちゃんとしたゾイドだ。「グオオオォォォォ!!」『まとも』? なんか怒っているようだ。「は?ちょっと・・・おい?」前足を高く上げ、俺に爪を閃かせる。すぐさま俺は横へ逃げる。そのライオンの爪がさっきまで俺が立っていたところをえぐる。ある意味『まとも』ではない。まるで俺がはじめてゼロに会ったときみたいだ。「ま、待て!! 俺は別にお前の領地(テリトリー)を奪いに来たわけではない!!」と、以前ゼロに言ったことと同じことを言い聞かせた。だがそれでも俺をにらめつけて、爪をかざそうとした。「おやめなさい! 『ムラサメ』!!」ムラサメと呼ばれたライオンが声の主のほうを見る。すると俺の横のほうにダークイエローの犬(シェパード系)型ゾイドがいた。その足元に声の主がいた。「大丈夫ですか?お怪我はありませんか?」薄紫にも見える長い髪をした女の子。でも俺より少し年下ぐらいだ。「ごめんなさい。『ムラサメ』、この人は悪い人ではありません! 謝りなさい!!」だが『ムラサメ』(? かわった名前だ)はそっぽを向いてその場を立ち去った。まるで反抗期の子供みたいだ。よく見ると見たことのないゾイド。白と青で構成されたボディはゼロより逞しい。そして頭部には刃のような立派な鬣が付いている。「あ、あの・・・『ムラサメ』って、あのゾイドのこと?」「あ、はい。『ムラサメライガー』と言います。私の祖父のゾイドで・・・・ あ!」何かに気づいたように声をあげる。「申し送れました! 私は『小汝魅(シャオルーメイ)』と言います。『ルーメイ』と呼んで下さい。」そういえばお互い自己紹介していなかった。けっこう几帳面な娘(こ)らしい。「俺はアルウス。アルウス・ボナパルドだ。」「『アルウスさん』・・・」ふと何かを考え出す・・・何?「素敵なお名前ですね。」にっこりと言う。な、なんかテンポが・・・「それはそうと先ほどはすみませんでした。ムラサメは私の言うこと聞かない子ですがまさか人を襲うなんて・・・」「い、いや俺も無断でアイツの領地(テリトリー)に入ってしまったみたいだし。それに怪我していないから大丈夫」「え?でもその擦り傷は・・・?」腕とかに負った傷。ムラサメにやられたのではなく、ここに流れたときに負った傷だ。「あ、ああ。これは・・・」「大変!! すぐに私の牧場(ファーム)に来てください! 手当てしないと! 猟狗(リゴー)!」と、言われて俺はその娘とともに猟狗(リゴー)と呼ばれた(またかわった名前だ)ゾイド(のコクピットではなく頭部)に乗って森を進んだ。でもこのゾイド、どこかで見たことあるような・・・森を出るとそこは草原。すぐにその娘の牧場(ファーム)が見えた。牧場というと簡素なイメージがあるが、この牧場はけっこう立派だ。まるで城壁に囲まれているようで、門もかなり厳重な造りになっている。でもいちおう牧場のような雰囲気はある。門をくぐった先もいうまでもなく豪華だ。側面には野生のゾイド達が悠々といる。そして正面はまるで小さな古風の城だ。「ここが・・・君の牧場(ファーム)? なんかすごく立派な造りだね。」「はい。この牧場(ファーム)は祖父が建てました。『バイオ』から野生のゾイド達を守るためにこんなに厳重に造られているのですよ。」「『バイオ』? 」「はい。『バイオ』がどうかされました?」どうやらこの娘、俺が海外から来たことに気づいていないらしい。たしかにこの娘にもこの星の先住民族の証である頬のタトゥーがある。「あーわかった。あとでゆっくり話そう。俺もいろいろと聞きたいことがあるし。」小屋、じゃないな。『城』の中もやはりけっこう豪華。今客室にいるが、立派なソファーとテーブル、暖炉。こんなところにはめったに来られない。少しだけこの仕事受けてよかったと思った。「・・・ルーメイ様、それなら僕がやります! ルーメイ様はまだいろいろと大変なのだし」客室の扉の向こうで声がした。「タオさん、今回は私にやらせてください。仕事ならあとでしますので。」「え? でも・・・」そして扉が開いた。「お待たせしました。すぐに手当てしますね。」救急箱を持ってルーメイが入ってきた。そう言うなりすぐに簡単に傷口の消毒や包帯、バンソウコを貼ってもらった。俺にとってたいした傷ではないのだが、ここは素直に。ファームの外。俺はここにいる野生ゾイドを眺めていた。「お怪我は大丈夫ですか?」ルーメイが聞いてきた。「ああ、おかげさまで。 ありがとな。」「い、いいえ。当然のことですので。」照れている。 「あ、そうそう。俺のことまだ話していなかったな。じつは・・・」俺は東方大陸に住んでいること、仕事でここに来たこと、途中で仲間とはぐれてしまってここに漂流したこと、すべて話した。「そうなのですか・・・」「だからここのこと全然知らないんだ。できればいろいろと教えてくれないか?」「はい! ではまず一番聞かれることからお話します。」この島『アニマ島』は昔から他の大陸の国との関わりがなかった島。だがたまたま流れ着いた大陸の軍人やゾイドのおかげで発展してきたという。さらに『惑星Ziの大異変』の影響で恐竜型ゾイドが完全に絶滅。かわりにすべての動物型ゾイドが生息していると言う。どうりで牧場(ここ)には恐竜型ゾイドが見当たらないわけだ。さらにさっきの犬もかつてヘリック共和国の高速戦闘ゾイドであった『ハウンドソルジャー』だということにも気づいた。だが100年前(つまりヘリック対ネオゼネバスの戦争が終結した年)突如『バイオ』と呼ばれるゾイドが発生。今日まで他のゾイドや街を襲っているという。それは「恐竜型ゾイドのなれはて」と言われているらしい。「だから祖父は野生のゾイド達を守るためにこのファームを建てたのです。・・・簡単な説明でしたがここはそういうところです。あ、あとここを治めているのは『オルデカ諸国』で、戦争は昔ありましたが今はありません。」「ありがとう。あと、あのムラサメライガーというゾイドは?」一人隅っこにいるムラサメを指差して言った。「あの子は私の祖父のゾイドです。でも見ての通り誰の言うことも聞いてくれないのです。きっと祖父がいなくなって寂しいのかと思うのですが今の私には何をしてあげればわからなくて・・・」彼女もまた寂しそうな顔をしている。なんか気まずいこと聞いてしまったな・・・「うーん、そうか・・・ でもな、もっとムラサメと正面から関わっていけばそのうち受け入れてくれると思うよ。」「そうですか? そうか・・・もっとお話してあげればいいのかな?」「少なくとも、俺はそうしてきたぜ。 おーい、ムラサメー!!」立ち上がって声をかけてあげた。即無視してどこか言ってしまった。「あ、やっぱこいつ難しいゾイドだな・・・」少なくと、俺のゼロよりもな。「ふふふ。」そばでくすくすと笑うルーメイ。「あの・・・前言撤回。ごめん、俺にもどうすればいいかわからない。」間抜けだ自分・・・「アルウスさんっておもしろい方ですね。」にっこりと俺に微笑むルーメイ。「アルウスさんの言う通りかもしれないです。もっと自分から向かっていかないとなって。」「そ、そうか・・・」なんだかんだで俺のアドバイスは参考になったらしい。でもこの娘、けっこう良いかも。「あ。」雨だ。「たいへん! みんな、すぐに戻って!! アルウスさんも家に戻りましょう。」客室で窓の外を眺める。こういうのをたしか『村雨』っていうのだよな?このザーザー降りは。「アルウスさん、あれ。」窓の外の門のところを指差した。たしかに何かが見える。「あれが『バイオ』です。」赤い目を光らせた恐竜型ゾイド。でもコイツは・・・あのときの『亡霊』だ。「アルウスさんはそこにいてください。」そういって客室をでようとした。「おい、君はどうするんだ!?」「このファームをお守りします!!」そう言って客室の扉を開けた。「ルーメイ様!!」だが反対側から誰か来た。たしかタオと呼ばれた人。「どうされました!?」「ムラサメがいないのです!!」あいつ、外に出たままだったのか。「え!? どうしましょう・・・」「俺が行く。1機ゾイドか何か乗り物を貸してくれ!」「で、でも・・・」「世話になったほんのお礼だ!! とにかく行くぞ!!」そう言って俺とルーメイは客室、城(小屋)から出た。門の前にはバイオがおり、今にも門を破壊して入ってきそうだ。ムラサメはファーム内にはいなかった。と、いうことはファームの外だ。「私がバイオの注意をひきつけますので、その間にムラサメを探しに行ってくれますか?本来なら私が行かなければならないのですが・・・」「まかせろ! ・・・でも君はどうやって戦うの?」ルーメイはこの雨と状況の中、ゾイドに乗っていない。ただハウンドソルジャーを2機引き連れているだけだ。「大丈夫です。私はゾイドに乗れませんが、ゾイドで戦うことはできます。」言っている意味が矛盾しているような気がするが、とにかくここは彼女の言うとおりにしよう。「そろそろ・・・です!!」門が破られ、10機ぐらいのバイオが入ってきた。でもよく見ると汚い赤いボディで、装甲すら施されていない。これが果たして恐るべきゾイドなのか?「なあ、アレがそんなに恐ろしいわけ?」「『サックフレーム』のラプターですが、『ボーンフレーム』が現れればかなりたいへんです。」「そうか・・・」よくわからない語句が出てきたが、とにかく後のほうでやばくなるらしい。バイオ・ラプターが赤い目を光らせながらゆっくりと近づいて来る。「ではいきますよ。猟狗(リゴー)!! バイオからファームを守って!!」ルーメイの掛け声でハウンドソルジャー2機がバイオの群れに飛び込んだ。すれ違い様にバイオを切り裂いていく。この隙にだ! すぐさまヘルキャットを発進させてファームから飛び出した。ムラサメがいそうな場所と言えばあの石碑のあった場所だ。とにかくそこへ向けて森の中へ入った。そしてあの広場。なぜかここだけ雨が降っていない。だがいた。俺の勘通りムラサメがいた。だがなぜか石碑に向かって体当たりしている。大事なものじゃなかったのか?俺はヘルキャットから降りてムラサメに近寄った。「グルルル!」すぐさま警戒。当たり前だ。不法侵入したからな。「どうしたんだ? その石碑になにかあるのか?」よく見ると石碑ではなく、それを取り巻く鎖を断とうとしているみたいだ。何か今ムラサメにとってその石碑は必要なものらしい。「鎖を断ちたいのか?だったら手伝うぜ!」近くにあった大きな石を持って石碑に近寄った。そして鎖に向かっておもいっきり石をぶつけた。これぐらいでは断てない。何度もぶつける。するとムラサメも再び鎖に向かって体当たりし始めた。何度かやったがだめだ。お互い息を切らし始めた。「グゥゥゥ。」ムラサメが俺をじっと見る。やはり怒った? 手伝うとかいいながら全然役に立たなくて・・・だがムラサメが見ているのは俺ではないようだ。腰あたり・・・そうか、「こいつでか!」依頼物の刀。たしか切れ味のよいものならピストルの弾すら切り裂くと聞いた気がする。鞘からゆっくりと引き抜く。白刃が顔をだした。刀を両手に持ち、振り上げ、思いっきり鎖に向かって振り下ろした。「ええええええいっ!!」キンという金属音をともに鎖が切れた。そして鎖はガラガラと石碑から崩れ落ちた。するとムラサメが左腰を石碑に向けた。さらに石碑がなんとムラサメにひきつけられるようにして倒れ始めた。ムラサメの反対側では亀裂がはしる。石碑がムラサメの腰に接続。同時に石碑の表面がはがれ、亀裂から何か光るものが顔を出した。巨大な刀。つまり石に覆われていた部分は柄に当たる部分だったのだ。天に向けて刀をかかげるムラサメ。そうか、だから名刀・村雨の名を持っているのか。ムラサメは刀を折りたたむと、俺に頭を下げた。そしてコクピットを開いてきた。「俺に?・・・」まるでゼロのときと同じだ。だが今コイツの力が必要だ。「よし!」ムラサメのコクピットに乗り込んだ。見たとこのないゾイドのコクピットの様式もまた見たとこのないタイプだ。だがそんなに複雑な操作ではないだろう。操縦桿を思いっきり倒し、発進させた。「全速力で行くぞ、ムラサメライガー!!」見かけによらずノーマルアーマーのゼロ以上のスピードだ。あっという間にファームに到着した。そのままのスピードで門を潜り抜けると、まだあの『素体』のバイオが3機いた。こちらを振り向き、追い討ちをかけようと走り出す。ザコにはようはない。何か砲撃武装は? パネルで確認するとちゃんとコイツに装備されている。『ソードキャノン』。これでいく。「どけーーー!!」背中の刀に装填されている小型キャノンが火をふく。装甲すらないバイオが壊れたおもちゃのように飛び散っていく。動かなくなったバイオを横切り、城(小屋)へと向かう。ルーメイと1機のハウンドソルジャー、3機の中型バッファロー型ゾイド・カノンフォートが城(小屋)を背にバイオを対峙している。だがそのバイオが何か違う。化石のような装甲をまとっているのだ。つまりさっき倒したのとは違う。こいつがルーメイの言っていた『かなりまずいヤツ』のようだ。「銃丑(チョンチョウ)!! 」銃丑(チョンチョウ)と呼ばれた3機のカノンフォートが砲撃。バイオに全弾命中する。しかしバイオは少しひるんだ程度で、まったく効いていない様だ。じりじりとルーメイ、いや城(小屋)に近づいていく。「い、いや・・・ こないで・・・」もうやばいぞ。「待てー!!」全速でバイオに突進。バイオがこちらを振り向いたが遅い。ムラサメの突撃でバイオがぶっ飛ぶ。「え!? ムラサメ・・・なの?」「大丈夫か、ルーメイ!!」「アルウスさん!? アルウスさんが乗っているの?」「ああ、詳しい話は後だ!とにかくここは俺に任せろ!!」そして早速試させてもらう。ムラサメの最大の武器・『ムラサメブレード』を。背中の巨大な刀が前方に展開し、リフトにそって左腰へとおりる。バイオが怒りを目に焼きつけ、前足をかざしてムラサメに飛び掛ろうとする。ちょうど目の前、そしてこの間合いならいける。「ぶった斬れーーー!!」腰をひねらせ、目の前に飛び掛ってきたバイオをムラサメブレードが真っ二つに切り裂いた。『居合い斬り』という技だ。切り裂かれたバイオが発熱しだし、どろどろに溶け出す。もういないよな? 周りを見渡すがもういない。なんとかファームを守りきったようだ。「アルウスさーん。」ルーメイが駆け寄ってきた。俺もコクピットから降りてルーメイの前にでた。「ありがとうございます!おかげさまでファームが守られました!」息を切らしながら言う。でも走ってきたせいではない。「あと、ムラサメと仲良くなったみたいですね。それにあの大刀は・・・」「ああ、あの石碑だ。どうやらこいつのものだったらしい。で、この大刀の封印を解いたら俺にコクピットを開けてくれたんだ。」「あの石碑? あれは祖父のお墓ですが・・・ あ、でも祖父がなんか言っていたような・・・」「? なんて?」「『ムラサメとともにバイオから人々を守れ そのときこの”イージス”が役に立つだろう』と。」『イージス』・・・またまたよくわからない語句がでてきた。とにかくこのムラサメブレードのことらしい。「そうか。とにかく俺ではなくムラサメのおかげだ。俺はムラサメの手伝いをしただけだし。」ムラサメはたぶん自分もバイオからファームを守りたい。だがあの大刀がなければバイオは倒せない。だからあの大刀の封印を解こうとあんなふうに脱走していたんだと俺は思ったからだ。「でも・・・ あれ?」ルーメイが空を見上げた。そういえば・・・「雨が、やんでいる?」いつのまにかやんでいた。雲の隙間から赤い夕日の光が漏れ出し、あたりを赤く染める。「・・・お礼ぐらいさせていただけませんか? なんでもいいですので。」空を見上げながらルーメイが静かに言った。「じゃあ、飯にしてくれないか? 今丁度腹減っているんだ。」「・・・はい。」その夜は従業員のみなさんとの晩餐会となった。ルーメイの手料理はここ(大陸)で言う中華料理。とても美味だった。フツーに大陸で運び屋をやっている俺には二度とないごちそうだろうとも思うほどだ。 夕食が終わると俺は1部屋貸していただき、泊めさせてもらった。しかし今後どうしよう。とりあえず明日ここから一番近い街への地図をもらって出発しよう。でも足がない。さすがにここでまたゾイドを借りるわけにも行かないし。送ってもらえるように頼んでみるか。でも一番考えさせられるのは、愛機のゼロデュナミスやはぐれてしまった運び屋仲間、そして『ここから出られるか』だ。さっきルーメイの話を聞く限り、一番聞かれそうな『ここから大陸へ出発する手段』のことを話していない。つまりもしかしたら出られないかもしれない。そうしたら俺は・・・次の日。俺はなぜか城(小屋)の外へ呼び出された。外へ出るとムラサメとルーメイがいた。「どうしたんだ? こんなところに呼び出して。」「アルウスさん、じつはお願いがあるのです。」少しモジモジしながら言った。「今日出発するのですよね? もし迷惑でなければ私とムラサメを同行させていただけませんか?」「へ? 何で?」「祖父は『ムラサメとともにバイオから人々を守れ』と私に言いました。私、いやムラサメにそんな力があるならその力を人々のために役立てたいのです。それにムラサメもあなたを障害から守ってくれます。私はゾイドに乗れませんが、道案内や簡単に土地の説明ならできます。だがらお願いします。」そして深く頭をさげた。だがこのお願い=俺にゾイド提供&可愛い案内人が付くという俺にとっておいしいお願いだ。それに同時にそのバイオとやらと戦うなら願望だ。こいつらには借りがあるからな。「そこまで頭下げなくても。 頭を下げたいのは俺のほうだ。こちらこそよろしくな、ルーメイ。」「はい。」とても嬉しそうに言った。俺もなんだか嬉しい。こうして俺はかわいい道連れとまだ謎めいたゾイドとともにこの依頼ブツを届けることになった。この先何が起こるかわからない。だが何が起ころうと、俺は超えてみせる。
いつもと違う服でいつもと違う荒野をいつもと違う相棒とともに駆けてゆく。そして俺の今乗っているゾイド・ムラサメライガーはゼロ以上のスピードを持ちながら、100km/hぐらいしかスピードをだしていない。なぜなら・・・「いいか、俺が今左手に握っているトリガー、つまり操縦桿がムラサメを走らせたり、旋回させたりするものだ。前へ押すと前進、後ろへ引くと後退、左に回せば左旋回、右に回せば右旋回だ。」「ふんふん。」後部座席に座っているこいつ(ムラサメ)のご主人・ルーメイにゾイドの乗り方をコーチしながら走っているのだ。「・・・と、いうわけだ。少し動かしてみる? 後部からでも切り替えれば操縦できるよ。」「はい、やってみます!」一端ムラサメをとめ、操縦を後部座席に切り替え。ルーメイは威勢良く操縦桿を握り締めた。「ではいきます!」!!ムラサメが勢いよく走り出した。しかもいきなり全速力(マックススピード)で。すごい重力がかかる。「きゃー!! 何で!?」「前へ押しすぎ! 一端トリガーを引くんだ!!」「ええいっ!!」今度は急ブレーキがかかり、勢いが余ってムラサメが転倒した。「・・・ふぇぇ・・・ごめんなさい。」転倒したせいで逆さ状態。ルーメイが半泣きで謝ってきた。「・・・まぁ、そのうち慣れるさ。慣れだよ慣れ。」励ましの言葉をかけたが、なんか心配だ・・・ムラサメで走行約30分、ルーメイのゾイドファームから一番近い街・アポロン街(ポリス)らしいものが見えてきた。とはいうものの、かなり短い塔みたいなのが見えるだけだ。街らしい街が見当たらない。「なあ、本当にあれなのか?」「はい。もう少し近づいてみればわかります。」もう少し走行。するとたしかに街が見えてきた。「クレーターの中に街が・・・」そう、クレーターのようにくぼんだ荒野の中に街があるのだ。遠くから見えた塔はこの街の中心に聳え立っている。正面には2機のゾイド・ヘビーホーンとルーメイが呼んだブラックライモスが正面入り口みたいな門に立っている。(警備役らしい)門からは橋で塔の天辺に行けるようだ。入り口に来た。するとライモスがお出迎え。「ようこそ、アポロン街(ポリス)へ。ゲートをくぐり、タワーから入国してください。なお、ゾイドの駐場は地下になっております。」街の広さはこっちのブルーシティはいうまでもなく、へたすればウインドタウンより少し狭い。ただ塔の高さは大都市のビルよりもほんの少し高いかもしれない。周りの街は全体的に低いが。塔の中のリフトを使って降り、途中地下にムラサメを留めて俺達は街に出た。とにかく目立つのは回りの景色。光が真上ぐらいしか入っていないため、周囲を囲む岩や土の壁あたりは暗い。さらにその壁には(窓や梯子があるため、)建物があるようだ。あと、警備ゾイド・ヘビーホーンとグリアン(ベアファイターのこと。呼び名が違うらしい。)が数機。厳重だ。「うわー、少し不思議な光景だな。なんでクレーターなんかに街が?」「もちろんバイオ対策のためです。緊急時には上をシャッターで閉めて進入できなくするためなのですよ。」バイオ、昨日出てきたアイツか。「・・・なぁ、バイオってそんなに恐ろしいのか? 昨日戦った限りザコだったんだけど。」「うーん、ではご説明します。」バイオには『サックフレーム』と『ボーンメイル』という2種類のタイプがおり、『サックフレーム』は装甲すら施されていないいわば量産タイプで、群れで行動する。『ボーンメイル』は単独か群れの指揮官的存在で活動。流形金属によりなみの攻撃を受け流したり、その他独特の兵器を装備しており、同クラスのゾイドではまったく歯が立たない。そんなバイオは他のゾイドコアや『エデンジェネレーター』を喰うことでその命をつないでいるらしい。それを聞くとバイオの恐ろしさがわかったが、さらにわからない語句が・・・「『えでんじぇねれーたー』って?」「はい、いわば『街のゾイドコア』です。街の地下にそれがあって、すべての街に必要なエネルギーはそのエデンジェネレーターのエネルギーを使っているのです。だからこれを食べられるということは街が死ぬと言うことなのです。ちなみに私のところのファームにもあります。」「なるほど。それは恐ろしいヤツだな。」「だからなんでムラサメの武器が効いたのか不思議なのです。フツーは直接コアを狙うしかないのですが、正面から装甲ごと切り裂いたので・・・」「それはムラサメが特別なゾイドだからだろ?おじいさんもそれを知っていたから『バイオから人々を守れ』と言ったんだろうな。」「そうですね。そうか・・・だったらたくさんの人々を救うことができるかな?」「ああ、俺達ががんばれば絶対にだ。」なぜか俺達2人ははしゃいでいた。なんか希望があるような気がしたからだ。「では、この調子でグリフさんというお方も探しましょう。まずは市役所のほうへ行けばわかると思います。」「よし、じゃあ行こうぜ。」そして正面の歩行者道路に1歩足を踏みいれた。「あ、あと絶対に大陸から来たということは話さないで下さいね。中には残念ながら嫌う人もいますので・・・」「あ?ああ。」だからここに来る前にこの服に着替えさせたわけか。おじいさんの若かりし頃のもの。下はフツーのズボンだが、上は赤を基調としたレザースーツ。しかもきついしかっこ悪いし・・・でも街の御皆さんの服装を見れば全然違和感がないかもしれない。いわばこの街は100年以上も前のこの世界の町の様子そのものだ。他の大陸と関わりがないと言っていたから技術もそんなに進歩していないのだろう。徒歩で近くの(比較的)大きな建物の市役所へ。ここに来ればまず住民から調べてもらえるからだ。しかしそう世間は甘くない。調べてもらったが、それらしき人は住んでいないらし・・・とぼとぼと市役所の外へ出る俺とルーメイ。ここからどうする運び屋アルウス。「・・・ごめんなさい。お役に立てなくて・・・」なぜかルーメイは俺以上に落ち込んでいた。自分の責任だと思っているらしい。「ルーメイのせいじゃないよ。まぁ、いきなり見つかったら苦労しないけどね。」と、励ます。まぁはるばる漂流してきたんだ。それにつりあう仕事でないと。「・・・じゃあさ、この街案内してくれない? ここの文化とかみたいからさ。」せっかくここに来たんだ。もっとこの珍しい島を見て行かないと。それにこのままではルーメイの落ち込みがなおらない。「はい、私でよければご案内します。」笑顔で答えた。君にはその笑顔が似合う。なんて思ってみたり。とりあえず市場を1周。とりわけ珍しいものはないが、店が古風でおもしろい。また機械部品なども売っていたが、ほとんどが100以上も前の技術で造られたようなものだった。でもこれはこれでクラシックな感じがして大陸で売れるかも。中には俺の知らないものがあったが、それは小声でルーメイに聞いた。そのたびにルーメイは嬉しそうに(小声で)答える。次に行ったところはルーメイが俺に見せたかったところで、東方大陸ではまず見られないものだった。寺院。獣神崇拝をするこの星の人々。もちろん信仰するのだから寺院があってもおかしくない。しかしこの文化は地球人の多い東方大陸にはない。中央大陸ならあるかもしれないが、とにかく俺は見たことがないのだ。外見は『教会』ってやつだ。入ると奥や側面に大きなステンドグラスがある。もちろんすべて古代ゾイドらしきものが描かれている。そしてとりわけ奥にあるステンドグラスが大きく、1機の野生ゾイドが天を駆けるような姿が描かれていた。「あれは?」「神獣型ゾイド、『聖獣(セント)・ファンロン』です。」「セントファンロン・・・」見た目は鹿のようだが、顔は龍のようで、立派な鬣と尾、そして金色の角が生えている。「へぇー。綺麗なゾイドだな。」「はい。ファンロンはすべての動物型ゾイドを守り、統合する『動物型ゾイドの王』ととして讃えられているのです。」 「だからファンロンは私達の『守護神』でもあるのですよ。」二人であのステンドグラスを見ていると、一人の男が言ってきた。「こんにちは、シャオさん。」「ファウストさん!」歓喜の混じった声で言うルーメイ。二人は知り合いらしい。「あと、そこの『ガードさん』。はじめましてかな?」『ガード』?俺のこと? でもこの空気のながれだと俺だな。「ああ。でも俺はガードとかなんかじゃねぇぞ。」「それは失礼した。その服装で剣を持っているのでつい。 では改めて、私はこの街の防衛軍隊長を勤めているファウスト・R(リフレイン)・シュバルツだ。以後よろしく頼む。」「えっと、・・・ 俺は運び屋アルウス。アルウス・ボナパルドだ。この街へは届け先の人を探しに来たんだ。あとここへははじめてだがよろしく。」軍人らしい。確かに紺色の制服はそれっぽい。俺よりも少し背が高く、金髪で緑の目。年も俺よりちょい上だろう。相手は軍人で正しすぎる敬語。いかにも俺が元軍人であるにも関わらず、まともではないことが言葉遣いからあらわれる。「俺じゃなかったらお前はとっくにどっか飛ばされているさ」と親父に言われた気がする。「ちなみにお二人はどういうご関係?」ルーメイとファウストに聞いてみた。牧場の娘と軍人、どういう関係だ?「私たち軍人は彼女にとてもお世話になっています。彼女の牧場で育ったゾイド達が私たちとともにこの街を守ってくれるからです。」「なるほど。つまりあのライモスや周りにいるベアもルーメイのファームのゾイドなんだ。」間接的なご関係というわけだな・・・ 少し安心した。「そんな・・・ ほとんどは私の祖父が育てたゾイドです。私なんて全然・・・」顔を赤くして言った。かなりの照れ屋さんだ・・・「ところでアルウス・ボナパルドさん。私でよければ少しお手伝いをしますよ。」「じゃあ、グリフさんって方知っているか?その人が届け人なんだ。」「グリフさん・・・? すまんが私にその名が付く知り合いはいないな。市役所へは行ったのかい?」だろうな。だいたいリヒトの知り合いだ。軍人にいるわけがない。「行ったがいなかった。 この街にはいないみたいだな・・・」「では別の街を探すといい。ここからだと・・・」 ピピピ、ピピピ、通信音みたいなのが聞こえた。すぐさまファウストがポケットから携帯用の通信機を取り出し、でる。「こちらファウスト少佐。・・・・うん、了解した。すぐさま私もパワードででる。」「どうかされました?」「バイオの小隊が接近しているらしい。私も出撃するのでここで失礼する。」ファウストは敬礼をして寺院を出た。バイオ。また出やがったか・・・ 「私たちも出ましょう。少しでも力になってあげないと。」真剣な眼差しで言ってきた。でもここは・・・「いや、彼は軍人なんだろ?だったら俺たちは待機しよう。」「え?どうして?」「ここにはバイオから守ってくれる人がいるんだ。そいつの出番とるわけにはいかないだろ?」俺も以前タキの捜査にちょっかい出していたからな・・・「・・・でもとにかく様子を見てみよう。数が多ければ手伝ったほうがいいし。」そして俺たちも寺院からでた。すると外は夜・・・?あたりが暗い。「え? なんで真っ暗なんだ?」「それは・・あれのおかげです。」ルーメイが落ち着いて上を指差す。そうか、さっきルーメイが言っていた。『バイオ対策の緊急シャッター』。それは街全体を覆う大型シャッターだった。ここだけ見るとけっこう技術は進歩しているように見える。さらに周囲のライトがポツポツと点き始める。少しだけ明るくなった。「でもこれじゃあ様子が見えないな・・・とにかくムラサメに乗って・・・ !! 危ない!!」とっさにルーメイを抱きかかえ、寺院前から離れる。 何かが降ってきたように見えたのだ。そして『何か』は派手に音を立てて地面に着地した。「バイオ!?」俺が昨日見たバイオラプターよりも大型のラプトル・メガラプトル型(タイプ)だ。どういうわけか進入してきたのだ。赤い目と、胸に光る赤いコア。赤く怪しく光る目が俺たちを睨みつける。すぐさま警備ゾイドのグリアン(ベアファイター)とヘビーホーン(ブラックライモス)が駆けつけてきた。銃を向け、メガラプトルを完全包囲。俺はルーメイをお姫様抱っこして寺院と隣の建物の間に避難した。だがメガラプトルはお構いなしに正面のヘビーホーンに飛び掛り、ボディを無残に引き裂きさいた。双方から飛び掛ったグリアンも尻尾でなぎ払われた。細いボディからは想像できないほどのパワーと俊敏性だ。邪魔者を振り飛ばしたメガラプトルは一直線に塔のほうへ行ってしまった。とにかくまずい。とっさにいつも右手にはめているズィーコンガッドレッドで『ゼロ』を呼ぼうとした。「ゼロー!! ・・・!? 」そうだった・・・今俺のそばにはゼロはいない。右手にもズィーコンガッドレッドをはめていない。無意識に呼ぼうとしてしまったのだ。いつもそばにいた相棒。いないと感じるととても孤独になってきた。しかたがない。ムラサメ・・・はズィーコンガッドレッドでは呼べない。徒歩で塔まで行くしかない。「ルーメイ! 追いかけるぞ!! ・・・って、」なぜかちょこんと座り込んでまん丸な目で俺を見ていた。なんかぼーっとしているようにも見える。「ルーメイ?」「・・・あ、はい?」「早くバイオを追いかけるぞ・・・?」「ああ、そ、そうでしたね。 なんで私固まっていたんだろう。変ですね・・・」なぜか混乱している。ルーメイの手をつかみ、急いで塔のほうへ走った。メガラプトルはまだ見える範囲にいた。いや、あたりまえだ。「ムラサメ!!」ムラサメがメガラプトルを抑えていたのだ。どうやって起動して地下から出てきたかはわからないが、とにかく助かった。メガラプトルが尻尾でムラサメを振り払おうとする。ムラサメはすぐさまメガラプトルから離れて回避。このスキにムラサメに乗り込んだ。コンバットシステムは当然ながら起動している。すぐに動かせた。だがメガラプトルもこのスキに塔のほうへ走っていった。しかもかなり速い。「逃がすか!!」たとえ塔まで逃げれても、そこからどうする?塔の入り口の扉は厳重で進入は困難だ。もはや袋のネズミ状態。「はん、先のことは考えていなかったみたいだなこの亡霊が!」だがその亡霊も脳ミソはあるようだ・・・塔の前で立ち止まったメガラプトルは、口から真っ赤なドロドロなものを足元に向かって発射した。ナパーム弾ってやつだ。ナパーム弾で開いた穴から地下へ飛び降りた。「な!? おいコラー!!」地下(の1階)はゾイドの格納庫。中央には塔の一部分。薄暗く低い天井だがかなり広い。そして周りにさまざまな種類の動物型ゾイドが並んでいる。メガラプトルのヤローはどこかに隠れているはずだ。俺の勘がどうささやく。だがムラサメの視点からでも探すのは困難。レーダーにも反応ナシ。とにかく1つずつ見ていくしかない。「待って。」ずっと無言だったルーメイが言ってコクピットから降りた。隣に並ぶゾイドのうちの1機であるコマンドウルフ(たぶんここでは別の名だろう)の前に立った。そして右手に何かを持っているらしく、それををコマンドにかざす。するとコマンドが動き出した。そしてコマンドは頭を下げた。まるでルーメイの言うことを聞いているようだ。コマンドはふと後ろのほうを振り向いた。後ろに何かいるのか? ルーメイはさらに右手に持っている何かをコマンドが向いている方向へかざした。今度は格納庫中のゾイドが動き出し、コマンドが向いている方向へ向く。彼らが向いた方向ではなにやらザワザワしている。すぐにわかった。メガラプトルがそこにいるのだ。「バイオはあこにいます!」コクピットに戻ったルーメイが言う。そしてメガラプトルも顔を出した。かなり動揺しているようだ。まさか周りで自分を隠していたゾイドが急に自分のほうを振り向いたからな。だがメガラプトルもすぐさま次の行動へ。再びナパーム弾で地面に穴を開け、そこからさらに地下へ逃げていった。「逃がすか!!」俺たちも後を追い、メガラプトルが開けた穴から地下へ飛び込んだ。地下(の2階、いやもっと深い)はさらに暗いところだが、周囲にはたくさんのパイプがあり、俺たちは奥へメガラプトルを追いかけながらもっと深いところへ降りている。なぜかだんだんと光が見えてきた。こんな奥から。メガラプトルがふと立ち止まる。今度こそ追い詰めた。いまがチャンスだが、俺もふと立ち止まってしまった。メガラプトルの目の前には眩い光を放つ巨大な球体、つまり巨大なゾイドコアのようなものがある。ウルトラザウルスなどLL型サイズのものだ。そこからあのパイプがつながっている。「そうか、これが街のゾイドコア・・・。」「エデンジェネレーター・・・です。」とてつもなく大きなエネルギーの塊。そしてこれはメガラウプトルにとって極上のエサだろう。ゆっくりといただきたいが、今ここに邪魔のもがいる。振り返り、俺たちをにらみつける。メガラプトルが爪をかざす。それに対しムラサメはムラサメブレードを展開。じりじりとお互い間合いをつめていく。先に飛び込んできたのはメガラプトル。目に留まらぬ速さで爪で飛び込んできた。横にすべり、メガラプトルの攻撃をかわす。そしてすぐさま追いうちのソードキャノンを打ち込んだ。だが忘れていた。相手はバイオメガラプトル。通常兵器ではダメージを与えられない。流刑の装甲が弾をはじく。「!? 駄目なの・・・・?」「だったらムラサメブレードをあてるのみだ!」ムラサメブレードをかざし、今度はムラサメブレードをかざし、ムラサメからメガラプトルに向かって飛び込んだ。メガラプトルは上に跳び、攻撃をかわす。ムラサメはすぐさまターンし、再び突撃をかける。今ならあたるはずだ。「いっけーーー!!」ムラサメブレードがメガラプトルを襲う。だがメガラプトルは素早く振り向き、ムラサメの目の前でナパーム弾を発射した。「うわーーーっ!?」「きゃーーーっ!!」ナパーム弾の炎がムラサメの頭部を覆いつくす。コクピットの中だが熱い!炎を振り払おうと地面を転がる。そのスキにメガラプトルはエデンジェネレーターのもとへ。「まずい、このままではジェネレーターを・・・!!」だがあのスピードだ。今起き上がって追いかけても遅い。どうする、どうするアルウス!! 「それに1歩も触れさせるわけにはいかない!!」ふと、その瞬間声が聞こえ、同時にメガラプトルが声の主のこぶしをくらった。この打撃力、そして姿を現したこのゾイド、こいつは・・・「パワードコング!? と、いうことは・・・ファウストさん!!」ルーメイがそう呼んだゾイド、それは黒いアイアンコングだった。「うおおおおおおおおお!!」アイアンコングのパワードが左手でメガラプトルの首根っこをつかみ、右手をおもいっきりひいて、こぶしを打ち込もうとする。ひるんでいたメガラプトルが暴れ出し、コングにも自分をつかんでいる左手を牙で噛み砕こうとした。コングが手を離してしまう。怒りに燃えるメガラプトルがさらに爪でギガスを数発たたく。たたくたびにギガスの装甲の破片が飛び散る。しまいにはコングの左手に爪が突き刺さった。だがメガラプトルの爪がコングの左腕にくい込み、身動きがとれない。メガラプトルの動きを封じた。「アルウス・ボナパルド! 今だ!!」ムラサメブレードを展開。1歩踏み込み、右前足のパイルバンカーを地面に突き刺し、固定。その勢いでムラサメブレードを振るう。「切り裂けーーー!!」ムラサメブレードがメガラプトルを一刀両断。真っ二つにされたメガラプトルはやがて熱を発し溶けて消えた。なんとか守りきれた。ムラサメはふとだいぶ傷ついたコングのほうを向く。コングの損傷は激しいが、コングもこちらを向いた。勝ったぜ、俺たち。「ありがとう、シャオさん、そしてアルウス殿。君たちのおかげで街のジェネレーターは守られた。心から感謝する。」一部荒れてしまった街の教会前で防衛部隊代表のファウストが敬礼をした。さっきのメガラプトルは小隊の1機で、高く飛び込み、シャッターが閉まる前に侵入してきたらしい。しかし他のサックフレームのメガラプトルは防衛部隊がなんなく撃破したらしい。さすが軍隊、戦闘のプロだ。「当然のことをしたまでです。な、ルーメイ。」この旅と言うか冒険は俺の運び屋としての旅でもあり、ルーメイのバイオから人々を救うたびでもある。だからルーメイに呼びかけた。「・・・」「ルーメイ?」「・・あっ、はい?」「どうさせました?何か今日のシャオさんは少し様子がおかしいですよ?」ファウストも心配してルーメイにいう。何かぼーっとしているみたいだ。メガラプトルが出現してからだ。どうしたんだ?「・・・で、いつかの話の続きだけど・・・」「ああ、その届け人を探すのなら次の街へ行くといい。ここから一番近いのはアルテミス街(ポリス)。ここよりももう少し大きな街だ。シヴァ湖を目指していくとすぐに着く。」「ありがとう。なんか世話になりっぱなしだな俺・・・」「いえいえ。当然のことです。とにかくお二人の無事をファンロンに祈ります。」そして敬礼。その場を部下とともに去った。「じゃあ俺たちもどこか宿探して今日はここに泊まろう。もう暗いしな。」シャッターはもう開いているが、あたりは暗い。惑星Ziの月の一つが明るく見えるくらいに。「あ、あの・・・」「うん?」正面から俺に言ってきた。なんか頬が赤い。「・・・今日は・・・ありがとうございました。」「は?」「えっ、だから・・・助けてもらったお礼・・です。」でも顔はそう言っていない。別のことが言いたいみたいだ。「こちらこそ今日はありがとう。いろいろと案内してもらったからな。」少し微笑みぎみに肩をポンと叩いて言った。頬がさらに赤くなる。ほんとうにどうしたんだ?「とにかく、この街にも宿はあるだろ。案内してくれ。」「はい。 ではこちらです。」笑顔で言い、それに対しルーメイも笑顔で返事。ルーメイが向かった先へ俺も行った。結局届け人は見つからず。でもここで悩んでいても仕方がない。先のことは今晩にでも考えよう。星が見える暗闇。そこへ1匹の白い鳥が飛んできた。白い鳥は地面にぽっかりとあいたところにある街へと向かう。街の中。1つの建物の屋根。その建物は周りの建物よりも立派で高い。その天辺には鐘がある。鐘の隣に一人の男が立っている。そこへ先ほどの白い鳥が飛んできて、男の腕にとまった。男は白いフードとマントにたいなものを羽織っている。白い鳥がとまった右腕には皮製の小手。鳥が翼をたたむと男の耳元でなにかささやいた。「・・・そっ、でもその男はまだ来ていないみたいだけど?本来なら今日ここに来て俺に『例の物』渡しているのだろ?」「・・・ま、この島だ。バイオにやられている可能性がある。こっちからその男を捜す必要があるな。」そしてふと下に見える街を見る。彼の視界には破損した建物が並んでいる。「・・・それにしてもあのライオン型ゾイド、『あの刀』を背負っていたと言うことはイージスゾイドだよな? なぜ今頃?」さらに辺りを見回し、1軒のまだ明かりが漏れている建物に目を向ける。「・・・今はいい。そのうちわかるさ。」 「大きな力を持つものはそれなりの責任を背負わなければならない。」「用心して先に進めよ。イージスゾイドに乗る冒険者よ。」