| [184] 原石の色。第一話 -side Green- |
- ミズキ - 2006年02月01日 (水) 23時33分
原石の色 第一話 緑色視点。
ガタガタガタ・ ・ ・ ・
ホウエン地方の暖かな空気の中を、のんびりとトラックが走って行く。 文語的表現なら「のんびりと」、と実に素敵なオープニングなんだけど。 田舎道をガタガタと進んで行く為、トラックの内部では物凄く激しい揺れが起きていたりする。 トラックが大きく揺れる度に、私の三半規管が悲鳴を上げる。
「…………気持ち悪い…。」
薄暗いトラックの中で私はポツリと呟いた。 私は玉葉 翡翠(ギョクヨウ ヒスイ)。花の16歳だったりする。 特技は空手(父さん直伝)。かなり強いと評判を頂いている。プラス、黒オーラを発せる事が出来ます。ハイ。 花の、とか付けてみたけれど。取り合えず可愛いと評判ですが、変人との評価も高いです。 いっそバトルガールを名乗れ、とか言われてしまったこともある。 う、うーん……。取り合えずご遠慮しとこう。 私は今日からこのホウエン地方に引っ越してくることになった。 父さんの仙里(センリ)が先日トウカシティのジムリーダーに選ばれたから、嬉しいことなんだけど。 ジョウトで仲の良かった人たちとお別れするのは、やっぱ辛かったかな…… 一番悔しかったのは、誰よりも仲の良かった人がきてくれなかった事。 何してたんだろうねェ、と私は小さく溜息を付いた。 まぁ、人はいつまでも永遠に居られる、そんな莫迦な話は無いって分かってるけど。
―――話題を変えて。 父さんはジムリーダー…なのに、 な・ぜ・かッッ、娘の私が一度も(此処重要)ポケモンを持った事が無いって、全く如何言う事? 正確に言うと、ポケモンの事自体あんまり良く知らないわよ。精々…ボールで捕まえて如何の…とか、くらい、しか。 段々弱気になっていっちゃうじゃない。 ……世間に合わせる顔が無いと思う、うん。 その時何の前触れもなしに、眩い光と共にトラックのドアが開いた。 私がトラックから降りると、其処に母さんが立っており、笑顔で私を迎えた。
「翡翠、やっとついたわね。トラックの中で大丈夫だった?」 「うん、全然駄目。気持ち悪い。ていうか何で私だけトラックで来たの?」 「…え………アハハ、翡翠の分まで船のチケットとるの忘れちゃって」
………。 母さんは私をナンだと思ってるのよ! というか、チケットなんて後から如何とでもなる問題だと思ったんだけど… まぁいいや…。 新しい町を眺めてみる。 町はとてもノンビリとした雰囲気。瓦屋根の家が多くて、ちょっと新鮮。 スーパーマーケットやら本屋やら「新しいもの」が見当たらない。 なんか、和むなァ。…田舎臭いって言ったらそれまでなんだけど。
「貴方の部屋もあるのよ。あ、そうそう。 お部屋をみたら、お隣に挨拶してきて欲しいんだけど、良いかしら?」 「…………わかった。行って来るわ」 「悪いわね〜v頼んだわよ〜」
私は渋々頷いた。…何か、扱いがひどすぎるような…気がする。 てか。こういうのって普通、家族で行くものじゃないのかな… なんて私の疑問はカンペキに無視されて、私はしっしっと家を追い出された。
と言う訳で、私はお隣に挨拶に向かった。 毛筆で「苧環」と書いてある表札。ジョウトでは見たことのない苗字。 ん?苧環……?何か、聞き覚えのあるような。
「こんにちはー…」
…と、面倒臭さをあからさまに声に滲ませてしまいつつチャイムを押す。 あ、いけない。しっかりしたお隣のお嬢さんv的なイメージはこの時点で崩れ去りましたね。 第一印象きっとマイナス30くらいになっただろうな。えへへ。 なんて色々と詰まんないことを考えていると。玄関のドアが開いて。
「…えーっと…こんにちは。…あー、誰、ですか?」
私より更に面倒臭そうな声で銀髪の少年がでてきた。 む、この少年も私と同じような人種かしら。第一印象最悪だぞ。 でも良く見ると、結構端正な顔立ちをしていて、所謂「美少年」なタイプだと思った。 私と…同い年、かな?大体そんな感じだと思う。 てかね。初対面の人間に「誰ですか」なんて普通聞くもんじゃないよ少年。 そりゃ見ず知らずの人間だから仕方がないとは思うけどね。 精々「何方ですか」くらい言うもんじゃないかえ、うん? 私はペコリと頭を下げる。
「今度隣に引っ越してきました、玉葉と申します。宜しくお願いします」 「ああ、ハイ。君は…翡翠…さん、かな? 父さんから話は聞いてますよ。仙里さんの娘さん…ですよね。 父がお世話になってます。」
嗚呼、と私は頷いた。 此処、本当に苧環博士のお家だったんだ。てっきり他のお家かと思ってた。 ホウエンには苧環姓が結構居るのかなァ、とかそんな先入観からだろうか。 苧環博士と父さんは確か昔からの友人だとかなんだとか、母さんが話してたっけ。 ソレで、苧環博士がトウカジムのリーダーを推薦したときに、父さんの名前を挙げたとか。 父さんはホウエンでも名の知れる実力者だったらしく、全員一致で決定になったらしい。 アレ、でも苧環博士ってどんな顔だったっけ?この少年みたいに美人さんだったっけ? うーん。…思い出せないなァ。
「此方こそ。えっと、さん付けとか、しなくて良いよ。敬語も不要だと思う。 同い年、だと思うし。何歳、かな?」 「俺は今年で17だよ。翡翠は?」 「じゃあ、私と同じだね。今年で17歳だから」
彼もまた今年で17歳だと言うけれど。 見かけこそ青年。でも、まだ中身は子供っぽさが残っている感じ。 彼はへらりと笑うと、言葉を続けた。よく、笑う。
「良かった。そうそう、俺は琥珀(コハク)だよ。苧環 琥珀。 ………てか…俺、ジムリーダーの子供って言うからさ」 「?」 「てっきり男かと思ってたよ。…ゴメンな」 「はは。結構言われるけどね」 「やっぱり?何となく先入観が『男』って感じがするんだよな」 「嗚呼、わかる。鍛え上げられてそうな、ね」 「うんうん。そんな感じ。不思議だよなー…。 そういえば父さんが言ってたんだけど。翡翠はポケモン持ったこと、ないんだって?」 「言わなくて良いのに、全く…!えと、お恥ずかしながら。…情けないよ」 「え、全然そんな事ないと思うな。 だったらさ、今度機会があったら俺が捕まえてくるよ。待っててよな」 「ホント?有難う」
へぇ、と私は感嘆した。 結構…優しそうな。最初のかったるそうな人間とは大違い。 そして意外とおしゃべり…らしい。人は第一印象で判断してはいけないということが良く分かりました、ハイ。 するとふと琥珀は壁の時計を見て、げっと声を上げた。
「やべ、すっかり忘れてた。もうこんな時間だ、間に合うかな… 翡翠さ、俺、そろそろ出掛けなくちゃいけないんだ」 「うん、わかった。気をつけるんだよ、少年」 「琥珀だっての…ま、これから宜しくな。じゃ、また」
ニカッと彼は笑って、何処かへ慌てて走っていった。 ……笑うと結構可愛いじゃない。 私は少年――じゃなかった、琥珀を見送ると、さてと呟いた。 挨拶も一応済んで、やることも無くなった。 家に帰ってグダグダしても良いんだけど、…そんなのは嫌だ。 まだ日も高いので、私はとりあえずタウンから出てふらふらすることにした。
***** アトガキ。 久々にポケモン小説書いて見ました。 ちうかリメイクバージョンです(笑) HNも元に変えてみてまさにリメイクッスね。 漢字などは全て当て字ですのであまりお気になさらず…;

|
|