【広告】楽天市場の超ポイントバック祭合計購入額に応じて、ポイント還元12月15日まで開催中

「手の先にはあなた」

名前は匿名希望でも結構ですし、短くても全然構いません。
とにかく書いてみようというやる気が大事(^^)

ホームページへ戻る

このレスは下記の投稿への返信になります。戻る

No.7 第5話 投稿者:一ノ瀬颯杜   投稿日:2006年01月13日 (金) 19時39分 [返信]

目を閉じれば、幼い日の記憶が今でも鮮明に映し出されるように。
あの頃から彼女は私の憧れでした、と陸遜は続けた―――





日が高くなり花びらや木々の隙間から木漏れ日が顔にかかる。
少年が優しい暖かさでそっと目を覚ますと、すぐ近くから可愛らしい歌声が耳をかすめた。

「…あ、起きた?」
歌声の主は、まだあどけない少女だった。
彼女は満面の笑みを見せて此方を伺う。
その姿を漸く認識したのか、夢現の世界から勢いよく連れ戻された少年は慌しく頭を下げた。

「いや…あの…すいません!!」
「あら、どうして謝るの?」
「それは…その…」
少年は、身分も何もわからない相手を目の前に眠り耽ってしまった事に謝罪したつもりではあったが
『どうして』と尋ねられると、何をどう説明していいのかわからず黙りこんでしまう。

少女は何も言わず、だが確かに困惑した表情で少年を見つめていた。
少年は間が持たず視線を泳がせる。
すると、少女の手が自分の手を握っていることに気付いた。

「あの…」
「なぁに?」

うまく言葉を伝えられずに視線で誘導すると、少女の顔が緩む。
「あ、これ?私が起きた時、実はこの状態だったのよ」
「え…」
「多分…あなたが掴んだのだと思うけど…」

目が覚めた時少し驚いたけどね、と少女は続ける。
「一度手を離したものの、あなたの寝顔が少し寂しそうに見えてもう一度繋いであげたの」
少年の顔が俄かに赤く染まる。
「照れてるの?」
いたずらな微笑がまるで挑発するように語り掛けた。
何も言い返せない事すら羞恥心を駆り立てる。

「あなたって素直じゃないのね。私、尚香って言うの!」
「しょ…!?」
「…どうかした?あなたの名前はなぁに?」

少年の頭を"おてんば姫"の噂が駆け巡る。
あの姫の名前は『尚香』ではなかったか…
目の前に存在する翡翠の双眸は間違いなくあの姫であるに違いないと、確信に変わる。
手荒ではあったが即座に握られている手を離し、膝をついた上で拳と揃える。
「どうか…この度の非礼をお許しください…!!」

姫…と少年が顔をあげると少女…――尚香が不機嫌そうに言い放った。
「私の名前は孫尚香、ただそれだけよ!あなたと友達になりたかったのに、あなたまで私を姫として扱うのね」
「しかし…」
「じゃあいいわ、その"姫"があなたの名前を聞いてるのよ」
「り…陸遜、字を伯言と申します」

不安そうな少年を他所に、尚香は陸遜の手を両手で引き寄せると、優しげに笑った。

「そう…陸遜って言うのね!ねぇ陸遜…あなたは一人じゃないわ」
「姫…?」
「寂しい時は言ってね、いつだって手を繋いでいてあげるから…ね?」







―――あの日の桃の香りは今でも覚えていますよ、と陸遜は呂蒙に向き直った。

「まったく姫らしい出会いだな」
静かでいて豪快さのある笑い方で呂蒙が笑い、陸遜が苦笑する。
「あの日から私は彼女に焦がれているのかもしれません」
「肯定はしないのか?」
「はは…呂蒙殿は人が悪い。
まだ…肯定するのが怖いんです」

呂蒙は陸遜の頭に手を置き、ぐしゃぐしゃとかき回した。栗色の髪の毛がさらさらと顔にかかってはハラリとこぼれる。
「お前は十分よくやっている。もっと自信を持ったらどうだ?とにかく暫くは姫の事をお前に任せる。姫の言葉を思い出せ」
意味ありげな言葉を残して呂蒙はその場を離れた。


「もっと自信を持て…か」

――寂しい時は言ってね、いつだって手を繋いでいてあげるから――

呟きだけが響く空間をいつしか"寂しい"と認識するようになっていた。





名前
タイトル
本文
e-mail
URL
文字色
削除キー 項目の保存
Number
Pass

ThinkPadを買おう!
レンタカーの回送ドライバー
【広告】楽天市場の超ポイントバック祭合計購入額に応じて、ポイント還元12月15日まで開催中
無料で掲示板を作ろう   情報の外部送信について
このページを通報する 管理人へ連絡
SYSTEM BY せっかく掲示板