電話の相手が千葉だと知った時、思わず電話を切りそうになってしまった。
『話があるんだ。今から出て来れないかな』
家の近くに来ているという千葉の言葉に、今の時間を頭に入れつつ、深夜だからと断ろうとした所に、
『待ってるから』
一方的な約束をされ、電話を切られる。
ツーツー…と、鳴る電子音を聞きながら受話器を置いた。
「勝手…なんだよ」
千葉の話というのは検討がついている。
今日、俺が…千葉の前で泣いてしまったから。
泣きながら理由も言わずに立ち去ってしまったから。
「……情けね…俺……」
帰ってからもずっと後悔していた事。
なんであんな事しちゃったんだろう、って。
千葉だって、そう思ったはずなんだ。
だからこそ、わざわざ家の近くまで来たんだろうし。
行くしか……無いよな。
約束された、近所の公園。
街灯の下に千葉の姿を見つけて。
(あぁ…やっぱ、こいつ格好いいなぁ……)
それは今の俺の、素直な感想。
まだ俺の方に気付いていない千葉は、端から見ても格好いいと思える外見をしていて。
そんな千葉と肉体関係を結んだのは、千葉が口が固いと思ったからだ。
俺から誘って。
簡単に千葉は乗ってきた。
ただ肉体だけの関係だったんだ。
やりたい時に誘って。
やりたい時にやった。
ただ、それだけ。
それなのに。
俺は…………。
千葉の事を好きになっていた。
格好良くて、優しくて。
俺が泣きたい時、いつの間にか側にいて泣かせてくれた。
最初はただの友達。
テニスでのパートナーとも言える藤堂から紹介されて。
よく会うことになって。
友達、といえる存在だったんだ。
それなのに、俺が誘ったから。
その時から、俺達の関係はただの友達じゃなくなっていた。
肉体だけの関係だから。
千葉が寄せてくれている好意に気付きながらも。
俺はそれに応えられなかったんだ。
ただの友達を装って。
二人きりの時に抱き合って。
「ただのダチ」
嘘の関係を。
(なのに、なんでだよ…)
なんで俺は千葉の事を好きになったんだろう。
そして、なんでそれを。
千葉の心が離れた時に気付くんだろうか。
「尾崎…」
俺の存在に気付いた千葉が駆け寄ってくる。
あ、やば…また、泣きそうになってんじゃん、俺。
だめだって…抑えないと。
そう思って無理矢理笑顔作ったのに。
それなのに。
やっぱり千葉は気付いてくれる。
胸に抱きしめられて。
背中を撫でられて。
「大丈夫だから……尾崎」
何が大丈夫なんだよ。
そう訊きたかったのに、俺は泣くしかできねぇで。
「っ千葉……っ」
ごめん。
俺、もう泣かないようにするからさ。
この気持ちも、消すからさ。
だから…。
できたら。
俺、お前と友達になりたいよ……。
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ミニアンケート60票記念です(50票記念は絵になりました)40票記念の時に書いた物の続きになります。また…続くかも。