「佃煮の『佃』ってやはり佃島から来てるんですかね?」
「そうだよ。佃って漁師町だろ?一般的に海産物、特に小魚、あさり、昆布又はイナゴ、ザザムシなんかを醤油、砂糖で甘辛く煮たものを佃煮というんだ」
「なるほど。佃煮はご飯と一緒に食べると美味ですよね」
「おぉ! 中川も庶民の味を理解してくれたか」
「でも佃煮は江戸前に限りますよ、今では全国各地に土地の名物の佃煮があるんで。ちなみに『江戸前』ってどういう意味ですか?」
「江戸前ってのは『江戸の前の海』という意味でな。つまり、東京湾の事だ。そこで取れた魚を素早く粋のいいうちに食べる事ができたのを江戸の人たちは『江戸前よ』と自慢したそうだ」
よろづやに到着した2人
よね(以下「よ」と表す)「いらっ…勘吉!それに中川さんも」
「署長にたのまれ佃煮を買いに来たんだ。予算は3000円だ」
よ「どれにするんだい? しかし、中川さん。このバカに付き合わされて大変だねぇ〜」
「はい! このバカ…いや、先輩にはいつもお世話になってますから・・・(痛かったぁ)」
「なぁ、母ちゃん。江戸前らしさを出すなら何がいいかな?」
よ「そうだね。江戸時代からのコハダ、アナゴ、アジといった所が手頃かねぇ」
「これは全部江戸前か?」
よ「少しオーストラリア産があるけど、味は一緒よ」
「何でも手っ取り早く握って出したのが江戸っ子に合うんだが。まったく、この店は・・・」
しばらくして
よ「はい、勘吉、これを持っていきな。 中川さんもどうぞ」
「わざわざありがとうございます」
よ「これからも勘吉の世話をよろ」
「うるせぇなぁ、母ちゃん! おいっ!中川、行くぞ!」
「ちょ…っとでは失礼します」
よ「佃のじいちゃんと電話が繋がらないんだ。ちょっと行ってきてくれよ」