| [126] ポケットモンスター アークジェネレーション!! 第16話「狂える凶器」 |
- @ - 2004年04月14日 (水) 22時55分
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「これから、予定通りの作戦に出る。いつものように、頼んだぜ!!」
この一団のリーダーたる男は、部屋の中にいた全員に呼びかけた。 ……室内には、他の者からは離れ、影の中に身を潜めながら目を光らせている『奴等』の姿もある……。
「もちろんガキ共、お前等もだからな!」
『奴等』に対しても、リーダーは言った。 ……その『奴等』は、黙り込んだまま何も言わない。だが、影の中で明らかに笑みを浮かべているようだった。リーダーがガキと言うには、あまりに不釣り合いな不気味な笑みを……。
16th「狂える凶器」
前回までのあらすじ: シクーはソウトの父親ソウジの元で、ポケモントレーナーの特訓をさせてもらう事になった。しかし、シクーはケムッソにさえ逃げられる始末。そんな2人も、まだ気づいていなかった。謎の一団『煉(れん)』が、ここグレン島内で動き始めようとしてた事に……!
「ハァハァ……ヒィヒィ……。」
「詩空(シクー)……。逃がしたケムッソを、即座に探し出せるお前のダウジング能力の凄さは認める。だが、捕獲となるとサッパリだな。」
そこにはインラインスケートを装着した少年シクーと、ソウトの父親にして有名なポケモントレーナーとしても名高い想路(ソウジ)の姿があった。 ここはグレン島の、とある草むら地帯。島内で唯一、野生ポケモンが生息する場所だ。シクーは幾度もケムッソというイモムシのようなポケモン捕獲しようと頑張っていた。が、未だ捕獲は達成できていない。
「(いや、捕獲どころか野生ポケモン相手のバトルすら、ままなってないんだよな……シクーは。どうやらコイツ、型にはまるまでは相当苦労するタイプだな。)」
目の前で息切れするシクーを見て、ソウジはそう考える。
「おっ、親父にシクー! こんな所にいたのかよ。」
と、不意に誰かの声が聞こえてきたのは、その時だった。シクーもソウジも振り向いて、それがソウジの息子……想人(ソウト)である事を確認する。
「何だ、シクー。随分ボロボロじゃねぇか? 親父にしごかれてたのかよ。」
「ソウト……。ま、まぁ色々とね。」
頭をポリポリとかきながら、シクーは苦笑いを作ってみせた。
「……ん!?」
「どうした、親父?」
不意に、ソウジの表情が変わる。ソウトもそれに気づき、ソウジに尋ねた。 ……しばらくして、シクーとソウトも不穏な気配を感じ始める。周囲の草むらから、数名の男達の姿が見え始めたのだ。
「な、何だ!?」
シクーのその言葉に応えてか、現れた男達の1人が口を開く。
「俺の名は岩尚(イワヒサ)。俺達は、『煉(れん)』の者達だ。」
「『煉』……!? まさか、新聞に載ってた例の一団の事か!!」
ソウジが、ある記事を思い出して言った。謎の集団『煉』……それは、不当に入手した珍しいポケモンを裏社会で不法に売りさばき金儲けをしているという、闇組織だった。
「まっ、俺達『煉』も新聞沙汰になるぐらい有名になったからな。さすがに、あんたも聞き覚えがあったか。」
「……シクー、ソウト!」
ソウジは、シクーとソウトに対し呼びかけた。
「いいか、ここは俺が引き受ける。お前達2人は、すぐに逃げろ。」
「親父……! わ、分かった。シクー、逃げるぞ!」
「あ、ソウト! ま、待って!!」
言われた通り、すかさずシクーとソウトはその場から走り去る。疲労のあったシクーが多少出遅れたが、2人は敵に捕まりもせず難なく逃げおおせる。……と言うよりも……?
「(……あれ?)」
さすがにシクーも、走り去りながら気づいた。敵達は、自分やソウトを追いかけようとも捕まえようとも、全くしようとしなかった事に。疑問に思いながらも、シクーはソウトと共に走り続ける……。
「……アイツ等みたいね。」
「ソウジとかいう奴が来るまでの、おおよその想定時間。その時間内に、あの2人を狩ればいいんだろ? 余裕もいい所だね。」
「それじゃあ、お楽しみタイムを始めようか!」
林の中で身を潜めながら、獣の如く目を光らせる『奴等』……シクー達は逃げるのに集中するあまり、その存在には気づかない。 その『奴等』が、遂に動き始めた。
「……ん!? 何か来た!!」
「あぁッ!!?」
シクーが声を荒げて叫び、ソウトも驚いてシクーの見る方を向く。
「ハアアアアァァァァァァァァッ!!」
声と共に、とてつもないスピードでそれは迫ってきた。2人はすかさず横に跳ぶが、直後に2人が立っていた位置に鋭い刃が横切る。ほとんど、間一髪であった。
「あっ……あぶねぇ〜……!! シクー、大丈夫か!?」
「う、うん……。でもソウト、あれ……。」
シクーは、斬りかかってきた相手を見て驚いていた。敵の正体は茶髪の少年。恐らく、シクーやソウトよりも若干年上だろう。だが、問題は彼が乗っているポケモン。それはカマキリの姿をした、両手に鎌を持つポケモンのストライク♂(Lv:19)だったのだが……。
「な、何だあれ!?」
「右手の鎌が、異常にデカイ……!!」
そのストライクの、左腕は通常サイズの鎌になっている。だが、右腕は通常サイズの3倍以上はあろうかという、超巨大な大鎌になっていた。その長さは、ストライクの体長そのものよりも長い。当然、攻撃威力・範囲共に凄まじいであろう事が想像できる。
「ふっ。ルウのバカが……何、外してるのよッ!!」
「!!?」
その直後、ソウトめがけて何かが突っ込んできた。今度現れたのは、長黒髪の少女とライチュウ♀(Lv:19)。そしてソウトには、ライチュウの尾の先が迫って来ていたのだった。しかも……ザシュウッ!!
「ぐわっ!!」
「ソ、ソウトっ!!?」
右腕に赤い筋が走り、ソウトはうずくまる。ライチュウの尾がまるで刃物のようになっており、ソウトの腕を斬りつけたのだ。しかも、今度のライチュウの尾も通常と比べて異常に長く、刃のような尾の先の部分も巨大。
「テンガ、あんたもとっとと来なさいよ。」
「キズナに言われなくとも……くらいやがれーッッ!!」
そして、最後に銀髪の少年がヘビの姿をしたポケモンと共に現れ、突っ込んでくる。そしてヘビのポケモンが、突然真上に跳び上がると、そのままシクーとソウトめがけて牙むきだしで落ちてきた。
「危ない、ソウト!!」
「!?」
シクーは即座にソウトの体をつかむと、その場から転げるように離れる。……直後、ヘビのポケモンの巨大なキバが地面に突き刺さった。
「チッ。どくどくのキバを更に強力化させた、俺のハブネークの必殺技『毒砕のキバ』が決まってれば、当分は指1本動けなくなっただろうによ。」
ヘビのポケモンを従えた銀髪の少年が、舌打ちしながら言った。しかし、あのヘビのポケモンの持つキバも非常に巨大で、仮に毒が無くても当たったら指1本動けない程度の騒ぎでは無かっただろう。
「シ、シクー……大丈夫だったか?」
ソウトが、右腕の切傷を左手で押さえながらシクーに尋ねた。
「う、うん。何とか……。ソウトは?」
「かろうじてな……。けど、あのハブネークのキバも、なんて巨大さだ。」
「ハブネーク? あの、ヘビのポケモンの事?」
巨大なキバを持つ、銀髪の少年が出してきたヘビのポケモン。シクーは初めて聞く名だったが、どうやらハブネーク♂(Lv:18)という名前らしい。
「そっか、シクーは知らねぇのか。ハブネークは確かに鋭いキバを持つが、あそこまで巨大なキバは見た事がねぇ。先に出てきたストライクやライチュウ同様、あのハブネークのキバも通常の大きさの3倍以上はある……!!」
「……っっ!!」
敵は3名。 左腕は通常サイズ、右腕は超巨大サイズの鎌を持つストライク……それを従えた『茶髪の少年』。 巨大かつ長い尾を刃物のように振るうライチュウ……それを従えた『長黒髪の少女』。 やはり巨大なキバを持ったハブネークというポケモン……それを従えた『銀髪の少年』。
……この3人に共通して言える事、それはシクーやソウトと大して変わらない年齢でありながらも、人相手にさえ平気で攻撃してきているという事であった。
「ソウト……ここは、戦うしかない!」
「分かってる、シクー!」
逃げられないと判断した2人。シクーがメノクラゲ♀(Lv:3)、ソウトがサンド♂(Lv:6)を繰り出す。
「何だ何だぁ? どっちも、弱々しそうなポケモンだね。」
ストライクを従えた茶髪の少年が、あざ笑うように言い放った。
「キズナは、サンド持ってるスポーツ刈りの奴をやっちまえよ。」
「最初っから、そのつもりよ!! レベル的に、ちょっとでもマシな方がいいからね!!」
ライチュウを従えた長黒髪の少女が、ソウトとサンドに迫ってくる……!!
「テンガは、インラインスケートのガキだ。」
「そう言っておきながら、ルウだって途中で手を出すんだろ!? まっ、どーでもいいけどよぉッ!!」
茶髪の少年に言われた通り、今度はハブネークを従えた銀髪の少年が、シクーとメノクラゲに迫ってきた……!!
「うらああああああぁぁぁぁっ!!」
「……クッ! メノクラゲ、毒針!」
すかさずシクーの指示通り、メノクラゲが毒針を敵に撃ち放つ。だが、ハブネークの尾は刀のようになっている。その刀で、軽く針を切り払ってしまった。
「ハッ、バカがぁッ!! ポイズンテール!!」
「うわっ!?」
ハブネークの毒を帯びた尾刀が、メノクラゲとシクーに向かって真上から振り下ろされる。どちらも、紙一重で尾刀を回避。……いや、メノクラゲが少しかすったが、大事には至らなかったようだ。
「(やっぱり危ない……。メノクラゲ、頑張ってくれ!)」
シクーのその思いを踏みにじるような態度で、銀髪の少年は次の攻撃を仕掛けてくる。
「チッ、浅かったかよ! なら、今度はかすっただけでも済まない物をぶつけてやるぜ。」
「何ッ!?」
「ヒッヒッヒッヒッ……!! ポイズンテールは、毒と同時に尾で斬りつける技。俺のハブネークは、その尾に酸性の毒をまとわせ、酸で溶かしながら相手を斬りつける事が出来る!! これがその俺独自の必殺技、『アシッドテール』!!」
「……ヤバイ!! メノクラゲっ!!」
再び真上から振り下ろされる尾刀。シクーはすかさず、一旦メノクラゲをモンスターボールに戻す事に。結果……かろうじてメノクラゲは、尾刀に触れる事が無かった。
「……あ、危ない……。」
だが、油断してるとシクー自身を攻撃して来かねない。シクーは、再びメノクラゲをボールの外へと繰り出した。 ……一方でハブネークを持つ銀髪の少年は、悔しそうに歯を食いしばって悪態をつく。
「んの野郎ッ!! ちょこまかとッ!! うっぜぇーんだよォ、カスがッ!!」
「どうした、テンガ。また外れじゃん。」
「うるせぇッッ、ルウ!! ハブネーク、二度と外すんじゃねええぇぇぇぇぇッ!!」
ストライクを従えた茶髪の少年に言われて、より腹が立ったのだろう。ハブネークを持つ銀髪の少年:テンガは、またもシクーに猛然と襲いかかった。
「やれやれ……。で、キズナの方はどう?」
横目で、ストライクを持つ茶髪の少年が言った。その視線の先には、ライチュウでソウトを攻めまくる長黒髪の少女:キズナの姿がある。
「ルウに心配される程、私は落ちぶれちゃいないわよ!! テンガごときと一緒にしてもらっちゃ、困るのよねッッ!!」
ザシュッ!! ザシュッ!!
「クッ……!!」
ソウトとサンドは、ライチュウの刃物のような巨大な尾で斬りつけられ続けていた。ただでさえ巨大な尾なのに、ゴムのように長さが伸び縮みするようだ。ライチュウの連続攻撃を前に、ソウトとサンドは手出し出来なかった。
「ハァハァッ……サンド……何とか耐えてくれ……。」
「ふふふふふッ♪ 耐えてるだけで、事態が好転するのかしら?」
冷たい眼差しで、ライチュウを従える長黒髪の少女が喋る。
「……んなろ〜ッ!!」
ソウトは、すかさずサンドと共に距離を取ろうと後ろ走り。
「逃げようとしてもムダ。私のライチュウの巨大な尾は、長さも自由に調整できる。最大30mまで伸びる尾が、あんた達を逃がさない……ッッ!!」
「!? 何だと!!」
ギューンッと伸びてきたライチュウの尾が、サンドを縛り付け、そのまま空中に放り投げると落ちてくるサンドを刃で切り刻んだ。
「ギュッ……!!」
「サンドー!!」
辛そうに鳴くサンドだが、ソウトは傷だらけて落ちてきたサンドを受け止める事しか出来なかった。
「こ……こいつッ!!」
「あはははははっ!! もっともっと、耐えてちょうだいよ!! このまま終わったら、面白味も何も無いでしょうッ!! もっともっと、私は痛めつけてやりたくって仕方が無いのよォッッ!!」
シクーもソウトも、敵の凶刃の前にひたすら逃げ回る事しか出来なかった。
「(……このままじゃ……やられる……!!)」
同時にそう思った2人は、いつの間にかお互いの背をくっつけ合っていた。……もはや敵に挟まれ、逃げ場はない。
「ハッ。やっぱり、時間かけて楽しんじゃってるね。」
それまで静観していた、ストライクを連れた茶髪の少年が言った。
「まっ、俺もそういうのは好きだから2人を責められないんだけどさ。そろそろ時間的にもヤバイんだよね。……テンガ、キズナ。これで終わらせる。」
「!?」
シクーとソウトは背をつけ合ったまま、ストライクと茶髪の少年の方を見た。
「ちぇっ、ルウったら。いいところだったのに。」
「っつっても、そろそろ飽きてきたけどな。ルウ、手早く片づけな。」
すると右腕に巨大鎌を持つストライクは、自分の目の前にエネルギーをため込み始めた。
「ヤバイ、破壊光線だ!!」
ソウトが、声を荒げて叫ぶ。
「……残念、ハズレ。こいつは、もっとヤベェのさ。……クッハッハッハッ……**ォッ!! ストライク、『破壊滅閃』発射アァァァっっ!!」
茶髪の少年が指示した瞬間、ストライクは超極太の光線砲を放射した。シクーとソウトめがけて……!!
「なっ……うわあああああああっ!!」
続く
今回はオリジナルな技が結構出ましたね。でも、基本は実際にゲームに存在する技です。あれをより強力化しただけで(何)。
さて、シクーとソウトの運命は!? 次回は第17話「ソウト」。お楽しみに!!
<現段階ポケモン図鑑データ>
【NAME:シクー】
見つけた数:18匹 捕まえた数:1匹
バッジ数:0個
手持ちポケモン ・メノクラゲ♀ Lv:3 HP:16 タイプ:みず・どく おや:シクー ・タマゴ ・タマゴ
【NAME:ソウト】
見つけた数:5匹 捕まえた数:1匹
バッジ数:0個
手持ちポケモン ・サンド♂ Lv:6 HP:23 タイプ:じめん おや:ソウト
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