【広告】楽天市場から2025年大感謝祭12月19日から開催エントリーお忘れ無く

短編リレー

ホームページへ戻る

名前
メールアドレス
タイトル
本文
URL
削除キー 項目の保存


こちらの関連記事へ返信する場合は上のフォームに書いてください。

[292] 「学園事件」〜女学生編(フローネ&リア) 7
周防 松 - 2004年12月25日 (土) 22時03分

「そんな人……一人しか知らないわ」

ぽつりとつむがれたその言葉に、
「先生、知ってるんですか!?」
私が思わず身を乗り出すと、先生は、ええ、とうなづいた。
「ブライアンっていう名前で、あなた達と同じ、中等部の3年生よ」

ええと、ブライアン、ブライアン……。

私は、脳みそをフル回転させてみたけど……どんなにがんばってみても、ブライアンって名前の人は
思い浮かばなかった。
うーん、先生の言う通り、面識ないのかも……。

「あの……ブライアン君って、どんな人なんですか?」
私が悩んでると、リアちゃんが話を進めてくれた。
どんな人かって尋ねてるから、たぶんリアちゃんもブライアン君に面識ないんだと思う。
「どんな……そう、ね……なんていうのかしら……ちょっと変わってるのよね」
先生は、ちょっぴり悩んだような顔をしてて、天井を睨んだ。
「変わってるって、どんな風なんですか?」
うん、それは私も知りたいぞ、リアちゃん。
変わってるって言ったって、いろいろあるもんね。

「うーん……見た目は普通の子にしか見えないんだけど、やっぱり変わり者なのよ。
提出物ではちゃんとしてるらしいんだけど、普段はカタカナのところををひらがなにして書くの。
なんでも、それが本人としてはカッコイイみたいで……」

説明する先生を見ながら、私は全然関係のないことを頭の片隅で思った。

まさか、保健の先生だったなんてね。どうりで白衣着てるわけだよ。

私ね、授業中とかに具合が悪くなって保健室に行った、なんてことが入学以来一度もないのよ。
保健室に行くのなんか、学校の健康診断とかそんな時くらいだよ。
そりゃあ、保健の先生の顔なんかまともに覚えてるわけないよねえ。

……って、今それどころじゃないんだってば。

「……あれ」

その時、ふと、頭の中に疑問が沸いた。

「先生は、どうしてブライアン君のこと知ってるんですか?」
そうだ。ちょっと変だ。
生徒……同じ中等部3年生の私達は認識すらないっていうのに。
「ああ、そのことね。ブライアン君、保健室にしょっちゅう出入りしているから、自然に顔を覚えたのよ」
「病弱なんですか?」
今度はリアちゃんが質問。
先生は、軽く首を横に振る。
「そうじゃないの。頭が痛いとかお腹が痛いとか言ってるけど、いつも仮病」

ふーん。仮病ねえ。
もしや、勉強嫌いで授業サボりたいのかな?
それともクラスになじめない、とか……。
とりあえず、先生がブライアン君のことを知ってるのは納得がいったぞ、と。

なんて思いながら、私は、向かい合わせの位置に座ってるクライブ君にちらっと視線を向ける。
クライブ君、さっきからずっと黙ったままだ。
それも、腕組みして、目を閉じてたりする。
まるで、誰にも関わって欲しくないみたいな態度。

……なんで??

「クライブ君、なーんでさっきから黙ってるのよ? お腹でも痛い……」

カラカラ……。

何かの物音に気付いて、私は追及を中断した。
その音は、私だけに聞こえたわけじゃない。
皆がいっせいにいぶかしげな顔をしたことからも、それはわかった。
まあ、クライブ君は目を開いただけだったんだけどね。
一体、何の音だろう。
何気なく音のした方角に顔を向けて――私は自分の顔がこわばっていくのを感じた。

「ねえ……私達以外、ここには誰もいないんだよ、ね?」

得体の知れない不安が、じわじわと押し寄せてくる。
だけど、その言葉を肯定する人はいなかった。

もう一度、言うけれど。

ここには、私達以外の人間はいない。

それじゃあ、この現象はどう説明されるんだろう。
閉まっていたはずの薬品棚の戸が、いつの間にか勝手に開いていた、なんて。
……さっきの音は、薬品棚の戸が開いた音だったんだろうか。

そして、皆の見つめる前で、薬品棚から、すーっと何かが空中を滑るように移動してきた。

それは、歯の模型だった。
ほら、歯磨き指導の時なんかに使うアレ。

……い、一体何事?

私は、座っていたパイプ椅子から腰を浮かした。
今目の前にあるのは、ただの歯の模型だ。
だけど……空中に浮いている。
こんなこと、普通に起こったりするはずがない。

歯の模型自体は怖くない。
だけど……次に一体どんな現象が起きるか、予測できない。
私は、歯の模型を凝視したまま、動けなかった。

沈黙沈黙。また沈黙。

そんな状況を破壊したのは、歯の模型の方だった。
歯の模型が、カタカタカタ、と上下の歯をかちあって音を鳴らしたのだ。
まるで、笑ってるみたいに。
「きゃーっ!」
私は、パイプ椅子につまづきそうになりながら、テーブルの反対側に逃げた。
だって、私の席が一番薬品棚に近かったんだもん。
「ピンポーン。先生、大正解!」
そのうえ、歯の模型は声まで出した。
しかも、妙に気軽そうな、明るい感じの男の子の声。
「しゃべったあ!?」
思わず私が大声を上げると、歯の模型は、すいーっと目の前に移動してきた。
ひええ、なんか不気味だよぉ!
「きゃーっ! あっち、あっち行ってぇー!」
私は、腕をぶんぶん振りまわして歯の模型を遠ざけようとした。

びしっ。

「きゃ」

……う?

手に当たった感触と、リアちゃんの声で我に返る。

わああっ、勢い余ってリアちゃんに手をぶつけちゃったよ!

「リアちゃんゴメンっ!」
慌てて、ぶつけたとおぼしきリアちゃんの二の腕をさすって平謝り。
ゴメン、すぐそばにいたの、忘れてたよ。
「い、いえ、痛いっていうよりもびっくりしただけですから」
リアちゃんは笑って許してくれたけど、全然痛くないってコトはないよね……結構強くぶつかった気がするもん。

「あーあ、乱暴だなあ」
人を小バカにしたように、男の子の声が笑う。
むかっ。誰のせいだと思ってるのよっ。
「あんた誰よっ!」
歯の模型に向かって、何者かを尋ねる日がくるとは夢にも思いませんでしたよ、わたしゃ。
「僕?」
歯の模型が、斜めにかたむく。
ちょうど、首をかしげる時の動きに似てるかもしれない。
「僕は、さっき話題に出てた人物だよ」
「まさか……ブライアン君?」
先生がかすれた声を上げると、声は楽しげに笑った。
「そっ。だから言ったじゃないですか、『先生、大正解!』って」

カタン。

突然、それまで黙って腕組みしてたクライブ君が、パイプ椅子から立ち上がった。
そして、つかつかと大股で歩いてきて歯の模型をつかむ。

「……ブライアン、くだらない真似はやめろ」

クライブ君が険しい表情で述べたその途端。
ひゅんっ! と何かが空中を切り裂くように飛んだ。

「なんてこと……!」
先生が、悲鳴にも近い声を上げる。
理由は――クライブ君の喉元に、ハサミの鋭い切っ先がつき付けられていたからだ。
ちょっと深く呼吸しただけで、その刃先に触れてしまうんじゃないだろうか。
見ている私まで、息をひそめてしまった。

「態度には注意した方がいいよ。ここじゃあ、僕が王様なんだからね」

さっきまでの声とは違う、少し低い、威圧的な雰囲気の声。

ゾッとした。

これって……気に障ることをした奴は、みんな痛い目にあわせるぞ、ってことなんだろうか。
本人は王様って言ってるけれど……それは、王様というよりも暴君に近いような気がする。

「……なんで……なんで、こんなことするの!?」

『こんなこと』が、ハサミの切っ先をつき付けられてるクライブ君を指してるのか。
それとも、この空間に閉じ込められてしまった状況を指してるのか、自分でもよくわからない。

わからないけれど――私は、ぎゅっと拳を握り締めて、そう声を上げていた。

[293]
周防 松 - 2004年12月25日 (土) 22時14分

ごめんなさいマリムラさん。
なんか妙な展開に……。




Number
Pass

ThinkPadを買おう!
レンタカーの回送ドライバー
【広告】楽天市場から2025年大感謝祭12月19日から開催エントリーお忘れ無く
無料で掲示板を作ろう   情報の外部送信について
このページを通報する 管理人へ連絡
SYSTEM BY せっかく掲示板