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短編リレー

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[317] 「あなたを救う旅」〜心のかけら探し〜5
周防 松 - 2005年02月05日 (土) 11時54分

「二つ目の……かけら……」

私は、放心状態で呟きました。
頭の中が真っ白で、それ以上に何も浮かんでこないのです。

そう。
頬を伝う涙をぬぐおうとすら、思いつきませんでした。

そんな私を現実に引き戻したのは、腕の中でもぞもぞと動く、ふかふかした感触でした。
私は、ようやく、自分がまだ黒猫を抱いたままだということを思い出しました。
そろそろ降ろして欲しくなったのでしょうか。
なんとなく、私は黒猫の顔を覗きこみました。
さっきは後ろからそっと抱きしめたので、初めて顔を見たことになります。
顔を覗きこまれた黒猫は、私のことを金色の瞳で見つめ返しました。

なんというのか……。

私は、黒猫と見つめ合ったまま、しばらく固まってしまいました。


猫嫌いな人は、違うと思いますが。
猫を見たら、普通の人は『可愛い』と思うのではないでしょうか。

でも、この黒猫は『可愛い』というよりも『堂々としている』とか、『貫禄がある』とか、
そんな印象の猫でした。
目つき……というか、顔つきが、雰囲気が。
おまけに、額には十字の傷跡があって、よりいっそう貫禄のある印象を強めています。
少々のことには、とても動じそうにありません。

視点を変えただけなのに、こんなにも印象が変わるものなのでしょうか?
水を飲んでいた時の姿は、優雅に見えたのに。

考え込んでいると、いつまでたっても降ろしてくれない私に不快感を覚えたのか、
黒猫は太い声で、うな〜あ、と鳴きました。

突然捕まえたりして、ごめんなさい。
大切な人の心のかけらを、探していたの。
でも、もう見つかったから――。

ありがとう。

私は、そっと黒猫を地面に降ろしてあげました。
黒猫は、一度私を振り返ると、とことこと広場の方へ去っていきました。

振り返った時の口元が、にいっと笑っていた気がしたのは、果たして気のせいなのでしょうか?



――その後。

母さまと私は、ウィリーを預けていた宿屋に戻りました。
これから、もう一つかけらを見つけるのだと思っていたのですが、母さまは「今日はもう休むよ」と言いました。

空は、まだ夕暮れには遠い色をしています
あと一つくらい、かけらを探してから休んだって、遅くはないはずです。

私はそう訴えたのですが、

「砂漠はね、日が落ちると、おそろしく冷えるんだよ。とてもじゃないけど、外になんていられやしないよ」

そう言われて、何も言えなくなりました。

私は、お世辞にも体が丈夫だとはいえません。
季節の変わり目には必ずと言っていいほど体調を崩し、高熱を出して寝こんでしまうのです。
砂漠で夜を過ごすなんて初めてのことですが、母さまの言う通り、とても冷え込むのなら――。
私はおそらく、体調を崩してしまうことでしょう。

母さまはきっと、それを心配しているのです。

私は、悲しくなりました。
どうして、私はこんなにも弱々しいのでしょう?
やりたいことがあるのに、思ったように行動できないなんて。

結局、その日は母さまの言う通り、宿に部屋を取り、街の屋台で簡単な夕食をすませ、
いつもよりもずっと早い時間に休みました。

母さまと同じ部屋に眠るのは、何年振りでしょうか。
引き取られてから10歳になるまでは、ずっと同じ部屋に寝ていました。
私が、夜中に突然熱を出したりすることがあったからです。
そのたびに、母さまは薬湯を作ってくれたり、しぼった冷たい布を額に乗せてくれたりしてくれました。
そんなことが多かったせいか、小さい頃の私は、未来の自分、というものを想像できませんでした。

母さま以外に、ずっと一緒にいたいと思えるような、大好きな人が登場することも、想像していませんでした。


そんな昔のことに思いをはせながら、眠りに落ちたなら――きっと、私はその頃のことを夢に見たことでしょう。
けれど、私は、なかなか寝つけませんでした。
目を閉じて、睡魔の訪れを待ち続けたのですが、いっこうにその気配がないのです。
小さなため息をつき、私は何度も寝返りを打ちました。

どのくらい、それを繰り返していたのでしょうか。
どうしても眠れず、ついに私は睡魔の訪れをあきらめ、目を開けました。
薄暗い天井が、視界に広がります。

母さまは、眠っているのでしょうか。
なんとなく、私は隣のベッドに視線を移し――異常に気付きました。
隣のベッドに眠っていたはずの、母さまの姿がないのです。

おかしい。
確かに、母さまはそのベッドに眠ったはずなのに。
母さまは、一体どこへ行ってしまったのでしょう?

少し迷った末に、私はベッドから起き上がりました。
さぞ肌を刺すような冷たい空気が流れているかと思いましたが、案外空気は暖かでした。

部屋を出た私は、またさらに妙な事態に出くわしました。

他のお客さんはおろか、宿屋の従業員まで見当たらないのです。
私以外、ここには誰もいないのではないか、という気にさえなってきました。
廊下の隅から、得体の知れない何かが出てきそうです。
そう思うとなおさら、私は足がすくんでしまいました。

その時、ぴいん、とハープの音色が聞こえてきました。

「さあさあ、夜が来たよ、俺たちの時間だぜ!」

誰かの声が明るく響き、それに答えるかのようにワーッと歓声が沸きあがりました。

……人が、いるのでしょうか?

不安だった気持ちが和らぎ、私は安堵のため息をつきました。
もしかしたら、今日はお祭りか何かがあったのかもしれません。
きっと、宿屋に人が見当たらないのは、そのせいなのでしょう。
母さまも、こっそり出かけたのかもしれません。
そう思って、私は宿屋の外へと出てみました。

――そこで私が見たものは……。


二本足で立った猫たちが、まるで人間のように行動している姿でした。
通りでは会話をしながら猫が行き交い、屋台では主人とおぼしき猫が料理をし、お客さんらしい猫が飲み食いし、
遠くに見える広場ではたき火をかこんで輪になって楽しげに踊り……その数は、ざっと三十匹以上にのぼるでしょうか。
トラ猫や三毛猫、白猫に黒猫、ぶち猫……さまざまな毛皮の模様と毛の長さの猫がいます。
聞こえてくるハープの音色は、やせたトラ猫が爪弾いて奏でているものでした。

これは夢なのでしょうか?
猫が二本足で立って、まるで人間のように振る舞っているなんて、あまりに現実離れしています。

「――あ!」

そのうち、猫の一匹が、私に気付きました。
白地に、黒いベレー帽のようなぶちがある猫です。

「に、人間だーっ!」

その声で、辺りの様子は一転しました。
楽しげで賑やかな空気は消えうせ、猫たちは大慌てで物陰や建物の中へと逃げ込みました。
こちらの様子をうかがっているのでしょう。
暗闇の中に、猫たちの光る丸い目がいくつもいくつも浮かんでいました。
怯えているのか、その目は震えているように見えました。

どうしたらいいのでしょうか。
怖がらせるつもりなんて、なかったのです。

「あ、あの……」

とりあえず声をかけようとした時、

「おう、どうした、お前ら」

建物の影になった部分から、落ちついた声がしました。
どうやら、またもう一匹、猫が現れたようです。

「ボスッ、大変大変!」
「人間がいるんです!」
「早く追い出してくだせえ!」
慌てた様子で、あちこちからわあわあと声が上がりました。

「ほう、人間がまた迷い込んできたか」

建物の影から、声の主らしき猫が現れました。
つややかな黒い毛並みのその猫は、やけに堂々とした風格の持ち主でした。
なぜか、細い木の枝を口にくわえています。
泰然とした足取りで歩いてくると、ふむ、と呟いて私を見上げました。
その時、私は黒猫の額に十字の傷跡があることに気付きました。

……十字の傷跡。
思い当たるフシがあります。

もしかして、この黒猫は……。

「お前ら、安心しろ。こいつは悪い奴じゃあねえよ」
その言葉に、物陰に隠れていた猫たちが、そ〜っと顔を覗かせました。
「こいつはこの前の奴とは違う。大丈夫だから出て来な」
黒猫はそう言うと、手近なところの木箱に腰掛けました。

この黒猫は、どうやら猫たちのボスのようです。
安心したらしい猫たちが、隠れていた物陰や建物から出てきて、再び、輪になって踊り、飲み食いし、話を始めます。
その中を、明るいハープの音色が流れていきます。

「あなた……昼間のあの猫、なの?」
私は、木箱に腰掛けた黒猫に、おそるおそる尋ねてみました。
すると黒猫は、にいっ、と口の端を上げました。
「猫、なんて呼び方はやめてもらおうか。俺たちはただの猫じゃない。由緒正しい砂漠猫の一族だ。
まあ、俺のことはボスとでも呼んでくれ」

砂漠猫なんて、聞いたことがないのですが……ボスと呼んでくれ、というのでボスと呼ぶことに決めました。

「あの……ボスさん、一体何がどうなってるのか、よくわからないんだけど……」

「俺も先代から伝え聞いただけだから、詳しくは知らんがな。この街は夜になると結界ができて、
人間の時間が止まるんだ。その間、俺たちが本来の姿で自由に行動できるようになる。
……まあ、時々、お前さんみたいにこっちに迷い込んでくる人間がいるんだが」

私の質問に、ボスはヒゲを撫でながらそう答えました。

「それじゃ、ここから人間のいる所に帰るためには、どうしたらいいの?」
「朝まで待っていればいい。朝になれば、結界は消えるからな。
……それにしても、最近迷い込んでくる人間が増えたな。結界が弱くなってきたのかもしれん」
「ボス、冷えたやつ、お持ちしました」
「おう、すまねえな」
ボスは、木製のジョッキを持ってきた猫にねぎらいの言葉をかけると、くわえていた木の枝を片手に持ち、
くいっ、とジョッキの中身を飲み、気持ち良さそうに息を吐きました。
「お前さんも飲むかい?」
ジョッキを差し出されて、私は首を傾げました。
「……中身、何なの?」
猫が飲むものなのですから……ミルク、でしょうか?
「これかい。マタタビ酒だ」
……お酒……。
私は、黙って首を横に振りました。

[318] スランプなのよー!
周防 松 - 2005年02月05日 (土) 12時18分

クソ長ぇです。
その上日本語がなんとなくおかしいですが、
斜め読みする分には支障はないと思います。
1話でかけらを一つ見つける計画が……ああぁ(涙)

今回の投稿は……名付けて『砂漠猫の夜』とか(黙れ)



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