| [231] NO231光と闇【二つの世界】 |
- 匿名 - 2004年10月27日 (水) 18時38分
自分が生まれた事により未来が大きく左右される。そんな事が起
きるだろうか?一日一日生まれる数多くの生命の中から選ばれた
存在。その者の魂(こころ)次第で世界の未来は変わる――
ここは大きな港町、カルシュワル。
ずらりと並んだ船の数々はカルシュワルの広大さを思わせる。し
かしよく見ると、船の中にも港にも人の姿はなかった。そんな
時、どこからか歓声が聞こえてきた。
「ただいまから20年に一度行われる、ナンバー1を決める武闘大会
を始めたいと思います!!準備はいいか野郎共!」
「おお!!」
歓声の正体は20年に一度、ここカルシュワルで行われる世界最大
のイベント、王者を決める為の武闘大会が開催されようとしてい
たのだ。
「一回目の勇敢なる挑戦者は!右側から、魂をむさぼる男、ジャ
ック・デッド〜!」
「うおおおお!!」
身長は2mを容易く超えるくらいの巨人のような大男。服はボロ
ボロの短パン一枚のみ。彼の凄まじいほどの引き締まった筋肉が
剥き出しになっている。武器は鋭く切れそうな、刃の尖った体格
に似合った大きな斧だ。芸の如くそれを振り回して観客の目を引
いている。
「反対側からは、これはまた体格差のある若い戦士と言います
か!旅人の、ルネス・レイグナ〜!体格のデカイジャックにどう
挑むのか!?」
ジャックとは裏腹で、身長は170cmちょいくらい。見た目は
冷めた感じの青年で、ちょっと跳ねた金髪に青く澄んだ瞳が目に
つく。服装は動きやすそうなカジュアルな感じで、武器は少し大
きめの剣だった。剣の中心には大きな魔玉が嵌め込まれている。
「それでは、バトル開始!!」
戦闘が開始された直後、ジャックは何か叫んできた。
「そんな弱っこい体でどうやって俺様を倒すつもりだ!?死んじ
まう前に逃げた方が利口だぜ小僧!」
ルネスは無言でジャックに剣を突きつけた。そして何かを唱え
る。
「――真紅の炎を纏った獣 魂を揺さ振る灼熱の炎を我の前で放
て フレイン」
「な、何だ!?」
突然辺りが暗くなったかと思うと赤い光が空を赤く染め、真紅の
炎を纏ったフレインが姿を現した。
「フレイン、別名フレイムドラゴン。俺の頼りになる召喚獣さ。
さぁどうする?」
「うぐ・・・。こうなったら俺様の必殺技!バンデッドモンスタ
ー!」
ジャックは禁断と言われている書物を隠し持っていたのだ。どこ
からともなく死者が蘇り会場は大パニックに陥った。
「緊急事態です!これはもうイベント所ではないでしょう!」
司会者の言う通りだった。バンデッドモンスターは次々と生ま
れ、会場にいる人たちを惨殺していく。武闘大会登録者も逃げる
始末で、もう手に負えない状況だった。
「ふははははは!いい気味だ!全く雑魚共はこれだから困る。あ
ん?お前は俺に刃向かう気か?」
一人だけ無情なほど冷静に現状を見つめているのは、ルネスだっ
た。動じない心は凄いが、感情がないのか、何をするということ
でもなかった。
「うはははは!その根性気に入った!どうだ?仲間になれば助け
てやるぞ」
ジャックがそう言った時だ。ルネスの手を誰かが掴んだ。
「お願い助けて!」
それは幼い少女だった。その瞬間ルネスの脳裏に何かが廻った。
遠い過去のような、近い未来のような・・・。
世界を覆う黒い影、よく見るとそれはバンデッドモンスターの軍
団だった。バンデッドモンスターは世界に広がり、星を食い滅ぼ
したのだ。その中に紛れている一人の人間――
「俺・・・?」
気づくと少女の姿はなく、ジャックが何か問いかけている。幻の
ような今見た映像が途切れる直後、バンデッドモンスターに
囲まれているルネスの耳に風のような声が聞こえた気がした。
「君の心で全てが変わる。未来を創造するのは君だ。不幸な未来
も、幸福な未来も、君の自由だ。今見た映像、君は変えたいか
い?」
ルネスはぎゅっと強く剣を握り締め、フレインに何かを命令し
た。
「俺はくだらない未来であっても、自分が信じた道を行く」
その後どうなったのかはあなたのご想像にお任せします。
ルネスの判断がどうであれ、人は一人一人大きな力を持っている
もの。自分の明日を切り開くには、自分を信じる強い魂(こころ)
――

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