「姫ッ私はッ・・・!」 その時コンコンッ!と扉を叩き、呂蒙が入ってきた。孫権から「妹を大人しくさせよ」と言われ話を聞きに来たのだった。 「尚香殿・・・。その・・・」 呂蒙が話しかけようとした途端、スルリ、と尚香は俯いたまま呂蒙の横を通り抜け、何も言わずに部屋を出て行った。そして、陸遜も下を向いて、両手を強く握りながら黙っていた。明らかにおかしい2人の様子を見て、ようやく呂蒙は事態が読めた。 そして、しばらくの間、黙っていた陸遜が口を開いた。 「初めて姫にお会いしたときです・・・。」 まだ自分が呉に来て間もないときでした。と陸遜は話した。
若すぎた為、周りからは相手にされず、良いようにこき使われて、軍議などには出させてもらえなかった頃、そう、まだ呂蒙殿にも会う前のことでした。 いつものように書物を運んでいるとき、姫にお会いしたんです。その日は天気がよく暖かくて、まさに小春日和でしたね。そして女性が桃の木の下で寝てたんです。当時、姫のことはうわさ程度でしか聞いたこと無くて、「綺麗な人だなぁ・・・。」としか思ってなかったんです。まさか、姫だとは思いませんでしたが。そして、 あの日3日間は寝てなくて、すごく眠かったんです。そのせいか、姫の服(ふわふわ素材がたっぷりの着物)が何だか布団のように見えて・・・。何だか布に吸い込まれるような感じで・・・。桃の木の下で一緒に眠っちゃったんです・・・。
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