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短編リレー

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[329] 『畜生道をゆく』(フレア・オプナ・ライ)〔1〕
熊猫 - 2005年03月14日 (月) 21時27分

それはいつもどおりの朝から始まった。

「ねぇ、また出たんだって。幽霊」

フレア・フィフスは唐突に足を止めた。16歳という中途半端な年齢特有の、
まだ未発達な体つきの少女である。

なんの飾りけもない、ただ長い黒髪を伸ばし、きっちり制服を着ている。
掃いている飴色のローファーは、毎日磨いてないとこの艶は保てまい。

まぁつまり、多少の真面目さはあるものの、
彼女はごく普通の生徒と言えた。

押しているワゴンには、返却された本が山積みになっている。
もちろん相当な重量だが、キャスターがついているため、
動かす事に関しては造作もない。
そこからもとの場所に本を戻しているわけだが。

「音楽室の?やだぁ、アレって幽霊なの?」

そのセリフは、向こう側の本棚で発されたものらしかった。

最初、この図書室での私語を図書委員として注意しようか、
という考えがよぎったが、今ここにいるのは彼女と声の主、
そして聞き手だけである。
フレアも本を読んでいるわけでもなし、迷惑をこうむる者がいない
というのに、わざわざ注意するのはさすがに気が引けた。

「幽霊なのって…この世にあんなに顔色悪い人、いる?」
「えー。そういう種族なんじゃないの?もともとそういう肌とか」

最初は小声だったのが、今は普通のトーンになっている。

「なんの種族よ。『顔色悪い族』?」

きゃははは、と声があがって――フレアがさすがに咎めようと思ったとき、
声は急速に遠ざかっていった。
どうやら、ただ単にひまを潰しに来ただけらしい。
二人の女生徒の背中を見送りながら、手に持ったままだった
分厚い画集の重さに気づく。

フレアは微苦笑をもらして、背表紙に記載されている番号を確認すると、
本と本の間にそれを押し込んだ。

「先輩」

振り向くと、さきほどの女生徒たちとすれちがうようにして、
一人の男子生徒が図書室に足を踏み入れてきていた。
フレアの知っている顔である。彼もまた、自分と同じ図書委員だった。

「おはよう、シアン」

シアン――そう呼ばれた男子生徒は、貸し出しカウンターに
持っていた本を数冊まとめて置いてから、ふいに眉をひそめた。

「…授業、行かないんですか?鐘鳴りましたよ?」

壁にかかっている時計を指差す。
彼の言うとおり、本来ならば朝の授業がとっくに始まっている
時間である。
他の生徒ならば『サボった』の一言で納得できるが、真面目一本の
フレアがそれをすることはありえないと、顔が言っている。
彼女はため息をついて本を脇に抱え、声をひそめて答えた。

「あぁ――その、1、2時間目は休講になったんだ」
「休講?いきなりですか?」
「実は…化学の実験をやるはずだったのが、先生が教室を爆破してしまったんだ」
「あー。エンジュ先生ですね」

天気の話をするかのように、さらりと彼はうなずいた。
もっとも、そういうことは別段珍しいことでもなかった。
教師、生徒ともに突出した能力を持つ者が多いこの学園では、という意味だが。
しかしいくら頻繁に起きるといっても、こんな突拍子もない事態を、
彼のように平気な顔で流せるような性格を、フレアは持ち合わせていなかった。

「それで休講ですか」
「うん。…でもシアンこそ、こんな時間にどうしたんだ?」
「中等部は今日と明日は休みですよ。テスト休みです」
「あぁ、そうなのか」

フレアが納得するとシアンも本を戻すのを手伝い、すぐにワゴンは空になった。

「今日はずっとここに?」
「えぇ。どうせ今日の当番――ジーンはまたサボるでしょうし」

ほとんど図書室に顔を出さない図書委員の名前を聞いて、フレアは
声を出さずに苦笑した。
シアンはカウンターの向こうにまわって、さっき置いた本をずずず、と
自分の前まで寄せてくると、安っぽい椅子に腰を下ろした。
どうやら本気でここにずっといるつもりらしい。

フレアも自分の鞄をさぐった――が、求める手ごたえがない。

「あれ?」

シアンも読んでいた本のページの間に指を挟んで、顔をあげる。

「どうしました?」
「本がない…どこに忘れてきたんだろう」
「『アステリスク』ですか?」

星標(アステリスク)とは、本の題名である。
シアンがその存在を知っているのは、
彼自身フレアにその本を薦めたからにほかならない。

「寮じゃないんですか?」
「えーと…」

思い出そうと、なんとなく天井を見上げる。薄汚れた天井だ。
視界の端には朝日と、中庭が見える大きな窓がある。
外はいい天気で、花壇には赤いチューリップが――

赤――

「音楽室だ!昨日、休み時間にあそこで読んだ」

ふいに妖艶な教師――とはいっても声楽部の顧問なので
正確には違うが、いつも赤い服を纏っているので強烈な印象を放つ
女教師を思い出し、フレアは目を見開いた。

「取ってくる。…シアン、すまないけれどここを頼む」
「それはいいですけど――音楽室って幽霊出るって
 噂じゃないですか。俺も行きましょうか?」

立ち上がりかける後輩を、フレアは手で制した。
そのまま笑顔で言ってやる。

「幽霊なんて、いるわけないだろう?」

彼女は心の底から、そう思っていた。


何にせよ、それはいつもどおりの朝から始まったのだ。


―――――――――――――――
だって午前中寝てるしね。でも会えたらいいな的なね。
きっと寝てるけどね。

というわけで畜生道やるよ!な第一回目です。
わー全然関係ないこと書いてるー。

テラ学キャラリストに登録しているPL・PC様、
このように勝手に出すので覚悟しておいてください(笑
しかし意外と先生がいない事実。

では、なにはともあれ、よろしくお願いします!



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