尾崎を「そぉゆう関係」とやらになってから、学校以外で二人きりで会うことも多くなったけど。
毎日顔を付き合わせているような状態だから、場所が変わろうが話す内容なんて説くに変化無く、尾崎の口から出てくるのはテニス関係の話ばかり。テニス…というよりは、正確にはテニスに関係する人物の話ばかり。
何度も何度も聞き飽きたと言いたくなるほど、尾崎の口からはその話ばかり。
「お蝶婦人ってさ…」
恋をしているという尾崎。その相手というのが、学園憧れの君、お蝶婦人。
俺から見ても、彼女は美しく、そして惹かれる。まぁ、俺の惹かれるというのは、被写体として…なんだけどね。
尾崎が彼女を好きなのは最初から分かっていた事だし、憧れの延長のようなその感情にケチをつける気は無い。
「んでさぁ、藤堂の奴が…」
藤堂。俺の親友である藤堂の名前は、尾崎の口からよく出てくる。
それもまぁ…仕方のない事だとは分かっている。プライベートでも仲が良い2人が、テニスで組むと最強と唄われるほど息の合う仲だとは有名な事だ。
俺も最初…それで尾崎に興味を持ち始めたんだしな。
だけど…だけど、だ…。
お蝶婦人ではなく、藤堂の名前が圧倒的に多く。その話題が出るたびに、まるでのろけているとさえ聞こえる藤堂への褒め言葉のラレ流二、さすがに俺も面白くなくなってくる。
いつもの事だとは分かりつつ、自分でも悲しくなる事に人の話を引き出すのが上手いと褒められるこの話術で、今も尾崎に続きを促すように頷いて見せてしまった。
「でもさぁ…なんか俺ばっか話してね?」
突然。
今の今まで藤堂の話をしていたというのに、尾崎が突然そう言ってきた。どうなんだよ?と顔を覗き込まれて。
「そうかもしれないね」
俺はあまり自分の事を話すのが得意じゃないから。
「それってなんかつまんなくね?千葉も話せよ〜」
「話せと言われても…何を?」
「んー、そっだなぁ…あ、千葉って好きな奴いんの?そういう話聞きたい」
「それはいるけど…って、分かってないのか?尾崎…」
俺が君を好きだと言うことを。
まさか、こんなに何度も体を重ねておきながら、気付いていなかったというのか!?
「分かって…って、何が?え?俺の知ってる奴なのか?」
「……いや、いい」
まさか気付いていなかったとは。確かに尾崎が好きなのはお蝶婦人で、俺との関係は体だけの関係だと割り切っているのかもしれないが…俺にとってはそうじゃない。だからこそ、尾崎にもそれを求めていたというのに。
まったく気付かれていなかったと言うことは、尾崎にとって俺がそれだけ興味の無い存在なのかと疑ってしまう。これは相当…ショックだよ、尾崎。
「よくねぇって!俺にとっても重大な事なんだからよ」
「なんで?尾崎には関係ないんじゃないか?」
ちょっとキツイ口調になってしまったが、それは俺の悲しみがそれだけ大きかったという事で、諦めてくれ尾崎。
「関係あるって!だってお前が好きなの、俺じゃねぇと困るもんね」
「………は?」
「は?じゃ、ねぇって!てっきりそうだと思ってたのに…違うとしたら大問題なのっ」
「…いや、何を言っているんだ…尾崎?」
少し混乱してきた…。
つまりは…俺が尾崎を好きって事、ちゃんと本人も気付いている…って事なのか?
「はっきりしろよ、千葉ぁ!」
ぐい、と顔近付けられて。
首に腕が回ってきて、ぶら下がるような体勢を取られる。
「俺の事、好きじゃねぇのかよ?」
はっきり、はっきりと。
先を促すようにねだられて。その、見上げてくる視線と甘い声に目眩がしそうになる。
「…好きだよ」
言うつもりは、まだ無かったのに。
なんでこんな事になったんだ…尾崎にまんまと乗せられたって事なのか?
「俺も千葉の事好きだぜ」
にっこり、と。笑顔でそう告げられて。
「尾崎…」
名前を呼びながら背中を抱き返そうとすると、するりとその体が離れていく。
「そんでさ、藤堂がこの前言ってたんだけど…」
次にはさっきまでと同じように、尾崎の話が始まって、まるで今の告白が無かった事みたいに扱われている。
「聞いてんのか?千葉」
「あぁ…聞いてるよ」
いや、そうじゃなくて。
これが尾崎のやり方で、ペースなんだろうな。
俺はただ、それにつられすぎないようにするだけか…。
尾崎と付き合うには、相当の苦労が必要になりそうだな…。
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ミニアンケートで20票に…(だから、そんなのばかり)途中から意味不明に…。ダラダラ長くしようと思ったのに…意味不明だなぁ(でも載せる奴)