「おい、こっちだ こっち!」
「うわっ、すごい人ですね」
「そりゃ年末だからな。それに今週は浅草寺で羽子板市が立つから余計忙しいんだ。道路も混むから電車で来たんだ」
「そういえば、今日は何しに浅草に来たんですか?」
「署長に頼まれたお歳暮の佃煮のお使いに来たんだ」
「でも、どうして浅草なんですか?佃の大安に行けばいいじゃないですか……っそうか!」
「ハハ、分かったか?わしの実家に行けばタダで手に入るんだ。そして使わなかったお金は神谷バーでの飲み代に充てるんだ」
「本当にその辺はしっかりしているなぁ」
浅草寺→六区
「六区を歩いていると浅草が娯楽街であった事がすぐ分かるよな」
「そうですね。今でこそ浅草は門前町みたいなイメージですけど、昔は結構エッチなお店も多かったですからね」
「昔は浅草寺、仲見世、六区を含んで『浅草公園』と呼んでいたんだ。気がつけば分割されていたそうだ」
「…先輩、質問なんですけど。 どうしてこの辺一帯を“六区”と呼ぶんですか?」
「答えは案外簡単なんだ。前にも言った浅草公園、これは6つに区画されていたんだ。それで、ここは6区画中の6区になるんだ。ちょうど浅草寺の南西になるんだ」
「そうなんですか」
六区→花やしき
「花やしきですね」
「今日も人でいっぱいだな。わしがガキの頃はもっと人が入っていたぞ」
「そうなんですか?」
「ガキの頃は入園料がタダだったんだ。だから乗り物に乗らなくても中に入る事が可能だったんだ。でも今は入園するのに1000円近く、乗り物に乗るにも金がかかってしまう遊園地になってしまったんだ」
「やはり不況のせいでしょうね。潰れるのを防ぐためにはしょうがなかったのでしょうね」
「だよな…」
「そんな気を落とさないで。早く買い物をかたずけちゃいましょうよ!」 続く