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短編リレー

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[309] 魔物退治(ウピエル&ストゥリ&フレア)−24 ペパーミントグリーン
ケン - 2005年01月09日 (日) 15時14分


 蔦に通路を塞がれ、もと来た道を戻らないといけなくなりました。
 真中を汚水が流れその両脇のせまい道をウピエルのお兄さんとフレアのお姉さんとライ?のお兄さんが一列になって進んでいます。
 あたしはちょっと離れて水の上をとぼとぼと歩いていました。
 癖でした。考え事をしていると、こうして水のある場所に行きたくなる。

―――上の町に出てきた怪物も、さっきの変な植物も、みんな人間が作り出した物なんだ…―――

 そう考えると少し悲しい気持ちになるのはなんでかな…あたしも人だからかな……

 すぐ下の汚水の中を何かの動物の死体や骨が流れて行きました。
 それに混ざって、多分人間が捨てたモノだと思う色々なものが流がれています。

「嬢ちゃん、あんまり離れるんじゃねぇそ」

 ぼ〜っとそれらを眺めていると、ウピエルのお兄さんの声が聞こえました。
 見ると随分前方にライ?のお兄さんの持っている明りが見えます。
 どうやら考え事をしている内に取り残されそうになっていたみたいです。

「あ、ごめんなさ〜い」

 こんなところに取り残されると多分心細くて泣いていたかもしれません。
 気づいてくれたウピエルのお兄さんに心から感謝しました。

 あたしが追いついてきたのを確認すると、3人は再び歩き出しました。もちろん、今度は遅れない様に気を付けながら後を付いて行きました。


「…ねぇ、お兄さん」

 最後尾を歩いているウピエルのお兄さんが「ん?」と首をかしげながらこっちを見てきました。
 声をかけていてなんだけど、なぜか後が続かず「ぅ〜…」と俯き、目を中に泳がせました。

「どうした、トイレかい?」

 俯いてしまったあたしをしばらく見つめていたお兄さんは冗談っぽい口調でそう言って来ました。

「ち、違うよ!」

 思わず顔を上げて否定しました。顔、真っ赤になっていたかもしれません。
 するとお兄さんは優しい笑みを浮かべてあたしの頭を撫でました。

「ならどうしたんだ?」

 まるで子供をたしなめるようなその仕草に「子供じゃないもん」と心の中ではぶててみせたけど、頭を撫でられるこの感触はすっごく気持ち良くて…思わず顔がほころんできちゃって…

「ほれ、言わねぇとわからねぇだろ?」

「……ぅ〜…笑わない?」

 その言葉にお兄さんは「ふふ」と含み笑いをしました。

「笑わねぇよ」

 ―――今笑ってたのに―――

 そう思ったけど、お兄さんはもうしっかり聞く体制で、それにこれ以上もたもたしていると言う機械を無くしちゃうかもしれないから…

「あのね、人って、本当は凄く、凄く奇麗な物を作り出せるんだよ。噴水とか美味しい食べ物とかピエロの小物とか沢山沢山」

 身振り手振りを加えてそこまで言って

「でも、あんな魔物も作ってる…あたし、どっちが人間の本当の姿なのか、分からなくなっちゃって……でも、奇麗な噴水とか作ってるのが本当の人間なんだって、信じたいんだけど、ダメ…なのかな、あたし…だって、ここの水、すっごく汚れてて、泣いてるんだ、怒ってるんだ、ここの水…ここをこんなにしたのも人間なんだよね…」

 あたし自身何を言っているのか分からなくなってしまいました。
 無言で聞いていたウピエルのお兄さんはしばらく黙っていたけど

「あのな、お嬢ちゃん…」

 しばらくしてゆっくりと口を開いたお兄さんの言葉をあたしが手を出して遮りました。

「来る、来るよ。お兄さん、お姉さん!」

 あたしが大声を張り上げた瞬間、辺りに緊張が走るのを感じました。

「どこから!?」

 先頭を歩いていたライ?のお兄さんが前方を照らしながら言いました。前方はずっと先まで闇に閉ざされ、後方も同じでした。

「水中から、とびっきり大きいよ!」

 そう、あたしは水の上にいたお蔭で、そのざわめきを感じ取り何かの接近をいち早く感じ取る事ができたのです。

「ここで戦うのは足場が悪い。嬢ちゃん、俺達に水面移動できる呪文をかけてくれ!」

「うん、分かってる」

 ウピエルのお兄さんに言われる前に、あたしは手を空中に泳がし、魔法陣を描きました。

「レーク」

 魔方陣を描き終わり呪文を唱えると魔方陣から放たれた光が一瞬ウピエルのお兄さん達を包みました。
 と、同時に、あたしの目の前の汚水が飛び散り中か巨大な物が飛び出して来ました。

 巨大な百足のような胴体に人間のような顔を持った怪物。
 
 その姿を見たフレアのお姉さんが「う」と呻き声を上げるのがしかいの隅に映りました。
 その顔が口をあけると人間とは思えないような牙が生えていて…

「うわ!」

 その百足が先頭にいたライ?のお兄さんに向かって飛びかかって行きました。

「ちっ」

 舌打ちと共にウピエルのお兄さんが鎌を取り出して百足に切りかかりました。
 一瞬、本当にそう言ってもいいほどの速さでライ?のお兄さんと百足の間に入り鎌を一閃。「ギイィ」と断末魔の悲鳴を上げて首を斬り飛ばされた百足は体をうねうねとうごめかせながら汚水の中に沈んで行きました。

「カリは返したぜ」

「お兄さん! まだ、まだ来るよ! 気をつけて!!」

 「何ぃ?」と振りかえったウピエルのお兄さんの目には、あたしが水から感じた数と同じ、数十匹のおばけ百足が見えたはずです。

「やべぇ。とりあえず逃げるぞ!」

「に、逃げるって、どこへ」

「知るかよ!」

 ライ?のお兄さんの抗議の声を遮り、フレアのお姉さんを右脇にライのお兄さんを左脇にそしてあたしを背中に背負って、それでも物凄いスピードでさっき来た道を戻り始めました。

「で、で、でもこの先はさっきの植物がいるよ!」

 と、言ってるうちにあの巨大植物が見えて来ました。
 恐る恐る後ろを見ると、あの百足が口から唾液を垂らしながら追いすがってくるのが見えます。

「ええぇい、突破だ! しっかり捕まってろよ!!」

 と、ウピエルのお兄さんが加速しました。
 ドンドン迫ってくる凍った植物を見ていられず、目をぎゅっと閉じてお兄さんの肩を掴む手に持てる全ての力を入れてしがみつきました。


「必殺ライ・シールド!」


 そう言うウピエルのお兄さんの声が聞こえた後、すっごい悲鳴とがっしゃーんとガラスが割れるような破壊音が響きました。

 ―――なんだったのかな?―――




☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

ごめんなさい、み〜さん、お待たせしました。
魔物騒動です。
ちょっと色々ありましてあたふたしてました。ごめんなさい。

更に申し訳ない事にストゥリの設定は取り合えず前のままで魔物騒動はお願いします。
学園事件はもう少し掛かりそうです。

では、がんばってください。

あと、こばさんもすみません。ライ君の扱い。



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