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短編リレー

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[424] 憑き物を落としてください(ティルヴィアンネ&しぐれ)−7 ちいさなちいさな みなみのしまで だいななわ
ケン - 2006年10月09日 (月) 20時21分

「……何、話してたんですか?」

 疑問に…というより不審に思っているという感じのしぐれの問いに、ティルヴィアンネは一瞬戸惑った。
 「何を話していたのか?」きっとそれは先ほどの村人との会話のことだろう。
 ティルヴィアンネは少し考えた。
 一緒に村の異変の調査を手伝ってくれると言ってくれたこの少年に隠し事をするのはよくないとは思った。
 だが会話自体は特にたいしたことの無い世間話みたいなものだった。
 やることが無くて外に出たティルヴィアンネと、彼女を一目見ようと村長の家の周りをうろついていた村人が偶然会っただけのことだ。
 そのたわいない話を全部伝えるのもなんだか迷惑な気もした。

「んふふ、気になりマスカ?」

 ティルヴィアンネは人差し指を自分の下唇につけ、わざと気になるような口調でしぐれに逆に問いかけた。。

「べ、別に気になりません。」

 しぐれは一歩後ずさって答える。
 あからさまに引かれてしまった感じがし、ティルヴィアンネはすこし残念そうな顔になった。

「ただの世間話デス。気にしないでくだサイ。」 
 
 そういうとティルヴィアンネはしぐれの横を通り過ぎて家の中に入っていってしまった。
 すれ違うさまにティルヴィアンネの美しい金と銀の髪の毛がしぐれの鼻をくすぐった。
 
「昔々、ある島に大きな巨人が住んでいマシタ。」

 たまらずくしゃみをしそうになったしぐれの耳に、ティルヴィアンネの美しい声が届いた。
 まるで歌を歌うように聞こえる。

「巨人は醜い姿をしており島の住人に嫌われていマシタ。」
「巨人も嫌われていることを知っていたノデ、島の住人とはかかわらないようにしていマシタ。」
「ある日、一人の少年が巨人に会いに来マシタ。」
「巨人は少年も自分のことを嫌っていると思ったノデ、少年を追い返してしまいマシタ。」
「それでも少年は毎日毎日巨人に会いに来マシタ。」
「巨人は不思議に思いマシタ。」
「巨人が少年になんで会いに来るのかと聞いタラ、少年はこう答えマシタ。」

 そこでティルヴィアンネは一度止めると、しぐれに向き直った。

「お友達になりタイ。」

 しぐれの目をまっすぐに見つめてティルヴィアンネは言った。
 なんとも言えない沈黙がその場を包んだ。
 二人は静かに見詰め合っていたが、先にしぐれが沈黙を破った。

「不思議なお話ですね。」
「フフ、まだ続きがあるんですケド、明日は早いデス。あまり夜更かししてはいけまセンヨ。」

 そう言い残すと、ティルヴィアンネは家の中へ入っていってしまった。


 翌朝、さっそく調査に出かけたティルヴィアンネとしぐれとノランハッドの三人は、しかしいきなり離れ離れになっていた。

「うぅ、どうしてこんなことに…。」

 生い茂る森の中を一人でとぼとぼと歩きながら、しぐれはつぶやいた。
 事の発端はこうである。
 まず村長に渡されたこの島の地図を見て行き先を決めた。
 村の東西には森があり、西の森はモンスターが住んでおり、その先も滝があるだけで何もないらしい。
 東の森は動物がいるが危険ではなく、さらにその先には泉があり、そこには小さなホコラがあるということだ。
 しぐれもティルヴィアンネもその東の泉のホコラが怪しいと睨み、一行は一度東の森を抜けて泉を目指すことにした。
 と、ここまではよかったのだが…

 東の森に入った瞬間にティルヴィアンネが消えてしまったのだ。
 はぐれたのかもしれないと、ノランハッドもティルヴィアンネを探しに森の中へ消えていった。
 西の森とは違い、危険はないので先にホコラに行っていてくれと言われたのだが、昼間なのに薄暗い森はやはり少し怖い。

「ま、まぁ何とかなりますよね…。」

 しぐれは勇気をだして森の中を進んでいった。
 そのまましばらく進んでいると、ふと、しぐれは何かの気配を感じて立ち止まった。

「てぃ、ティルさん?」

 そう呼ぶが返事は返ってこない。

「ノランさん?」

 やはり返ってこない。
 かわりに何かのうなり声が聞こえてきた。

「ま、まさかモンスター? そんな、こっちの森は安全だって…。」

 恐怖に固まって動けないしぐれ。
 気配は段々と近づいてくる。

「…っ!?」

 突然しぐれは背後から口を押さえられて茂みの中に引きずり込まれた。
 抵抗する暇さえ与えない一瞬の出来事だった。
 そのまましぐれは地面に押し倒され、何者かにのしかかられた。
 口は押さえられたままだ。

「…(殺される!)」

 そう思って目を硬く閉じた。

「静かにしてくだサイ。音も立てなイデ…。」

 聞き覚えのある美しい声だ。
 ややアクセントとイントネーションのずれた独特な声色を間違えるはずがない。

「(ティルさん!?)」

 目を開けたしぐれの目の前に、ティルヴィアンネの美しい顔があった。

「静かにしてくだサイ…。」

 いつもと違い、真剣な眼差しのティルヴィアンネ。
 そもそも口を押さえられているのでしぐれは声を出せないし、のしかかられているうえに見た目に反してすごい力で押倒されているので、しぐれは騒ごうにも騒げない。
 それ以前に先ほどからティルヴィアンネの豊かな胸がしぐれを圧迫して嬉しいような苦しいようなでまったく身動きできないでいるのだ。

 と、しぐれが現状に混乱していると、すぐ近くの木がめきめきとへし折られた。
 わずかに動く首をいっぱいに伸ばして音のした方を見ると、今の今までしぐれがいた場所に、異形の怪物が二体もいるではないか。
 その明らかに凶暴そうな容姿をした怪物は、しばらくきょろきょろと辺りを見回すと、うなり声を上げると森の奥へと消えていった。

「…(なんだ、今の…あれがモンスター? でもこっちは東の森で、モンスターは西の森で…あれ? どうしてモンスターが東の森に?)」
「どうしてこちら側にモンスターがいるのかはわかりませんケド、ノランハッドが心配デス。彼は強そうに見えますけど私より戦いなれていませんカラ…。」

 混乱のきわみに達したしぐれが暴走を起こそうとした直前、ティルヴィアンネが口を開いた。

「ごめんなサイネ、しぐれ。驚かせてしまいましタネ。」

 ティルヴィアンネはそう微笑むと、しぐれの頭を優しく撫でた。

「…ティルさん、苦しいです。」


 ―西の森―

「さすがアニキ、あんなにいた怪物が、みんなどっかに行ってしまったよ。」
 
 黒髪黒目の太っちょな男がそばにいるオレンジがかった金髪の男に尊敬をこめた眼差しで言った。

「あたりまえだろう、俺様を誰だと思ってやがる?」

 答える男はずる賢そうな顔にニヤリと不適な笑みを浮かべた。
 その男の手には、なにやら妙な臭いのする煙が出ている豪華な陶器が握られていた。

「お前みたいな馬鹿は知らねぇだろうが、これはフェアリシアの香って言ってな、魔物を追い払うマジックアイテムさ。」
「おぉ〜、それがあればもう怖くないね。さすがアニキ。」
「まぁな、これでだいぶ楽になったぜ。おら、さっさと仕事を終わらせるぞ。」

 お香を太っちょに投げ渡した金髪の男は、ふと思い至ったように顔を上げた。

「そういや、この島には亜人種の村があったんだっけな。」



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お待たせしました(;;
すこし前進…あ、でもほんの少しです!
うぅ、これから中国行ってきます!
松さん、お願いします!



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