| [151] ポケットモンスター アークジェネレーション!! 第27話「スタートライン」 |
- @ - 2004年05月24日 (月) 23時38分
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前回、第26話と第27話の間として番外編を掲載してます。 見逃した方は、暇だったらどうぞ……。
27th「スタートライン」
前回までのあらすじ: 悪の集団『煉(れん)』との戦いを終え、グレンジムのクリムゾンバッジも入手したシクーとソウト。そしてついに、グレン島を出て旅立つ決心を固める。2人は再会した時の互いの成長を楽しみにするという意味で、あえて別々に旅する事に決めたのだった。
あれから、およそ5日あまりが経過。
今日も日が照り、夏の蒸し暑い様子を物語るまぶしさを見せている。 道行く人は大概、汗を手で拭いながら歩いていた。
と、そうかと思えば、町の公園は活気に満ちあふれている。夏だからこそと言わんばかりに、元気な子供達が活発にサッカーボールを力強く蹴るなり、野球ボールを剛速球で投げるなり、ポケモンに対戦相手への攻撃を素早く指示するなり……。公園ではあちこちで、あらゆる行動を見物できそうだ。
「新しいポケモンもゲットしたし。旅に出るとも、決めたまではいいんだが……」
「旅するのに必要な物って、一体何だろ?」
カントー地方グレンタウン。その町の、とある一軒家。 ポケモントレーナーとしての旅に出る為、荷造りをしようとする12歳の少年が、そこに2人いた。
「シクー、ソウト! 2人が旅に出るという決心を固めたなら、俺からプレゼントをやろう」
そう言いながら2人の少年がいる部屋へとやって来たのは、彼等の父親だった。いや、正確には2人の内、1人の実の父親なのだが。とはいえもう1人の少年にとっても、今となっては父親としての存在になっている。
「親父? いきなりプレゼントだなんて、一体何だよ」
父である想路(ソウジ)に、真っ先に尋ねたのは来たのはスポーツ刈りの少年。彼が実の息子……想人(ソウト)である。
「それって、旅する上で役に立つ物って事?」
それに引き続き、黒眼黒髪でフードのついた黒の洋服を着用している少年……詩空(シクー)も尋ねた。
「そう言う事だ。まぁ、これを見ろ」
ソウジが2人の子供に見せた物……それは、様々な形をした4つの機械。 シクーもソウトも、少し首を傾げつつそれらを眺めた。
「…………。何コレ?」
「ポケモントレーナーが旅する上で持ち歩く、便利なサポート機器だ。とりあえず近所の子供達から、手当たり次第借りてきた!」
「え゛」
それは、以下のような物だった。
【ポケギア(ポケモン・ギア)】
ゲームの『ポケットモンスター 金銀クリスタル』の主人公が所有してた機械。 時計や電話機能を内蔵。 マップカード、ラジオカードを差し込むと、それらの機能もプラスされる。
【ポケナビ(ポケモン・ナビゲーター)】
ゲームの『ポケットモンスター ルビーサファイア』の主人公が所有してた機械。 マップや、ポケモンのコンディションを調べる機能を持つ。 戦った対戦相手トレーナーや、ポケモンに与えられた記念リボンも記録させられる。
【ミニコン】
ゲームの『ポケモンカードGB2』の主人公が所有してた機械。 メール機能を搭載し、色んな人から受信できる。 ポケモンカードリストを出したり、デッキ記録マシンへの接続も可。
【P★DA(ポケモン・デジタルアシスタント)】
ゲームの『ポケモンコロシアム』の主人公が所有してた機械。 これまたメール機能を搭載し、やはり色んな人から受信可能。 入手したポケモンのリスト、戦ったポケモンの特徴を記録するメモなどの機能を内蔵。 加えて名前やIDナンバーなども入力でき、トレーナーカード同様の役割も果たす。
「……で、どれが欲しい?」
「つか、本当に手当たり次第集めてきたなッ! しかもミニコンって、思いっきりポケモンカードトレーナー用じゃねぇか!?」
平然と尋ねてくるソウジに、ソウトはすかさずツッコミを入れた。
「せっかくお前等が欲しい物、どれか1つずつ買ってやろうと思ったのに」
「それは嬉しいが、それよか俺は親父に聞いておきたい事があるんだよ!」
「何? 今更、何を聞きたいんだ?」
虚を突かれたように、楽しげな表情を普段の顔に戻す。 シクーとソウトは、お互いに顔を向け合って頷き合うと、2人してソウジに顔を向ける。そしてシクーの方が、口を開いた。
「単刀直入に聞きたいんだけど……『無音』って、一体何?」
一瞬、ソウジの顔がこわばる。
「僕もソウトも、以前にグレン火山が噴火しかけた時に現れた、『無音』の首領だと名乗っていたセオンの事が頭から離れないんだ。あいつの力は、半端じゃなかったからね」
「…………」
「シクーの言う通りだ。何せ、親父でさえ圧倒されてたぐらいだからな。けど親父、セオンが自分で『無音』の首領と名乗った時、表情を変えただろ? まるで、聞き覚えのある言葉を聞いたみたいに。つまり親父は、『無音』って何なのか知ってるんだな?」
シクーとソウトの問いつめに、ソウジもため息をついてから話し始める。
「……まぁ、別に隠すべき事って訳でも無いがな。俺だってあんな子供が『無音』の首領だなんてのは、とても信じられなかったぐらいだからよ」
「『無音』って、一体何なの? 『煉』みたな組織とか?」
「早い話、そういう事になるな。だが『無音』という組織は、俺も詳しく知らない。いや、存在自体を知る者さえほとんどいない位だ。俺も名前を聞いた事がある程度で、持っている情報は皆無に等しいぜ?」
一呼吸おいて、ソウジはそのまま話を続けた。
「いいか? 今から10年前、ロケット団っていう組織が暗躍してた。金の為にポケモンを利用し、どんな悪事だって働くという連中だ」
「あぁ、それは僕も知ってる。当時まだポケモンリーグを制覇する前だった、あの伝説のポケモントレーナー:レッドさんが壊滅させたって話を聞いた事があるよ」
「しかし3年後、つまり今から7年前になるが、レッドが壊滅させたロケット団は復活しかけた。ジョウト地方最大の都市を乗っ取ったぐらいでな。だがそれも、やはり後にポケモンリーグを制覇する事となるクリスが倒し、結果としてロケット団の復活は阻止された訳だ」
「うん……」
「……問題は、ここからだ。10年前と7年前、ロケット団が暗躍した時期にもう1つ、全く別の組織が存在した。ロケット団の、影に潜むような形で活動していた組織がな」
そう述べるソウジに、シクーもソウトもいっそう聞かされる話に集中する。
「ロケット団は大都市1つを乗っ取るだとか、目立ちやすい行動が多かった。だから民衆の目は、ほとんどロケット団に向けられた。だが、もう1の組織は、そのおかげで隠れて行動を起こしやすくなる。ロケット団がハデな事件を起こすのを利用し、その別の組織は上手くまぎれこんで動いていたんだ」
「悪の組織であるロケット団の活動を……利用!? そんな奴等がいたなんて……」
「何しろ……警察に捕まったロケット団には、当然それまで起こした悪事の数々について取り調べをする訳だがな。ところがロケット団の起こしたと思われていた事件のおよそ半分が、実はロケット団ではなく別の組織の仕業だったと、ロケット団壊滅後にようやく分かったぐらいだ」
「そう考えると、ロケット団もちょっとかわいそうだね……」
微妙に哀れみの気持ちを持つシクーだった(?)。 ソウジの話は、更に続く。
「ロケット団の活動を利用して影に潜み、それこそ音も気配も無いかのように、痕跡を残さず動く組織……。故に、その組織にはこう名付けられた。『無音隊』とな」
「……!」
「無音隊……通称『無音』は、その性質上ほとんど世間に知られてはいない。俺のように『無音隊』という名称を知る者でさえ、ごく一握りだ。しかしロケット団がジョウトで復活しかけた頃、無音隊も確実にジョウトにいたハズ。その後のジョウト地方崩壊事件で、無音隊も自然に壊滅したものと思っていたんだがな」
「そっか。でもそうなると、確かにセオンみたいな子供が首領をやっているのは妙だな。少なくとも7年前や10年前の無音隊を動かしていたのは別の誰かなんだろうし、そうでないにしてもこれ程の悪の組織、僕とそう歳の変わらない子供が率いてるなんて……」
シクー達は、そのまま自然と静寂に包まれた。しかしすぐ後に、次のような言葉が一同の耳に届く。
「無音隊についてなら、私も少し情報を持っていますよ」
「ね、姉ちゃん……」
その声は、シクーの姉ミカンからの物だった。ソウジも、驚いた様子でミカンに尋ねる。
「ミカンちゃんが、無音隊を知ってるとはな。一体、どこでその名を耳にしたんだ?」
「それは、知っていて当然なんですよ。もっともシクーは知らないでしょうけれど……私とシクーが所属していた、ジョウトの支配人。あれの構成員の半分以上は、元無音隊の者達だったのですから」
「!! な、何だとッ!?」
ソウジが声を荒げ、シクーとソウトもさすがに目を大きく見開いて驚いた。 7年前に、謎の大噴火でジョウト地方のほぼ全域が崩壊してしまった後、無法地帯と化したジョウトを支配していた『ジョウトの支配人』。シクーもミカンもその組織を抜けた者達だとはソウジもとっくに知っていたが、よもやそれが無音隊と関わりがあったとは予想外だったらしい。
「とはいえ、幹部クラスに元無音隊員は1人もいませんでした。戦闘能力は、ロケット団員と同程度。少なくとも、私はそう判断しました。もっとも今の、シクー達が話題にしていた『無音』がどうなのかは分かりませんけれど」
「そ、そうか……つまりジョウトの支配人は、無音隊の後継的な組織でもあった訳だな」
「そう言ってしまえば、それで終わりかも知れません。ただ……」
「……ただ? 何だ、ミカンちゃん?」
「ただ、無音隊の者達がジョウトの支配人に入ってきた時に、こう言っていたのを聞いた覚えがあります。『首領達、主要のメンバーとはぐれてしまった。もはや無音隊に未練がある訳でもないので、ジョウトの支配人に加えてくれ』……と」
「……つまり、それは……」
「えぇ、恐らくジョウトの支配人に入った無音隊員とは、組織内の下っ端だった者達のみ。結局のところ、『無音隊』の主要メンバーは行方不明なのです。もちろん、その主要メンバーがどういう人達なのかさえも謎のままで」
……そこで再び、辺りは静寂に包まれる。しばらくしてから、ミカンは再度こう述べた。
「けれど……こう考えると、もしかしたら『ジョウトの支配人』と『無音』にはつながりがあるかも知れない。可能性に過ぎませんが、それも考えておいた方が無難でしょうね」
翌日。
「ソウト、新しい靴買ってきたわよ。旅するトレーナーに大人気の、ランニングシューズ! シクーにはインラインスケートがあるんだから、ソウトはこれを履いて行きなさい」
朝から、元気な女の人の声が響く。ソウトの母親の声だ。 ……ソウトはというと、新品のランニングシューズを早速装備する。
「へへっ、サンキュー!」
「荷造りとかは、全部やったの? ソウトはシクーと違って、ズボラな所があるから」
「だ〜ッ、うるせーなぁ! ちゃんとやったっつーの!」
早速イライラしているソウトに、今度は父親ソウジが声をかけた。
「しっかし、ソウトも遂に旅立ちか。大丈夫か、オイ?」
「そりゃ、こっちのセリフだ。何でも親父、グレンジムの新リーダー候補になるそうじゃねぇか。カラシにあっけなく捕まってたクセに、大丈夫かよ?」
「うるせ〜、ちゃんと今日から特訓再開してやるさ。それにジムリーダーになるには、試験に合格しなきゃならんからな。必ずパスしてやるから、後で見て驚くんじゃねぇぞ?」
ソウトから逆に心配され、ソウジは口を尖らせながら言った。
「まっ、何にしても実力が落ちないよう頑張ってくれよ。俺はいつか、親父を超えて必ず勝つ。そん時に、ウデの鈍った親父を倒したって意味ないんだからな」
「おぅ、心配するな。気にせず行ってこい!」
ニカッと笑いながら、ソウジは息子を送り出す言葉を述べた
一方その隣に、シクーとミカンの姿もある。
「ハンカチとちり紙は持ちました?」
「……遠足に行く幼児じゃないんだから……」
微妙に涙目になりながら、シクーはミカンに言った。しかしミカンは心配そうに、呟くような小さい声でシクーに言う。
「例の、『無音』という組織……。何か、胸騒ぎがします。くれぐれも、気を付けてくださいね」
「うん、大丈夫。次に会う時も、また元気な姿を見せてあげるよ、姉ちゃん!」
「……そうですね」
するとミカンは、何かを取り出す。
「これも、持っていくといいですよ。ひょっとしたら、何かの役に立つかも知れません。使い方はこの紙に書いておきましたから、後で確認しなさいな」
シクーは『技マシン(23):アイアンテール』と、『退化スプレー』と書かれた物を、取扱説明書(?)とセットで受け取った。
かくして、ようやくシクーとソウトは旅立つ。 コンパクトに荷物をまとめたリュックを背負い、2人は玄関から外へと出る。
「じゃ、行ってくるぜ! 俺はまずは、フタゴ島へ!」
ポケモン・ナビゲーターを手にしたソウトが、日差しの『光』を浴びながら言った。
「僕も、行ってくる! 最初は、マサラタウンへ!」
ポケモン・デジタルアシスタントを手にしたシクーが、辛い過去として持つ『闇』をも乗り越えんとする元気のよさで言った。
『……あぁ、そうだ。今、俺が隠れて見ている目の前で、2人とも旅立ったみたいだぜ』
「分かった。情報提供ご苦労だったな、ラエイ。後は俺達が、自分でやる。『無音隊』と『ジョウトの支配人』とが統合して出来上がった組織『無音』でも、せいぜい頑張ってくれよ」
『チッ。てめぇ等如きと付き合うのも、これが最後だからな』
カチャッ! ポケモン・ギアの電話機能スイッチを切り、彼はそれをポケットへと戻す。
「で、どうなのよ。ルウ?」
「あぁ。シクーもソウトも旅立ったってさ、キズナ」
それまで電話をしていた少年が、尋ねてきた少女に対し答えた。
「クッハッハッ……。『煉』は崩壊したらしいが、だからって関係ねぇしな。俺達はただ、面白そうだから『煉』の活動に参加してただけだからよ」
もう1人いた少年も、そう言って歩いてくる。
「テンガの言う通りだね。俺達は手にした力で、どんな奴でもぶっ潰せればそれでいい。とにかく全てを叩き潰して快感を得る為だけに、俺達は強さを求めてる訳だからね。……だからこそ、俺達の邪魔をしたシクーとソウトは許せねぇんだよぅ……!!」
ギリっ……と、歯ぎしりを立てて食いしばる留宇(ルウ)。 そんな彼と共にいる、絆(キズナ)と天牙(テンガ)。
グレン島から離れた何処かで、狂気の者達はシクーとソウトに狙いを定めていた。
「次は必ず、完全に踏み潰してズタズタにしてやるからなぁッ!! ヒャハハハハハーッッ!!」
続く
無音が、ジョウトの支配人と手を組んだ……という話は前回の番外編2に書いてました。 加えて設定資料として、12のカントーバッジ説明も載せます。
今回は色んなアイテムを登場させましたよ。アイテムばっかで、よく考えたらポケモン全然出てきてないですね(駄)。シクーとソウトはポケギアとポケナビって、分かり易く似た名前をそれぞれ持たせようかなとも考えてました。しかしポケギアって、持ってるキャラ多いですからヤメに(ケイコも所持してたし)。
次回は第28話「オバケよりも恐いかも」、お楽しみに!
<現段階ポケモン図鑑データ>
【NAME:シクー】
見つけた数:45匹 捕まえた数:2匹
バッジ数:1個
手持ちポケモン ・メノクラゲ/メノクラゲ♀ Lv:11 HP:32 タイプ:みず・どく おや:シクー ・ケッちゃん/ケムッソ♀ Lv:6 HP:22 タイプ:むし おや:シクー ・ムッソ /ケムッソ♂ Lv:6 HP:23 タイプ:むし おや:シクー ・タマゴ
【NAME:ソウト】
見つけた数:31匹 捕まえた数:2匹
バッジ数:1個
手持ちポケモン ・サンド♂ Lv:15 HP:44 タイプ:じめん おや:ソウト ・マタドガス♂ Lv:14 HP:46 タイプ:どく おや:ソウト
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