| [122] ポケットモンスター アークジェネレーション!! 第14話「お告げ」 |
- @ - 2004年04月05日 (月) 21時21分
今までの話はコチラ
14th「お告げ」
前回までのあらすじ: 謎の少年セオンの目的は、グレン火山に眠るファイヤーだった。『無音』の首領と名乗ったセオンは、そのまま去ってしまう……。噴火はもはや止められないと判断したソウジだったが、シクーとソウトは力を合わせ、奇跡的に噴火を止める事に成功するのだった!
「光を導け、ですか?」
「えぇ。」
綺麗な白の壁で囲まれた空間……。 様々な色をした窓ガラスから、日光が差し込んでいる。 部屋の光源はそれだけで、部屋は薄暗い雰囲気。
……そこは、教会のような場所だった。中に見える人影は2つ。立っている大人の女性と、それに対し祈るようにひざまずいている、十代前半ぐらいの少女の姿である。
「とうとう、『お告げ』が来たのよ。」
大人の女性が、少女にそっと語りかける。
「分かっております。」
祈るような体勢のまま、少女は答えた。
「そう……ならば、何も心配はないわね。あなたの役目が、今こそ必要なの。」
「はい……。」
「頼むわね、ティシア。」
コクリと頷くと、呼ばれた少女はスッと立ちあがった。
……カントー地方グレンタウン。 海のど真ん中に浮かぶグレン島は、火山の噴火によって生まれた孤島。言わば、火山島という訳だ。8年前の噴火で町が1度潰れてしまった事もあるが、今ではすっかり復興している。
「ふわ〜……。今日もいい天気だな♪」
時刻は朝。まだ少し眠気が残るのか、その少年はあくびをしながら家から出た。家……というか、正確には1件の屋敷の敷地内にある、『離れ』なのだが。
「さぁ、早く朝ご飯を食べに母屋(おもや)に行きましょう。みんな、待ってますよ。」
少年と一緒に、十代後半の少女も離れの中から現れる。少年の姉、ミカンだ。
「うん。そうだね、姉ちゃん。」
眠気を振り払うかのように、元気よく姉のミカンに対し返事をする。 少年は姉と共に、この家に住まわせてもらっている。姉弟が家に来てから、早くも半月が過ぎていた。2人も、大分この家に住み慣れてきたようである。
黒髪黒眼を持つ少年……詩空(シクー)。 彼の本当の物語は、これからだ!!
「けどよう、分からねぇよなぁ。」
朝食後、シクーは自分と同い年の少年と共に出かけた。その、同い年の少年が、歩きながらシクーに話しかけた。
「何がだよ、ソウト?」
スポーツ刈りの少年……想人(ソウト)。シクーが、彼に聞き返す。
「ほら、シクーと一緒に噴火止めたじゃねぇか! この前。」
「あぁ、その事か。……あっ!」
ふと、シクーは何かを思い出す。
「ソウト、実はコウサクから手紙が届いたんだよ。昨日。」
「何ッ!? マジかよ、シクー!!」
「ごめん、言うの忘れてた……。」
康作(コウサク)は、ソウトが協力してあげて念願のフリーザーをゲットした少年の事である。それが元で再びグレンが噴火に見舞われ、危機的状況になってしまった為に、グレンの人達に冷たく言われたりもしていたのだが。 ……とにかく、そんなコウサクから手紙が来たと言う。ソウトはシクーから封筒を受け取ると、中に入ってる紙を取り出し読みあげた。
「『やっほ〜!』……そんだけかよッ!!」
「え゛。」
なんか1文しか書いてなかったし……。
「ソウト、2枚目も封筒に入ってるみたいだよ。」
「紛らわしいな、オイっ!!」
とりあえず気にせず、2枚目も読み始めた。
――あはは、ごめんごめん! 軽いジョークだよ。
――でも……本当に悪かったな。急に逃げ出したりして。 ――だけど俺、ソウトに手伝って貰えて嬉しかったよ。ありがとう! ――グレンが無事な事は後で聞いた。でも、町には近づきづらいから手紙を書いたんだ。住所を聞いといて正解だった♪ ――機会があったら、また会おうな。それじゃ!
ソウトは手紙を読んで、しんみりしているように見えた。
「あいつ……。」
「ソウト、何だかんだ言っても良かったね。コウサクも夢が叶ったんだし。」
シクーは、ソウトの気持ちをくみ取った上で言ったつもりだった……が。
「コウサクの奴……あんにゃろ〜、つまらねぇ小細工しやがってーッ!!」
「(さ、さっきの『やっほ〜!』の事か!?)」
ソウトの態度にシクー、ビックリ……(?)。
「……あ、それで? さっきの分からないってソウトが言ってたのは、何の事なの?」
ひとまずシクーは話題を変える。
「ん、あぁ。シクーも聞いてただろ? セオンとか言う奴の話。」
「あ、うん……。」
ファイヤーを狙って来ていた、謎の少年……施音(セオン)。彼はこう名乗っていた。『無音』の首領だと。
「『無音』って言われても、何の事だか分かんねぇよなぁ……。親父なら、何か知ってんのかな?」
「さぁ……。」
「まっ、どうでもいいか♪ んな事より、これからどうする?」
切り替えの早いソウトは、そんないい加減に話を終わらせてしまう。
「どうでもいいのかなぁ。」
……このような会話を続け、シクーとソウトは今日も共に歩く。 そんな2人の元に、ゆっくりと歩み寄ってくる少女の姿があった。
「……いた!」
少女は、じっと2人の方を見つめ続ける。その視線に、やがてシクーとソウトも気づく。
「ん? ソウト、あの子は一体……?」
シクーがソウトに尋ねるも、ソウトもまた首を傾げた。
「いや、俺は知らねぇぞ。」
「だって、こっちの方見てるし。僕にも見覚え無いよ?」
「つか、シクーが来た辺りから、島で見かけない奴にちょくちょく会うようになったな……。」
「……僕のせいじゃないぞ、ソウト……。」
そんな事を言い合っている2人に対して、少女はそっと近づいてきた。緑の瞳と茶色に近いオレンジ色の髪を持つ少女は、ソウトの方をじっと見つめる。そして、ゆっくり語りかけた。
「……。思ってた程、男前なんかじゃないのね。」
「悪かったなッ!!」
イキナリけなされたので、当然ソウトは怒鳴る。シクーが「まぁまぁ」とソウトをなだめながら、少女に話しかけた。
「君、何か用があるの?」
「……ちょっと。」
口ごもりながら、少女は曖昧に答える。
「でも君、僕じゃ無くってソウトに用がありそうだったけど? ソウトの事、知ってるの?」
「おいおい、シクー!」
と、ソウトが話に割って入る。
「俺は、こんな子知らねぇっつっただろ?」
「え゛、ソウトが忘れてるだけ何じゃ……?」
「あのな、シクー! 俺は、一度見た奴の顔を忘れる事なんか(本当はちょくちょくあるけど)無いぞ! 知らないモンは知らないんだ!」
「『本当はちょくちょくある』なんて考えながら、出任せ言ってるんじゃないの〜?」
いじわるそうに笑いながら、シクーは尋ねた。ソウトは、ちょっぴり後ずさり。
「(コイツ、読心術あるのかッ!?)」
一方で、シクーとソウトのやり取りを見ていた少女はというと、微妙にため息をつきながら考えていた。
「(ほ、ほんとに……大丈夫なのかしら……? でも、『お告げ』通りなら、彼が巨悪を滅ぼす力を持った『光』のハズ。今は、こんなでも……。)」
若干まだ疑いの眼差しを向けはしたが、少女はやがてきびすを返し、その場から立ち去ろうとする。 ……それに、ソウトが気づいた。そして、すぐさま呼び止めようとする。
「って、オイ! 帰るのかよッ! 大体お前、結局何者なんだ?」
『やれやれ』と言わんばかりの表情で、少女は立ち止まってめんどくさそうに振り向く。仕方が無いので、最後にこれだけ言っておく事にした。
「……アタシの名前は、ティシア。」
こうして、今度こそ少女は立ち去った。シクーもソウトも、呆然とその後ろ姿を眺める。
「な、何だったんだろうね? あの子。」
「知るかよッ!」
「ソウト……ひょっとして『男前じゃない』なんて言われたの、気にしてるの……?」
後頭部に大粒の汗をかきつつ、シクーはソウトに言った。
「……リズム様。セオン様が、お戻りになられました。」
ここは、どこかの土地に建てられている、建物の中の一室。 そこにある椅子に腰掛けていたのは、10代後半と思われる少女だった。少女と言っても、その鋭い眼光と、何を考えているか分からない微笑は、大人でさえ怯ませる事が出来そうだ。彼女……リズムに話しかけた男も明らかに年上だったが、敬語を使う事も頷けるぐらいである。
「セオン……ご苦労様。」
彼女の言葉よりやや先に、セオンは部屋に入ってきた。そしてセオンは、リズムに対してこう話す。
「姉貴。予定通り、ファイヤーは捕獲した。これで、俺の戦力も完全に整った。これからは、いつでも動ける……!」
「……ふふっ。いい報告だわ、セオン。」
続く
謎の『無音』首領を名乗る少年、セオン。そして、その姉リズム。 ……コイツ等はまだ謎中の謎ですが(←言葉自体が謎)、これから少しずつ明らかになっていきそうです。
同時に、シクーとソウトの前に現れた少女、ティシアの事も……。彼女が受けた『お告げ』とは果たして?
次回は、第15話「某麦わら帽子の子の如く」(え゛)。 タイトルからして意味不明ですね(汗々)。 それでは続きも是非、ご期待くださいませ!!
<現段階ポケモン図鑑データ>
【NAME:シクー】
見つけた数:14 捕まえた数:1
バッジ数:0
手持ちポケモン ・メノクラゲ♀ Lv:2 HP:14 タイプ:みず・どく おや:シクー ・タマゴ ・タマゴ
【NAME:ソウト】
見つけた数:1 捕まえた数:1
バッジ数:0
手持ちポケモン ・サンド♂ Lv:6 HP:23 タイプ:じめん おや:ソウト
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