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短編リレー

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[255] 「あなたを救う旅」 ◆1◇
千鳥 - 2004年11月30日 (火) 00時37分

     砂漠に、黄色い風が吹いた。
    紅く染まった砂丘が、見る見るうちに、褐色を帯び、
   遠くにあった青緑色の丘が消えた。
  ここは、色のついた風が吹く、不思議な砂漠――――。

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 涙の跡に、砂がはり付いて、僕はあわててぬぐった。
 ぬぐった砂も、僕を乗せる白象もいつのまにか黄色く染まっている。

「海を見たことはあるかい、ロッシ?」

 口を開けば、きっと鼻声で、泣いていたことがバレてしまうから、僕は背中越しに問いかけてきた乾いた声に、大きく首を縦に振って答えた。

「私にとっては、ここが……海だ」

 青く、澄んだ海原 ――――― 草木も枯れ果てた乾いた砂原
 潮の香りを含んだ風 ――――― 絶えず体に吹き付けてくる砂嵐
 波の音の変わりに、ヒュウヒュウと砂を巻き上げる高い音がした。

 海の見える港町に住んでいた僕は、どうしてこんな遠い場所につれてこられてしまったんだろう。

 だぼだぼの白い貫頭衣の中に、砂が入り込んで居心地が悪い。
 強い日差しが肌を焼き、僕の肌は赤く火照っていた。
 父さんや、母さんや、妹のジェニーが恋しくて、僕の目から、再び涙が出てくる。

「いくら泣いても、お前の涙が水溜りを作るより早く、体のほうが干からびちまうよ。……私のようにね」

 姿勢良く象を操っていた主が、くるりと後ろを振り向いた。
 黒いフードの奥のには、水分の抜け切った浅黒い皮膚が張りついている。
 窪んだ眼孔が、僕を見下ろして・・・その姿はまるでミイラのよう!
 
「僕は、この砂漠から出られるの?」

 僕の家に戻れるの?
 スンと鼻を鳴らしながら、僕は彼を見上げた。
 細い足首には未だ、太く赤い鎖の痕が残っている。
 足枷、奴隷の証。
 海賊船に捕まって、こんな砂漠に連れてこられた僕。
 しかし、人買いの男たちも、もう居ない。
 皆、砂の中に飲み込まれていったのだ。
 砂の中には、地上の生物を飲み込んでしまう、恐ろしい生き物が住んでいるのだという――蟻地獄だ。
 こんな砂漠で野垂れ死ぬなんて、僕はなんて運が悪いんだろう。 

「お前は運が良いよ。私に出会えたのだから」

 彼が言って、青い、風が吹いた。
 同じ色に染まった象が、喜びの声を上げた。

「あそこを見てごらん。鳥が集まっている。あそこにオアシスが出来るぞ」

 青く凝(こご)った一帯から、みるみるうちに水が湧き出し、草木が生い茂る。 
 見たこともない光景に、僕はただ、阿呆のように口を開いていた。


 この砂漠の砂はそれぞれ比重が違うのだという。
 風の強さや、方角で、巻き上げられる砂が変わる。
 それが、それぞれ集まったり、混ざったりして、この砂漠の色を作るのだそうだ。

「その砂を読み解くのが、我々の役目・・・」

 僕をピンチしから救い出した、黒いマントの男は、皺だらけの手で力強く、白かったり、黄色かったり、青かったりする象の手綱をひいた。
 死神なのか、砂漠で果てた亡者なのか、それとも守護天使様の使いなのか。

 彼と僕の砂漠の旅は、まだ始まったばかりだった。

[256]
とくめい - 2004年11月30日 (火) 20時12分

台詞がとても印象的ですね。
また世界観、設定もなかなか他にはないですね。すごく好きだーこういうの。個人的意見ですが。

こう、主人公と相手の今までのシナリオも短くすっきりしてて読みやすいです。
続きが気になる!

短くて、なおかつ分かりやすい始まりですね。
砂漠の設定が個人的に大プッシュです!



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