好きよ
あなたが・・・誰よりも
今日の分の仕事を終えようとする太陽の輝きが二人を照らす。 紅緋の色は今の彼女には眩し過ぎた。 触れ合う指先から切ないぐらいに熱い思いが伝わってくる。 ねぇ、本当はずっとあなたと手を繋ぎたかったのよ。 でも、これが最初で最後。 「陸遜、ごめんね」 あなたの優しさを信じないわけじゃない。 あなたとの未来を夢見てないわけじゃない。 それでも、私達は。 「今までずっとあなたを困らせてたよね。でも、それも終わり」 「姫?」 「縁談・・・ちゃんと真面目に考えるわ」 そしてきっとそのまま其の人の許へ嫁ぐ。 兄達はこの縁談に乗り気だった。 呉がより大きく、より早く天下へと近づく為に。 相手は荊州の中でも有名な豪族の息子。 孫家との親交も薄くはない。 今回も考えてみてくれと無理強いをするわけではなかったけれど、魏が刻々と大きくなっている今、 土地も戦力も拡大したい思いはよくわかる。 「だから・・・これが最後」 刹那、陸遜の瞳に映ったのは自分と唇を重ねる愛しい人の悲しい微笑み。 掴んでいた指先は、気づいた時には外されていた。
「もう、あなたには会わないわ」
太陽の光は、もう感じ取る事さえ出来なかった。
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