「来ちゃった♪」
おいおい…後ろに♪マークついてんだけど…。
内心、そんなつっこみができる自分にも驚きだった。
なんでだ…なんで、なんでなんで…こいつが俺の家に来るんだよ。
こいつ、こと山口久美子は、今俺の家の台所で、トントンと包丁の音を響かせたりしている。こいつは俺のクラスの先生で、ガリ勉にも見える細い眼鏡と、長い黒髪をただ二つに分けて結っただけの地味な外見をしているが、実際にはとんでもなく美人で、明るい性格のせいで人望と人気も高い。
そして、こんなこいつを…好きだと気付いたのはつい最近の事だって言うのに。
後ろから見ても、その体は力を込めるとすぐにでも折れそうな程細く。
髪を分けた事で覗くうなじは綺麗としか言いようが無くて。
そこに口付けたいとさえ望んでいる自分にも気付かされた。
「待ってろよ、沢田。今とびきり美味しいグラタン作ってやるからな」
振り返った拍子に揺れる髪に手を伸ばしたくなってくる。
俺にも一応、イマドキノオトコノコ的欲求を抱く事はできたんだな。
……別に、嬉しくねぇけど。
「山口久美子…ね」
こいつの名前。
聞こえないように確かめるように口にする。
「あ?なんか言ったか?」
「なんでもねぇよ」
この欲求。
いつか満たして貰うからな。
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高校生だし…触りたい抱きたいって常に思ってるんだろうなぁ…。