| [127] ポケットモンスター アークジェネレーション!! 17th「ソウト」 |
- @ - 2004年04月15日 (木) 22時57分
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17th「ソウト」
前回までのあらすじ: 謎の一団『煉(れん)』が、シクーとソウト、そしてソウトの父親ソウジの前に現れた。シクーとソウトは一旦逃げ出し、ソウジが煉の者達に立ち向かう事になったが……。 逃げる途中で、シクーとソウトは謎の3人組の襲撃を受ける事に。2人とそう年齢が変わらないであろう3人の敵だったが、シクーとソウトは窮地に立たされる!
「ストライク、『破壊滅閃』!!」
グレンタウンの町はずれ。日も暮れた中で、シクーとソウトが激戦を繰り広げていた。
右腕に通常に比べて超巨大な鎌を持つ、ストライク♂(Lv:19)。 ……それを従えた、『茶髪の少年』。 刃物のようで、しかも非常に長く巨大な尾を持つ、ライチュウ♀(Lv:19)。 ……それを従えた、『黒長髪の少女』。 やはり普通のに比べて超巨大なキバを持つ、ハブネーク♂(Lv:18)。 ……それを従えた、『銀髪の少年』。
以上3名が、シクーとソウトに襲いかかってきていた。恐ろしいまでの勢いで。 そして今、茶髪の少年が従えるストライクが、破壊光線を超極太の光線砲に変化させた強烈な技を発動したのだ……!!
「なっ……うわあああああああっ!!」
シクーもソウトも、身動きを取る暇が無かった。敵の攻撃は、その速度も破壊光線を圧倒的に上回っていたのである。
「ひゃーはっはっはっはっ!! **ー!!」
狂ったように笑う、攻撃の主ストライクを従える茶髪の少年。
「(あ〜あ。ルウの『破壊滅閃』が出ちゃったよ。)」
「(ルウがあの技を発動しちゃったら、もう終わりね。)」
銀髪の少年と黒長髪の少女も、心の中でそう呟く。 この攻撃は実際には一瞬に近い出来事だったので、2人とも口に出す時間もなく、瞬間的にそう思っただけだった。同時に、シクーとソウトの脳裏にも絶望がよぎる。
「(くそ、俺もシクーもここでやられるのか!? 俺は……親父のように強くなりたかった。強さを目指してた。それなのに……このザマかよッ!!)」
……と、その次の瞬間。どこからか、少女の声が聞こえてきた。
「バクりゅう、火炎放射!!」
ゴオォォォッ!! そして、声と同時に炎が敵ストライクに的中。ストライクは勢いで吹っ飛び、光線もシクー達に当たる目前で消滅する。炎が光線そのものに当たった訳ではないが、攻撃中のストライクが吹っ飛ばされたので、発動中の技が中断されたようだ。
「な゛……!? 誰だぁッッ!!」
イラついた様子で、茶髪の少年が叫ぶ。もちろん、シクーとソウトも声のした方を見る。……そして、最初に彼女の名を叫んだのはシクーだった。
「ケイコ!!」
現れたのは……かつてシクーが、初めてのポケモンであるメノクラゲを捕獲する際にも協力してくれた少女、景子(ケイコ)だった。その隣りには、火炎放射を放ったバクフーン♀(Lv:36)もいる。
「シクー! それと、もう1人のアンタ! 早くこっちへ!」
髪をリボンで結んでポニーテールにし、キュロットスカートを身につけた女の子……ケイコは、すぐさまボロボロのシクー達に声を呼びかけた。シクーもソウトも、すかさずケイコの立っている所へ向かう。
「(しかし、今の攻撃は凄かったな。つか、親父並の威力だったぞ! この子、シクーの知り合いみたいだけど何者だ?)」
ソウトは、シクーと共にケイコの元へ駆け寄りながら、そう思っていた。
「チッ、邪魔すんじゃねぇぇぇーッッ!! ストライク、破壊滅閃ッッ!!」
頭に来たらしい茶髪の少年が、再びストライクに先程の光線を放たせる。
「……ッッ!! 危ない!!」
ケイコは、即座にシクーとソウト、それからバクフーンと一緒に攻撃を避ける。だが、バクフーンにだけ光線がわずかにかすった。
「バグ……ゥ……ッッ!!」
その直後、バクフーンは苦しそうにうめき声を上げると、その場に倒れてしまった。
「……バクりゅう!! そんな、ほんの少し触れただけじゃないの!! ……あの光線、それだけの破壊威力って訳ね。」
「ッヒッハッハッハ!! バカめがー!!」
ケイコはバクフーンをボールに戻しながら、歯を見せ笑う茶髪の少年を睨みつける。だが、敵はコイツ1人ではない。
「ルウばっかり、お楽しみタイムを満喫してんじゃねぇぞーッッ!!」
「私達だって、いつまでもじっとしちゃいないわよッッ!!」
叫びに近い声を発しながら、銀髪の少年と黒長髪の少女も攻めてくる。 黒長髪の少女が連れたライチュウが刃物のような尾を伸ばして斬りかかり、銀髪の少年が連れたハブネークが跳び上がって上方向から攻めてくる。
「『アシッドテール!!』」
毒の酸を尾刀で斬りつけると同時に与える、ポイズンテールの強化技『アシッドテール』がケイコに迫って来た。
「まずいわ! デンりゅう、10まんボルト!」
すかさずケイコがデンリュウ♀(Lv:31)を繰り出し、強烈な電撃で反撃を行う。だが、その電撃をライチュウの尾が切り裂き消滅させてしまう。
「なっ!!?」
「……ふふっ!」
ライチュウを従えた黒長髪の少女が、ニヤっとする。そしてこれで、銀髪の少年が従えるハブネークを邪魔するものは、何もなくなってしまう。デンリュウは何とか体をひねって回避を図るが、ハブネークは容赦なくデンリュウを斬りつけた。ザシュウッ!!
「デッ……!!」
「!! デ、デンりゅう……!!」
ケイコは、デンリュウもすかさずボールに戻す。酸と同時に斬りつけるアシッドテールの威力で、ボールに戻してもなおデンリュウは苦しがっているようだった。
「アハハハッ!! もっともっと苦しめてやるわよ!!」
黒長髪の少女の言葉に、ケイコは悔しそうに歯をかみしめる。
「やれやれ。キズナの奴、本当にえげつない性格だよね。なぁ、テンガ。」
「それは俺達も同じだろうがよぉ、ルウ。……クククッ!!」
茶髪の少年がニヤニヤしながら言い、銀髪の少年も「ククク」と笑い続けていた。この3人、本当に相手を傷つける事を何とも思っていないらしい。
「悔しいけど、アタシ1人じゃ分が悪すぎるわね……。こうなったら、逃げるしかないわ!」
「え!?」
それまで見ているだけだった、シクーとソウトが同時に声を上げた。
「「え!?」じゃないの! 逃げるったら、逃げるのよ! 私だってここで退くのは悔しいけど、無理したら戦わせてるポケモン達が苦しむだけ!」
「……!!」
シクーもソウトも、それを聞いてようやく足を動かす。すでに後ろに走り始めていた、ケイコの後へと続いたのだった。
「ハハッ、逃げられると思ってるのかッ!! ルウ!!」
「あいよ、テンガ。ストライク、破壊滅閃!!」
「ハブネーク、アシッドテール!!」
茶髪と銀髪の少年2人が声と出し、逃がしはしないといった様子で攻撃を放つ。……だが、走っていたシクーもソウトもケイコも、すぐさま姿を消してしまう。攻撃も、見事に外れてしまうのだった。
「な、何ィ!?」
「どういう事よ、ルウ!」
「知るかよ、キズナ! でも、まさか……!」
シクー達が逃げた方向に、敵3人も走る。すると、すぐそこに断崖絶壁のガケがある事に気づいた。下は海で、シクー達は消えたのではなくガケから落ちてたのだ。ガケと言っても、高さは10mに満たないらしい。
「ってゆーか、落ちるの!?」
「そうよ、シクー。でも、心配しなくていいわ。ラプりゅう!」
すかさず、ケイコはラプラス♀(Lv:32)を繰り出す。それを海の上に漂わせると、ラプラスは首を前方に伸ばし、その首の上に落ちてきたシクー達を受け止めた。
「テメェ等ー!! 逃がさねぇぞ!!」
ところが、それでもなおストライクを連れた茶髪の少年は諦めてない様子。彼は、ハブネーク♀(Lv:14)を繰り出してきたのだ。どうやら銀髪の少年が従えるハブネークとは違い、キバは通常サイズのようだが。
「へび睨み!!」
「え゛ッ!?」
ガケの上から、なんと茶髪の少年はラプラスを麻痺させてきた。これには、ケイコもさすがに驚く。そして、やはり追い打ちはストライク。
「これで終わりだッ!! **、破壊滅閃ーッッ!!」
ザバアアァッ!! 超極太の強烈な光線が、ストライクの口元から発射され、直後に海面を砕いた。水しぶきがガケの上まで立ち上ったが、肝心のシクー達は……。
「……何!?」
水しぶきが収まった後、そこには何の姿も無かった。そして気づけば、遠くの海にラプラスの姿がある。さすがに、あそこまでは攻撃が届かない。
「チッ!! ルウ、何やってんのよ。逃げられたじゃない!!」
「うるせぇ、キズナァッ!! ……くっそォー!! あの野郎共ォーッッ!!」
さて、かろうじて逃げおおせたケイコは、3つのモンスターボールを両手の上に乗せ、中の様子をうかがっていた。バクフーン、デンリュウ、そして麻痺したラプラスである。
「ラプりゅうが麻痺した時は、さすがに駄目かと思ったけど……アタシには、もう1匹のラプラスがいたから助かったわ。ありがとう、ラスりゅう。」
「クォ〜!」
ケイコにお礼を言われ、今シクーとソウト、ケイコを乗せているラプラスが、鳴き声で返事をした。そして、そのまま波乗りで北へと向かい続ける。
「ねぇ、シクー。そっちの子の手当もしなきゃだし、一旦アタシの家があるマサラタウンへ行くわよ? それでいいわよね?」
「うん、分かった。助けてくれてありがとう、ケイコ。」
「……別に、お礼なんていいわよ。アタシはただ、通りがかっただけだからね。」
ソウトはと言うと、ラプラスの背の上で横になっていた。ソウトは、巨大で刃のようなライチュウの尾で切傷を負っている。大事には至らないようだが、やはり一番怪我をしているから休んでいるのだ。
「ハァ……参ったぜ、シクー。」
ソウトが、横になったまま呟く。
「ソウト……?」
「なぁ、シクー。俺は一応これでも、グレン島の子供達の中ではトップクラスのポケモントレーナーだ。でも大体の奴は、俺が『有名なトレーナー:ソウジの息子だから当たり前』と簡単に決めつける。」
「うん。ソウトは、それが嫌だったんだよね?」
「あぁ。けどな……それでも俺、小さい頃から親父が憧れではあったんだ。強いポケモントレーナーが父親だって、自慢にもなってたしな。だから俺も、親父みたいに強いポケモントレーナーになりたいと思った。その気持ちが無ければ、俺は強くなろうとは思わなかったかも知れねぇ。」
「ソウト……。」
「そう言う意味でなら、俺が強くなったのは親父のおかげってのも一理あるんだよな。俺は親父の息子だからと決めつけられるのは嫌だが、親父そのものが嫌いな訳じゃねぇんだ。……へへっ。」
ちょっぴり笑い声を漏らしながら、ソウトは話を続けた。
「けどな……シクー。俺は親父の実力を目指し強くなって来ていたつもりでいたんだが、さっきの戦いじゃズタボロだったぜ。あ〜あ、こんなザマじゃまた親父に何言われるか分からねぇ。」
「はははっ。またムチャクチャな奇襲かけられたりしてね♪ それもまた特訓の1つだとか言って。」
「全くだ。はははは!」
シクーとソウトは、一緒になって笑った。……笑いを終えると、ソウトは再び口を開く。
「……ハァ。もっと強くなりてぇな……。」
その頃、グレン島では……。
「ハァ……ハァ……。くそっ、コイツ等いい加減うっとうしいな。」
ソウトの父親である想路(ソウジ)は、未だ『煉(れん)』のメンバーと戦っていた。実力的には、ソウジの方が敵に比べて圧倒的に上。だが、敵は持久戦に持ち込む感じで、ダラダラと戦いを長引かせていたのだ。
「どうした、ソウジさんよぉ。息が上がってるぜ!」
「(チッ。コイツ等、最初から俺に勝つつもりはねぇな。あくまでも、時間稼ぎか。このまま続けても俺が勝つ事はできるだろうが……。)」
ソウジは、先に逃がしたシクーとソウトが気になっていた。今戦っている『煉』の者達は、2人が逃げた時に追いかけようともしなかったのである。これは何か裏があると、ソウジは薄々気づいていた。
「……なるほど。これまでの戦いは、じっくり見させてもらったぜ。ソウジ!」
すると、そこへまた新たな男が現れる。
「(新手!?)」
ソウジも、すぐさま声に気づいた。そして、煉のメンバーの1人が、現れた男に対し話しかける。
「な、リーダー! 何でまた、こんな所に!」
「あぁ、岩尚(イワヒサ)。ご苦労だったな。だが、ソウジは今かなり疲労している。それに今までの戦い方を見ていても、俺が想像していた程ではなかったみてぇだ。 最初は息子のソウトってガキを人質に取ろうと思ったが、そんな事せずとも疲労した今のソウジならば、俺の力で十分に片づける事が出来る!」
その会話が終わるのを待ってから、ソウジは顔を上げて口を開く。この時、初めてソウジは今現れた男の顔を見た訳だが……。
「なるほど。『煉』の親玉のおでましかよ……ん!?」
現れた新手の男……『煉』のリーダーの顔を見た瞬間、ソウジは驚いた。
「何!? お前は、まさか……!! お前が、『煉』のリーダーなのか!?」
「へっへっ。覚悟しな、ソウジ!」
「……チッ!」
いつまでも驚いている訳にもいかない。ソウジはそう判断し、再び身構えた。
「……親父、無事だといいんだがな。」
ソウトは、ラプラスの背で横になったまま呟いた。
「マサラタウンに着いたら、まずはグレンタウンの警察に電話しよう。早く助けを呼んだ方がいいだろうし。」
「そうね、シクー。……ポケギアがあれば今すぐにでも電話できたけど、こういう時に限ってアタシは家に置いて来ちゃったのよね……。」
コリコリと頭をかきながら、ケイコが言う。
「いや、でもケイコは僕達が危ないところに来てくれたんだ。それだけでも助かったよ。ありがとう、ケイコ!」
「シクー……。ふふっ、お礼はいいって言ったでしょ♪」
ケイコは思わず笑いを漏らす。そして、そのすぐ後、何かに気づいたように立ち上がって前方を眺めた。
「あ、見えてきたわ。あれが、マサラタウンよ!」
続く
マサラタウンに到着したシクーとソウト。そこには何があるのか? ……実は僕もまだ深くはストーリーを考えてないんですが(え゛)、1つだけとっておきのイベントがあります。 次回の第18話「美少女」も、ぜひお楽しみに!!
<現段階ポケモン図鑑データ>
【NAME:シクー】
見つけた数:19匹 捕まえた数:1匹
バッジ数:0個
手持ちポケモン ・メノクラゲ♀ Lv:3 HP:16 タイプ:みず・どく おや:シクー ・タマゴ ・タマゴ
【NAME:ソウト】
見つけた数:8匹 捕まえた数:1匹
バッジ数:0個
手持ちポケモン ・サンド♂ Lv:6 HP:23 タイプ:じめん おや:ソウト
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