眩んだのは本当に陽の煌きにだったのか… 息の詰まる感覚に仰いだのは何を思い出したくて…? 「寂しいのは…何?」 瞬間、均衡が崩れたと反応した時には、身体は落ちていた。視界には世界がいつもと違う風景で映り込み、「打つ…」と構えた瞬間、衝撃は違う形で表れた。 「怪我をして、貴女はまだ…私に深憂をさせたいのですか?」 途端の恐怖に…抱かれた腕に救われ、声の憶測に尚香は瞳を開いた。 「どうして…」 その微笑の意味はなんだろうか…? 哀しげだといっては駄目な、清廉な瞳。 映える針葉の現実的な色と薫りに、仰いだ陸遜の顔が印象的で…尚香は胸が痛くなった。 「…ありがとう。もう大丈夫よ、離して…」 拗ねていた自分が陸遜の優しい言葉で恥ずかしくなる。こうして想われているのを判っていて、試している様な我儘で陸遜を困らせて…誠実で、忠誠に真っ直ぐな陸遜だから… その想いが怖いと感じると言ったら笑われるだろうか。と唇をかむ。 「っ、何…?」 救われた身体を離して貰えたと動揺を隠したのに、陸遜は尚香の手を掴んで離さなかった。 「貴女は…私がどんな想いで縁談を見届けていると思っているのですか?」 繋がった指先をどうしたらいいのか判らなくて、突然言われた陸遜の想いが伝う。 「…判らないなんて、言いませんよね?」 優しくその手を引かれて近付く。 記憶に繋がる指先の感覚。あどけない気持ちは今…どう変わってしまったのだろうか。 「俯かないで…」 瞼を伏せた陸遜の顔が綺麗だった。盗む様に見つめて、尚香は指先に陸遜の唇が触れたのに気付いた。 「ぁ…」 声も出ない程に尚香は切なかった。 体温の違う陸遜との接触は、尚香にとって特別なものになる。
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