最近気になる奴がいる。
新聞部部長、千葉 鷹志。
名前から分かるように…そいつは男だ。
それなのに、最近気になる。
なんでだ…。
なんでだ…。
「もてるよな、千葉って」
練習中、いつの間にか隣に来ていた藤堂が言ってくる。
「は!?急に何言い出すんだよ」
「だって勇…さっきから千葉の方ばかり見てるぞ」
「え…ん、な事ねぇよ」
「んな事ある。ボールが戻ってこないから、俺がわざわざ言いに来たんだろ」
「あ…わりぃ」
「まぁ、あれだけ女の子に囲まれてればねぇ、勇なら羨ましいって思うよな」
「あ…お、おう、そ…なんだよな。くっそぉ、千葉の奴…」
「千葉ってもてるのにさ、絶対彼女作らないんだよな」
「え…そーなのか?」
「あぁ、結構付き合い長いけど…彼女連れてる所見た事無いし」
「へぇ…そーなんだ…」
だーかーらー。
なんで練習忘れる程、千葉の事気にしてんだよ、俺はっっ。
彼女〜?
別にそんな事が気になってたわけじゃねぇけどさ。
いや…まぁ、そりゃ…女の子に囲まれてる千葉見た時…なんか、もやもやしたけど。
それは羨ましいから、であって…。
別に…千葉の事何か思ってて…じゃ、ねぇし…多分…。
あぁ、もうっっ。気になるなら訊けばいいだろ、俺!!
って、千葉!!
階段の下。
丁度俺が降りていこうとした所に。
千葉が上がってくる。
今更振り返って戻るわけにもいかねぇし…。
あぁ、なんでしゃがみこんでんだよ、俺!!
来るだろ…千葉が。もうすぐここまで上がってくるってのに。
そしたら編だと思われるだろ!
階段に座り込んでるなんてさっ。
「そーいやぁさぁ…」
げ、声震えてるかも。
少し大きめに言った声に、すぐ側まで来てた千葉の足が止まるのが分かった。
「彼女いんの?」
立ち上がって顔を見せると、千葉が小さく驚いたのが分かる。
「彼女、いんの?」
返事が戻ってこないから、もう一回訊くとようやく千葉が口を開いた。
やっべぇ…俺ドキドキしてる。
「いや、いないが…」
「なんで?もてるじゃん、千葉って」
言いながら小さく跳ねて千葉の前に行く。
「彼女作らないようにしてるとか?」
「そういうわけでもないけどね…一応これでも好きな人っていうのがいて」
そ、そうなのか…げ、誰だろ。
「なぁにーーー!?そ、そうなのか!?なんだぁ、誰だよ、水くさいなぁ」
気になる気になる気になる。
だけど千葉は教えてくれそうになくて。
「人に話すような事でもないだろ」
「そーだけどさぁ…な?な?教えろって」
「嫌だね。尾崎は口が軽そうだし」
「ひっでぇーーー、傷付くなぁ」
本当にな。
ズキン、ってきたぞ…今の言葉は。
「尾崎にだけは言えないんだよ」
それなのに。
もっと傷付くこと言いやがった。
なんだよ…それ。
俺にだけは言えないって。
なんでだよ…。
「そっか。悪かった…な、じゃ、じゃあなっ」
泣きそうだ。
やっぱ千葉は俺にとって気になる奴で。
もしかしたらそれ以上の奴で。
そんで…。
そんで。
俺は千葉に嫌われてるのかなぁ…。
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勇バージョン。だから一話だけしか見てないのに…えぐえぐ。急展開です…がふ。