「・・・・・・」 「どうしたの?」 「珍しい事もあるのだと思いまして」 苦笑して伸ばした手は尚香の耳元へ。 さらりと流れる髪に隠れる様に、それでも存在感がある耳飾に触れた。 「似合わないと思っているのでしょう?」 「いえ、大変お似合いだと思いますよ」 伸ばした手を自分の方へ戻す時に、僅かに聞こえた音が綺麗で癪だった。 「あなたも早く嫁げって思っているの?」 「そうですね、もう嫁いでもおかしくは無い年齢ですから」 何時もと同じように笑みながら答えれば、彼女の眉尻は上がる。 「私が嫁ぎたくない事も知ってるわよね?」 「知ってます」 「それでも、それでもあなたは兄様達と同じ事を言うの?」 「・・・姫、私は」 「孫家の臣下で、私の教育係、それ以上でもそれ以下でもない・・・でしょ?そんなの聞き飽きたわ」 艶やかな衣装が主人と同様不機嫌に揺れる。 紅のひかれた唇が苛立たしげに言葉を紡ぎ続けた。 「そうね、あなたまでそう言うのなら、今度の縁談の相手に会うだけ会ってみるわよ」 「姫?」 「それが望みなのでしょう?」 「待ってください!」 翻して背を向けようとした尚香の手首を思わず掴んだ。 「離して!」 「私、私は!!・・・・・・」
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