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柚良 棗(管理人)
一人の少女の声が、広い城内に響いた。 「殿下ぁー、でーんかぁ〜!」 声は焦っているようだが、足取りは全く急いでいる様子ではない。 「でんかー!ちょっと聞いてくださいよ〜!」 「なんだ?オレさまはお昼寝中なのだ!このラハールさまの眠りを妨げる程の事件でもあったのか?」 棺桶型のベッドと思われるものから上半身を起こした少年は、鬱陶しそうに少女――エトナを見た。 「あぁ!殿下、起きてくれましたかー。ええとですねー、大変なんですよー。フロンちゃんが消えましたよ、たった今」 先程の焦った口調は何処へやら、どうでもいいことのように告げる。 「そんなことでオレさまを起こすな!じゃ、オレさまはもう一度寝る!」 対する少年のほうも、特に気にした様子も無く二度寝に取り掛かる。 「でも殿下ー。フロンちゃん、なかなか帰ってきそーにないですよ〜?」
[14] 2006年03月31日 (金) 10時47分
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