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月由梨 棗(管理人)
「あ!ジェイ君、こんな所に居たのね!」
嬉しそうな声とともに声の主、ハリエットが駆けてくる。 結構探し回ったようで、少し息が上がっている。 「・・・・なにか用ですか?」 あまり感情のこもらない声で問いかける。それが気に入らなかったようで、ハリエットが少しムッとする。 「別に・・・特に用はないわよ・・・・」 「じゃあ、どうしてそんなに探し回っていたんですか?」 ハリエットがさらにムッとしたように言う。 「・・・・なによなによ!ハティがジェイ君を探しちゃいけないの?用がないと話しかけちゃいけないの!?」 「べ、別に、そこまでは言ってないでしょう?ただ、用がないのになんでぼくを探していたのか気になっただけですよ」 「・・・・・・ジェイ君に会いたかったらよ・・・・」 「・・・・え?なんですか?」 「な、何でもないわ! それより、用なら出来たわ。ハティに料理を教えてちょうだい」 「・・・は?なんでぼくなんですか?料理ならシャーリィさんやクロエさんやウィルさんの方が上手じゃないですか」 「いいじゃない。ジェイ君の料理、ハティ見てみたいし。ジェイ君だって上手そうじゃない」 「ぼくはそんなに上手くありませんよ。教えてもらうならもっと上手な人に教えてもらったほうが上達しますよ」 「・・・ジェイ君。ハティは、ジェイ君の料理が見たいの。わかった?」 「・・・・・え?あ、はい」 ハリエットに凄い目で睨まれてついOKをしてしまった。 「やったあ!じゃあ、決まりねっ!ハティの家に行きましょ!パパがいない今がチャンスよっ!」 「あ、はい・・・・」
強引にウィルの家に連れて行かれ、調理場に向かう。 「エプロンは・・・・これしかないわね。ジェイ君、ハートの柄とうさぎの柄、どっちがいい?」 「・・・え・・・・?」 ちなみに、ハート柄のはピンクと赤の派手なハートが散りばめられている。 うさぎ柄の方は、うさぎが大きくプリントされていて、周りには小さな花が多数描かれている。 この2つからどっちかを選ぶのは、16歳の男としてどちらも恥ずかしい。 「え・・・あ・・・・えっと、じゃあ、ハート柄で」 さすがに、うさぎのは抵抗があるのでハート柄を選んだ。 ハリエットは愛用の花柄のエプロンをしている。 「わかったわ。じゃあ、始めましょ。 今日作りたいものはというと、ケーキを作りたいのよ。」 「ケーキ?どうしていきなりケーキなんです?もっと簡単なものにすればいいでしょう」 「ケーキじゃないとダメなのよ!どうしてもケーキを作りたいの!」 「わ、わかりましたよ・・。でも、ぼくケーキの作り方なんて・・・」 「それは大丈夫よ。ちゃんとクロエ達に聞いてきたんだから!」 「用意がいいんですね・・・」 「本当は1人で作ろうと思っていたんだけど、ジェイ君が料理できるみたいで助かったわ。 だって、セネル君とシャーリィはお出かけだし。クロエはオルコットさんとエルザのお手伝いでしょ?ノーマは町にいないし。そもそも料理が上手なのかもわからないわ。 モーゼス君も山賊のみんなと騒いでるし。グリューネお姉ちゃんもどこに居るかわからないし。 ということで、ジェイ君に手伝ってもらうことにしたの」 「そうなんですか・・・」 「そうよ。早く準備してちょうだい。夕方までには仕上げたいの」
「ただいま・・・・・む?」 帰ってきたらいつも真っ先におかえりと言ってくれるハリエットが、今日は出迎えにこない。 変わりに、「出来た〜〜〜〜!」という声が上がる。 「・・・・・・?」 不思議に思ったウィルは声のした調理場を見てみた。 すると何故か、ピンクと赤のハート柄のエプロンをしたジェイと、ハリエットがいた。 2人の前には白い物体がある。それがケーキとわかるまで時間はかからなかった。 「ただいま・・・・」 わざと大きめの声を出して、こちらに注意を引かせる。 すると、2人はやっとウィルが帰ってきたことに気がついた。 「あ、お帰りなさい、パパ!」 ハリエットはいつものようにウィルのところに駆け寄っていく。 ジェイもなにか言おうとしたが、自分の格好に気がついて、急いでエプロンを脱ぐ。 「ねぇ、パパ。今日はなんの日か知ってる?」 「ん・・・・?なにかあったか・・・?」 ケーキがあるということは、なにかお祝い事があるのだろう。だが、自分の誕生日としてはまだ早い。 ハリエットの誕生日でもないし、アメリアのでもない。 そもそも、日にちの感覚がわからなくなっている。 「もぅ、忘れちゃったの?今日は、パパとママの結婚記念日よ! いつもママは今日は記念日だって嬉しそうに話してたわ」 「・・・・・ハリエット・・」 「だって、パパとママが結婚しなかったら、ハティは生まれなかったんだもの。だから、少しくらい・・祝ってあげてもいいかなー・・・って」 「そうか。・・・・それで、このケーキはハリエットが1人で作ったのか?」 「ううん、ジェイ君が手伝ってくれたのよ」 「ジェイが・・・・?」 「・・手伝わされたんですけどね」 今まで黙っていた見守っていたジェイが、訂正を入れる。 「ジェイ君、手伝ってくれるって言ったじゃない」 「・・・・まあ、言いましたけど・・」 「ならいいじゃない♪」 「・・・・・・・なんか、納得いきませんね・・」 「・・ジェイ、ハリエットが無理を言ってすまなかったな」 「い、いえ・・別に。少し手伝っただけですから」 「でも、ジェイ君やっぱり上手なんだから!ハティもその才能をわけてほしいわ」 「・・あなたが下手なんですよ」 「なんかいった?」 「い、いえ・・・・別になんでも・・」 またもハリエットに凄い目で睨まれ、怯んでしまう。 「じゃあ、セネル君達も呼んで食べましょ!パパ、呼んできてちょうだい」 「なんでオレなんだ・・・・?」 文句を言いながらも娘が可愛いウィルなので黙って従っていた。
その後、青い顔をしたセネルとモーゼスが見られたという。
+あとがき+ なんか、長くなってしまいましたね。 前半ハティジェイ気味。後半は親子。 あと、最後に青い顔をした〜・・と書かれていますが、クロエとノーマとシャーリィは様子を見てから食べるということにしたので被害にはあいませんでした。 グー姉さんは平気な顔をして食べていたそうですが、ウィルも少し辛そうにしていたそうですよ♪ ジェイは作っているのを見ていたので食べませんでした。 手伝ったといっても、クリーム泡立てたり、スポンジ焼いたりしていただけで、味付けの方はハティにまかせっきりだったみたいです。
[3] 2005年11月15日 (火) 19時48分
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