法律関係のことは法律の専門家(=弁護士)に聞く、これが鉄則だと思います。警察官も愛護センターの職員も法律の専門家ではありませんから、全員がくわしいとは限りません。中には精通している人もいるかもしれませんけれど、我々には誰が詳しいかなんてわかりませんものね。やはり弁護士のバッジをつけている人に聞くのが一番確実でしょう。それもペット関連に強い弁護士に。法テラスのような無料法律相談もありますが、医療の分野が内科・外科等と分かれていると同様、弁護士にも得意・不得意がありますから、検索してよく調べてください。NPOを設立されたのであれば、ペット関連に強い弁護士を知っておくことはこの先も何かと有利だと思います。
と、上記の大前提を述べた上で。
いちおう、私の理解も書いておきますね。断っておきますが、私は法律の専門家ではありませんし、法律を真剣に勉強したこともありません。本を数冊読んだだけです。私のいうことを鵜呑みにはしないでください。必ず弁護士に確認するか、ご自分で調べまくってください。
【保護猫の所有権について】
以下の2つの場合が考えられます。
1.所有者がいない猫=野良猫や野猫の場合
2.所有者がいる猫の場合。
1.所有者がいない猫=野良猫や野猫の場合
猫を飼い始めた時点から、その猫はその人の所有物になります。通常、飼う=所有の意思をもって占有するとみなされますから。で、実際問題として、保護(単なる餌やりではなく、家に入れて適切なお世話をすること)は飼うと同義ですよね。完治後リリースするとしても、それは一度得た所有権をまた放棄すること、とみなせるわけで。
野良猫=人間社会の中で暮らしている猫。狩りをしたり、人から食べ物をもらったり、ゴミ箱をあさったりして生きている。
野猫=人間と一切のかかわりなく生きている猫。大自然の中で自身の狩りだけで食料を得ている。
法律上、猫は「動産」に分類されます(「不動産」=土地)。「野良猫・野猫は飼った人のもの」の根拠となる法律は
e-gov 法令検索 民法第二百三十九条所有権の取得(無主物の帰属)
第二百三十九条 所有者のない動産は、所有の意思をもって占有することによって、その所有権を取得する。
2.所有者がいる猫の場合。
その猫が誰々の飼い猫とわかっていれば、所有権はその飼い主にありますから、法律上は無断で飼ったり治療をすることはできません。
無断で飼育(治療含む)をした場合、刑法の窃盗罪や占有離脱物横領罪などに問われることがあります。
困るのは、捨て猫か迷子猫かわからない場合ですね。あきらかに捨て猫なら問題ないのですけれど、迷子猫の可能性が少しでもある場合は要注意となります。なぜなら所有権は、拾得者ではなく、飼い主にあるからです。
法律上、迷子猫には「遺失物法」が適用されます。迷子猫を疑われる猫を保護した場合、まず警察に遺失物届を出してください。警察署にいって状況を説明し、紙を1枚書くだけ、もちろん無料。
(しかし決して猫を警察につれていかないで!保健所に連れて行かれてしまいます。自分が保護する旨を申告してください。)
そして、所有者さがしをしてください。保健所問い合わせや拾得場所付近へチラシなど、迷子猫をひろったらふつうにすることを、ですね。
遺失物法により、3ヶ月たっても飼い主が現れなければ、正式に所有権を取得できます。
e-gov 法令検索 民法(遺失物の拾得)
第二百四十条 遺失物は、遺失物法(平成十八年法律第七十三号)の定めるところに従い公告をした後三箇月以内にその所有者が判明しないときは、これを拾得した者がその所有権を取得する。
拾得者は拾得物を適切に管理する義務があるとすれば、(迷子猫の保護後3ヶ月を待たずして)治療を行うこともその範囲内と考えることは可能だとは思います。しかし、飼い主によって、泣いて喜ばれるかもしれませんし、「よけいなことを!治療費を払う気もない」ともめるかもしれません。相手次第だと十分認識した上で治療してください。私たちは苦しんでいる猫を治療せずに放っておくことなんてできませんものねえ。
必要な治療以上の行為(去勢避妊手術、他)は、3ヶ月待って所有権を得てから行うが原則となります。
なお、「獣医師法」で定められている範囲については、それこそ獣医さんがご存じでしょう。知らなければ獣医師として適切に働くことができませんからね。獣医さんの指示に従って行う行為であればまず問題はないと考えて良いのではないでしょうか。