|
柚良 棗@管理人
「ねぇ咢。手、合わせてみない?」
「あ?なんでだよ」
「いいからいいから」
私はそう言って咢の手をとり、自分のそれと合わせ重ねる。
「わー、咢の手ェちっちゃい!」
手だけじゃなく、背もちっちゃいよね。
そう付け加えれば、咢が怒ると思ってやめたけど。
「うるせーよ!!」
結局、背のこと言わなくても怒っちゃったね。
「まぁ、私の方が1つだけ年上なわけだし、アギたんの手が私より小さくてもいいよねー」
でもこんなに差があるとはね。
怒るからこれも言わないでおこう。
「変な呼び方すんじゃねェ!!」
「いーじゃないいーじゃない。んふふーアギたーんっ」
「わッ……何しやがる!」
私は勢いよく咢に抱きつく。
えへへ、やっぱりこのくらい身長差がないとね。
私も身長が高くはないけど、低くもないから、咢を包み込むことが出来る。
得だよね。
「んー、気持ちいい…アギたんやぁらかーい」
「るせー」
あはは、さりげなく「アギたんて筋肉ないよね」って言っちゃった。
咢もそれがわかったらしく、不貞腐れたような、拗ねたような声を出す。
もう、ホントに可愛い!
「ねー咢。私、約束するよ」
「んだよ」
「 」
「…なッ…」
「ふふーん。約束だよー」
+ + + + + + + + + +
「ねー聖乃。昨日、咢になに言ったの?」
「んー?」
私は学校の屋上で、亜紀人に問われた。
本当は私も授業があるけど、昨日の夜、亜紀人に訊きたいことがあるって言われて今、呼び出されている。
『学校の授業があるときは咢、いつも寝てるから、そのとき訊きたいことがあるの』
って。
なんだろ、って思ってたら、昨日のことか。
咢が寝てるときを選ぶなんて、咢本人のことしかないと思ってはいたけど。
「ねぇ聞いてる?」
「うん、聞いてる。でも、ナ・イ・ショ」
「え、なにそれー。咢の様子が変だから、心配して訊いてるのに」
「どうしても聞きたかったら、本人に訊きなよ。じゃね、具合悪いって言って授業抜け出したのよ」
そろそろ医務室行かないとばれるーっ。
「……わかった。ごめんね、時間とらせて」
「いいのよー。アギたんとアキたんの為だから」
「それなら教えてくれてもいいのにーっ」
「それは別」
そう言って私はA・Tで飛び上がる。
聖乃が屋根の上を飛んで、学校へと戻っていく姿を見つめていた。
「…ねぇ、咢。起きてるんでしょ?昨日、聖乃になんて言われたの?」
(別に)
返ってきた答えはそれ。
「もぅ、咢も聖乃も秘密主義なんだから」
拗ねた声を出してから、眼帯をずらし咢と交代する。
「チッ。アイツ――聖乃の野郎、あんなこと言いやがって」
聖乃は野郎ではないが、それをツッコむ人もいない。
静かな屋上。
咢は一人、呟いた。
「…守る、か――」
+ + + + + + + + + +
『ねー咢。私、約束するよ』
『んだよ』
『私が咢を守るから』
『…なッ…』
『ふふーん。約束だよー』
『……俺が、守られるのか』
『当たり前よ。
――手のひらを合わせて、大きい方が小さい方を守るんだから』
■あとがき 素敵な企画に参加させていただき、有難う御座いました。 企画サイトとかそういうものに参加したことなくてドキドキです…こんなもので宜しかったんでしょうか。 ちなみにヒロインは咢より一つ年上となってます。守る側です(笑)。
[19] 2006年09月11日 (月) 10時13分
|