「2015年の時勢とリーダーに求められる生き方」 (212) |
- 日時:2015年02月06日 (金) 17時37分
名前:伝統
*致知』2015年2月号特集「未来をひらく」より ~ 北尾吉孝(SBIホールディングス社長)
今年は乙未(いつび)の年です。
「乙」の字義を紐解くと、後漢の儒学者・許慎(きょしん)の『説文解字』に
「春に草木、冤曲(えんきょく)して出ずるも、陰気なお強く、 その出ずること乙乙(いついつ)たるを象(かたち)どる」
と記されています。
つまり、前年に出た草木の芽が外界の抵抗が強く、 まだ真っすぐに伸びないで曲がりくねっている状態だということです。
新しい改革、創造を進めようとしても、障害にあって屈折する可能性が大きいのです。
「未」は、木という字に一本横棒が添えられています。 この「一」は木の枝葉の繁茂を表します。
枝葉が繁茂すると暗くなることから、「未」は「昧」に通じて「くらい」と読みます。
以上のことから判断すると、今年何か大事を成そうと思えば、 いろいろな抵抗や紆余曲折があろうと、気概を持ってその改革を進めていかなくてはいけない、 ということになります。
目の前を暗く覆う障害物があっても、 剪定して一掃し、生々たる生命を発展させなくてはいけません。
物事を不昧に持っていき、公明正大にしていくことが 特にリーダーには強く求められるのです。
過去の乙未の年の出来事を見ていくと、 60年前の1955年の日本では日本住宅公団が設立され、 国民の生活基盤が一層安定してきました。
国内では自由民主党の結成、GATT(関税及び貿易に関する一般協定) への正式参加などの出来事があり、海外では西ドイツの主権完全回復、 原水爆禁止第一回世界大会などが行われました。
このように第二次世界大戦後の世界の平和の安定に向けた 動きが見られましたが、一方では旧ソ連がワルシャワ条約機構を結成し、 東西の冷戦が激化するなど国際協調の面では様々な屈折もありました。
さらに60年遡って1895年に起きた出来事を列挙すれば、 日清戦争後の日清講和条約の調印、独・露・仏による日本への三国干渉、 乙未戦争(下関条約によって台湾の割譲を受けた日本に抵抗する清国、台湾住民が起こした戦争)、 乙未事変(朝鮮李朝の高宗の妃・閔妃が日本人に暗殺された事件)などがあります。
様々な外圧や抵抗の中、力をつけていったのが120年前の日本なのです。
今年はどうでしょうか。
選挙でマジョリティを取ったとはいえ、 安倍首相の政権運営は決して楽観視できないでしょう。
先にも述べたように、構造改革に対しては既得権益を守ろうとする 抵抗勢力の動きがさらに強まる様相を見せています。 日韓関係、日中関係の改善もまだまだ道遠しの感があります。
そのような中で安倍首相がいかにリーダーシップを発揮しながら 日本を再興させるかが注目されます。
干支学とは古代からの知恵の集積であり、 決して干支占いというような単純なものではありません。
そして、その知恵に歴史的事実を照らし合わせてみると、 普遍的な妥当性が見出されることが分かります。
「故(ふる)きを温(たず)ねて新しきを知る(温故知新)」 という『論語』の有名な一節があります。
干支もそうですが、新しい未来をひらく上では、 どうしても歴史に学ぶことが欠かせません。 過去、現在の積み重ねの上に未来は構築されていくのです。
このことを踏まえた上で、未来をひらく際に常に頭に置くべきことをお話しすると、 この宇宙には「中庸の法則」という極めてシンプルな法則が貫かれていることです。
中庸とは、いわばバランスです。 「中庸の法則」を軸に物事を捉えていくことで、これからの時代がどのように変わっていくのか、 また私たちはどこに位置し、いま何をしなければいけないのかが見えてくるのです。
古代中国の人たちは自然の観察する中で、宇宙に存在するあらゆるものの構造は 「陰」と「陽」の2つのバランスからなることを発見しました。 陰と陽のバランスをとることで全体(極)の均衡がとれると考えたのです。 これも中庸の法則の一つです。
「中庸の法則」に照らし合わせれば、環境破壊の上に成り立つ物質文明がこのまま進めば、 やがて人類や自然が行き詰まるのは必至です。どこかでバランスを取ろうとする宇宙の動きが 必ず働くはずです。
近年頻発する災害や異常気象などは、そういう自然からの警告なのかもしれません。 自然は決してコントロールできません。 しかし、その法則を知り、対処することは可能だと思います。
国家や社会をよりよい方向に変えるには、詰まるところ私たち人間一人ひとりが 自己維新する以外に方法はありません。
よりよい方向に変わっていった人たちの集合体によって、 世の中のおかしな動きは未然に食い止められることでしょう。
自らを磨き自己維新する人が増えてこそ、 私たち人類の未来もひらかれていくことを忘れてはいけません。
<感謝合掌 平成27年2月6日 頓首再拝>
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