| [288] 「学園事件」〜女学生編(フローネ&リア) 6 |
- マリムラ - 2004年12月17日 (金) 23時27分
四人で小さなメモを囲むように座る。 幸いパイプ椅子なんかは足りていて、触れるし動かせたのはいいのだが。 「……え、と」 黙ってメモを見つめるだけの空気に耐えきれなくなり、つい言葉が漏れる。
えーと、うーん、みんな真面目だなぁ。とか思ってる場合じゃないよね。
言ったのが自分だと気付いたときにはもう遅かった。三人の視線が刺さって痛い。でも、何も考えていませんでしたとも言えずに何とか頭を働かせようとするが、そう上手くもいかず。 「……何?」 待ちくたびれたようにクライブくんが促した。
ヤだなぁ、妄想癖は自覚あるけど、口に出すこと無かったのにナァ。 うわ、そうじゃない、今はこんなコト考えてる場合じゃないんだってバ。
「……みんなこのメモのせいでココに居るんですか?」 苦し紛れに聞いてみる。 この選択は間違っていなかったようで、クライブくんと先生が顔を見合わせた。 「このメモはね、最初保健室のデスクに置いてあったのよ」 「白紙でな」 先生の言葉にクライブくんが頷く。 先生は少し言いづらそうにクライブくんをちらっと見て、言葉を続けた。 「保健室まで運ぶ物が沢山あって、生徒が途切れたときに鍵を閉めて取りに行ったの。でも、ちょっと重くて困っていたらクライブくんが通りがかったものだから……」 沈黙。 先生もクライブくんも押し黙ってしまって、なんだか重い空気になる。 「えーと、メモの所まで話が繋がってないと思うんだけど?」 小さな可愛いクラスメートは、素朴な疑問を口にした。
ありがとうフローネさん! 多分先生は自分のせいでクライブくんを巻き込んだと思っててクライブくんも否定する気がなくてだから話を続けづらかったんじゃないかしらとかいう推測を全部吹き飛ばしてありがとう! 心の中でガッツポーズ。
「え、ええ、そうね。ごめんなさい」 先生が苦笑すると、クライブくんは堪りかねたように話し始めた。 「鍵がかかっていた部屋に戻ってきたらメモがあった。不審に思って手に取ったら字が浮かんできた。何だこのメモって話してる最中にココに飛ばされた。なんか疑問点はあるか?」
そんなに一気にまくしたてなくても。 えーと、まあ、なんとなくの状況は把握できたけど。
「んじゃ、気になることを一つずつ聞きまーす」 フローネさんが手を挙げると、クライブくんがイヤそうに手を広げた。 「どーぞ?」 非常にやる気が感じられない。 「何が手がかりになるかわからないし、些細なことから聞くから覚悟してね」 微妙に対立しているような気がしつつも、フローネさんは楽しそうに見えた。 「まず、先生とクライブくんは以前からの知り合い?」 「ああ」 「そうよ」 「何で?どういう知り合いなの?」 間髪入れずの質問に、クライブくんが苛立ちを見せる。 「……関係あるのかよ」 身を乗り出すクライブくん。あわてて先生と私が間に入る。 「まーまー」 「おちついて」 ちなみに私から時計回りにフローネさん、先生、クライブくんの順で座っている。 フローネさんとクライブくんの間には机があるんだけど、それがなかったらどうなっていたことか。 「あのね、クライブくんは保健委員なのよ」 先生が助け船を出した。 「あー、それで保健室に探しに行けって保健委員に言わなかったのか」 納得。 「でもあの先生、きっと私の委員会なんて覚えてないよね」 フローネさんの意見に苦笑しつつも同意。そういう先生っているよね。 「で?まだあるのかよ」 「あるよー」 優等生らしからぬ態度のクライブくんに負けていないフローネさん。 「ココ、凄く大事なんだけど」 「?」 「なんでクライブくん達はメモを持っていなくて、私達が拾ったの?」 人差し指を立てて、見上げるように聞いた。 「あー……、多分」 言いづらそうなクライブくん。 「何よ?」 「……落とした」 「……え?」 「だから!いきなり揺れて驚いて握ってたメモを落としたの!」 頭を抱えて黙るクライブくん。先生もさっきから一言も喋っていない。 「ええー!?」 間が空いて、フローネさんが叫んだ。 「それって何?クライブくんが落とさなかったら私達は巻き込まれなかったってコト!?」 「……かもね」 なんだか投げやりにクライブくんが呟いた。
えーと、頭の中を整理整理。 鍵がかかっていた部屋にメモが置いてあって、見つけたクライブくんと先生がココに飛ばされた、と。 んで、その時落としたメモを拾っちゃった私達も飛ばされたらしい。 手がかりは『空間を折り重ねるてすと』と書かれたメモだけ。 外に通じる扉や窓には触れられないみたいで。 「あ」 思わず呟いてしまって気まずい。 「でも、他の人が拾うことはもうないってことで、被害は少なかったのかも知れませんね」 フォローになってないですよリアさん。と、自分に突っ込み。 冷ややかな空気を感じながら、何とか言葉を続けた。 「あと『てすと』って平仮名なんですよね、おかしいですよね」 だから、なんだか話し方までおかしいですよリアさん!……と思いつつも上手くいかない。
「そんな人……一人しか知らないわ」 先生が呟いた。

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