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[15] 情熱と清流 03/04/19(Sat)
匿名 - 2016年05月28日 (土) 09時04分

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[16] 情熱と清流 03/04/19(Sat)
匿名 - 2016年05月28日 (土) 09時05分

情熱と清流 03/04/19(Sat)
暗く冷たく、静かなる無言の宇宙に……
人と呼ばれる種が、じわじわと戦いを挑み、
途方もない長い棘の道を彷徨っていたのは、もう、遠い昔の話。
今、人々は、満たされた宇宙生活を手に入れている。
人間の様々な活動が星の寿命を縮めるという問題も、
地道な意識改革と自然回帰への努力のおかげで、相当に緩和されつつある。

その最たるものは、惑星管理局の存在だろう。
一つの星をあらゆる角度から解析し、その生態環境を
(例え人間に不利益になる形であっても)維持することが、
惑星管理局の務めであった。

管理局の行動は環境保持であり、いかなる変化も好まない。
そのため管理局下にある惑星については、
いかなる惑星改造も行われないことになっており、その結果、
幾つかの惑星から人類は引き上げざるを得なかったわけだが、
それでも管理局の重要性とその地位は少しも揺るがなかった。
宇宙史に残る、惑星改造を繰り返した星々の悲劇が、
人々の欲望にがっちりと歯止めをかけているからだ。

管理局の宇宙社会における役割は、自然の保持であるが、
人が管理局をイメージする際に、もっと分かりやすい特徴がある。
それは、管理局に勤める者達が、全て女性型アンドロイドであるという点だ。
これも、はじめからそうだったわけではないのだが、
人間の欲望が組織を歪ますことから、公正であることを求められる集団には、
多くアンドロイドが採用されることとなっていた。

かつてアンドロイドは人から心を取って、体力を足した道具と言われていた。
今では、アンドロイド達にも心がある事が認められている。
しかし、アンドロイド達の心のありようは人間とは違い、
欲を育てる温床にはならずにすんだため、未だに大きな組織の手足には、
アンドロイド達が有用なのだった。
何事においても人の都合で推し量ってはいけないとされる、
管理局の仕事全般においても、アンドロイドは優秀な職員であった。

管理局の職員は長を除いて、みな女性型アンドロイド達であり、
その中でも特別な力を持たされているキャラクターは、
自然要素を表現した属性に沿った姿を持っていた。

水の要素を持つ青いアンドロイド「清流」と、
火の要素を持つ赤いアンドロイド「情熱」がその代表だろう。
彼女達アンドロイドがこのような美しくも華やかな姿をとっているのも、
それを見た時に人間の心に起こる、精神的な効果を見越してのものだという。
人に自然の声を伝える彼女達アンドロイドは、いわば宇宙時代の精霊なのだ。

空に浮かぶ管理局の飛空船を、あるいは海を走る帆船を見るたびに、
人々の心に浮かぶイメージは、ただひとつ。「精霊の船」であった。
物語は、その精霊の船のひとつ、飛空船の中で静かにはじまった……

ピンと張った皮の帆を頂いた、生きた樹で出来た船の中は、
外見とは対照的に近代的な設備で覆われていた。
空中を漂う幾千のモニターには水温や気温、地質や湿度、
生命反応や精神エネルギーの乱れを示す複雑なグラフが秒単位で描かれており、
半透明な情報伝達板にはアンドロイドにしか読むことの出来ない、
直感的な記号文字がぼうっと光って、呪文のように浮かび上がっている。

その間を、忙しく行き来するのは、百名もの真っ白な少女アンドロイド達。
彼女達は何の特色もつけられていない、純白の素体であり、
情報の整理と解析を行うコンピューターそのものだ。
そして全てのモニターを見渡す中央には、
この飛空船の主である、黄金の女性型アンドロイド……
人は、彼女に「運命」という名を与えている……が、
長い金色の髪をたらし、穏やかな表情で座していた。

素体達の計算報告を見守り「運命」は静かな笑みをたたえた。
「変化なし。今宵も星は安らかである」
アンドロイドに表情や声を与える必要は本来はないのだが、
それはやはり「人間の目を気にしなければ」という話である。
特殊な訓練を積まなければ、植物や昆虫と意志疎通できないように、
アンドロイド達に独自の文化のみを許してしまえば、
人は、彼女らとのコミュニケートに大きなハンデを背負う事になる。
そこで、重要なポジションを持ち、
人と接触する必要性があるアンドロイド達には、
必ず豊かな表現能力が与えられていた。
「運命」もそうした豊かな表現を持つ者の一人であった。

「運命」は聞く者の心を奪うような、不思議に穏やかな声で、
惑星管理局の長に、星に異常が無いことを報告する。
が、報告の途中で、光の騒めきが起きた。
人であれば、ひそひそと小声で話しあうような状態かもしれないが、
色付けされていない素体達には、感情表現能力も与えられていない。
アンドロイドにしか解らない、光の呪文で彼女達はそれぞれが感じ取った、
ある種の異常を現したのだった。

「運命」は何事かと顔をしかめた。
その様子が人間である管理局長にも伝わる。
「どうかしたのかね?」
「はい。清流が目覚めました」
「運命」は白い素体少女達をかきわけ歩いてきた、
真っ青な姿の「清流」を見つめて答えた。

「清流が?話させて貰えるかね?」
局長の声は、不安からではなく、好奇心に上ずっていた。
属性を担う精霊アンドロイド達は、異変が無いかぎり、
まず起きてくることはない。
従って、惑星管理が徹底されている現在、
彼女達の美しい姿を目にすることは殆ど無いのだった。
公平であることを追及し、3ヶ月以上の赴任を認められない、
管理局長は、けして長くはない自分の任期の間に、
名高い精霊の一人とコンタクトできる事を純粋に喜んだ。

「運命」がうなずくと、「清流」は管理局長に姿が見えるように
空中を飛び回るカメラの一つを移動させた。
現れた涼しげな姿に局長は目を見張った。
「黄金の運命も素晴らしい姿だが、青き清流あなたも美しい姿をお持ちだ」
それは感動から来る無邪気な台詞だったが、彼女らの設計者以外には、
対した効力はない無意味な言葉だった。
アンドロイドの心が人間の女性とは、掛け離れたものであることに気づき、
局長は話しを、管理局の仕事に沿ったものへと戻した。

「あなたが目覚めるとは、水質に異変でも?」
「いえ」
所々銀色に光る青い髪を揺らして、「清流」は言った。
「しかし、何か、異常を感じるのです」
「具合でも悪いのかな?」
冬眠期間に、「清流」が壊れてしまったのではないかと、
局長はひどく不安になった。

「いえ、彼女は正常です」
「運命」が局長の意図を組んで、先回りする。
「彼女が言いたいのは、人間で言うところの、勘のようなものでしょう」
「運命」の説明に、局長は慌てて手元のマニュアルを確認した。
そこにはざっとこのようなことが書かれていた。

データは過去の積み重ねでしかないために、
それのみで未来を推し量ることに限界が出てくる場合がある。
そうした場合を想定して、心の豊かなアンドロイドには自然の力、
精霊属性をつけ、予知夢という形で様々なパターンを想定させている。
彼女達、精霊アンドロイドが「何か」を予兆し目覚めることは、
人間で言うところに、経験上の推測や勘に似ている。
過去のデータからは得られない「何か」を、彼女達が感じ取っている場合、
局長は速やかに、その原因を彼女達に探る許可を与えること。
しかし……

局長はそこで蒼ざめた。
「清流」がにこりともしないで言う。
「データにならない不確かな予感を追い、調査の結果、
 それが惑星環境維持のためになんら意味のないものであった場合、
 アクションを起こしたキャラクターは責任を負い属性消去される……
 たいしたことではありません。素体に戻るだけですから」
局長はぞっとして画面の中の「清流」を見つめた。
「それは、あなたがあなたではなくなるということでは?」
「そうですが、それがなにか?」

アンドロイドは人とは違う心の構造を持っている。
彼女らに心を奪われ、同情したところで、
彼女らの心があまりにも人間のそれとは掛け離れているために、
そこにはなんの関係も成り立たないのだった。
「アンドロイドにサービス以上の、友情も愛情も求めてはならない」
大学の現代対話学でさんざん習った言葉が局長の頭をよぎる。

「わかった……」
頭で解っていても、心は従わないといった複雑な表情で、
局長は形ばかりうなずいた。
「いいだろう。清流、その予見の原因を突き止めなさい」
「はい」
「清流」が軽く頭を下げて後ずさりすると、
またもや声にならない光の騒めきが立ち昇った。
軽やかな足音がして、真っ赤なボディのアンドロイドが駆け込んでくる。
「まちなよ。あたしも夢を見たんだから」
「なんと、情熱までもが目覚めるとは?」
局長は蒼白になった。
火の属性を持つ精霊アンドロイド「情熱」は、やはり何かを感じて、
数百年以上もの長い眠りから目覚めてしまったのだった。

「精霊が二人も覚醒するとは、異常事態だ!」
局長は管理局本部へと緊急指示を仰いだ。
別画面で本部所属の銀色のアンドロイドオペレーターが指示を伝える。
「清流、情熱の2名をコンビとし、対象シティーに向かわせるように」
本部の判断は速やかだった。

自体を飲み込めず言葉に詰まった局長に、「情熱」が言う。
「予知夢のデータ、送っといたんだ。本部に。
 大きな街が破壊されてた。何者かによって。
 どう?すごくわかりやすい危険信号だろ?」
局長は「清流」を見た。
視線に気づいた「清流」は僅かに顎を引くことで、
自分の感じている異常が「情熱」の予知夢と重なる可能性がある事を、
局長に感じ取らせた。

「お前達にもしものことがあったらと思えば、行かせたくはないが。
 これもお役目。24時間以内に、夢の元を探り出すように」
「運命」が静かに言った。
局長の心情を察したのか、言葉にも顔にも、悲しみの色が現れている。
人とのコンタクト期間が長い、彼女だからこそ、
人間好みの感情表現を身に付けているだけかもしれないが。

「情熱」の操縦する深紅のエアバイクにまたがって、
二人は朝日の昇る、薄青い空へ飛びだして行った。
その姿はさながら、明けの女神と宵の女神のようであった。

その頃、
まだなんの特殊な能力も持ちあわせていなかった、
平凡な女子大生でしかないテニーは、
何かの刺激を求めて、新しく出来たデパート街を歩いていた。
植物園と水族館と動物園がごっちゃになったような、
エキゾチックな生鮮食品売り場はデパート最大のアピールポイントのようで、
とにかく試食をすすめられる。

同世代の女の子が、ウエストサイズのセンチメートル単位の増減で、
泣き笑いを繰り返しているのに対し、テニーはどちらかというと批判気味で、
食べる楽しみを優先させる女の子だったが、
クリクリ目の小羊が元気に走り回るその横で、
羊肉のデリシャスバーガーなどを手渡されても、
微妙に罪悪感を感じてしまうのだった。

(水族館と植物園は良いけど、動物園は勘弁して欲しいわ)
テニーはお腹の鳴りを押さえ込むように、前屈みになって、
足早に動物園&精肉エリアを通り抜けた。

すると視界に学校の教室ほどもある、大きなエレベーターが飛び込んでくる。
(わあ、硝子張り。上まで行ってみよう)
テニーは丁度到着したエレベーターに飛び乗った。

硝子張りの窓から見渡す街は美しかった。
上に上がる途中、エレベーターは何度も空中庭園に止る。
どうやら、5階、10階、など、
切りのいい階には空中庭園を設置しているようだった。
(おひさま、気持ち良さそう)
日なたぼっこをしてる親子の側に、
何故か猫の子ども達がじゃれているのを見て、テニーはちょっと蒼ざめる。
(まさか、まさかね)
精肉売り場は効果はどうあれ、強烈な印象をお客に擦り込んでいるようだ。

エレベーターがゆっくりと稼働する。
空中庭園からほんの1メートルほど上に動いたところで、
エレベーターはガクンと揺れて止ってしまった。
「どうしたんだ?」
「故障?」
そうは言うものの、人々の顔はにこにこと明るい。
新しいデパートの雰囲気に飲まれ、こんなアクシデントすら、
何か楽しいイベントみたいに思えてくるのだろう。

エレベーターガールの女性が深く頭を下げ、
澄んだ声で「しばらくおまちください」と言って、
外部と連絡を取りはじめた。
テニーはなんとなく、エレベーターガールの側に寄って、
その白く化粧した顔を見つめた。
(私と同じ歳くらいなのに、もう自立してるんだ)
テニーはてきぱきと対処するエレベーターガールを見、
未だ定まらない自分の未来の姿と比べ、軽い自己嫌悪に陥った。

(大学、やめたいな……)
若者にはよくある心の揺らぎだったが、テニーにとっては大きな問題だった。
(興味あることとか、才能の欠片とか、
 他の人と違うこと、少しでもあれば、進路を決めやすいのにな)
テニーは、報われる保証を求めて努力の幅を絞る人間ではなかったが、
若いというだけで闇雲に動き回るタイプでも無かったのだ。

テニーが物思いに沈んでいると、ほんの少し足下が揺れた気がした。
(たちくらみ?)
そう思った途端……
バリバリバリバリ!
雷のはじけるような轟音が轟き、エレベータは大きく揺れた。
テニーもバランスを崩し、エレベーターガールと共に壁に叩き付けられた。

大理石の床に亀裂が走り、足を取られた婦人が悲鳴を上げた。
「きゃあ!」
お祭り気分は一瞬で吹き飛んだ。
凄まじい破壊音を立てて床の亀裂は広がり、そこから、
ドロドロした液体状の何か……
大きなゾウリムシのようなものがあふれ出た。

重たそうな液体生物は、どろりどろりと音を立てて動いた。
「なに、なんなの?」
「やめて!」
「たすけて!」
人々は液体生物から逃れようと、壁際に折り重なった。

耳をつんざく悲鳴が重なり、異変に気づいた空中庭園の人々も、
液体の化物の動きに顔を強ばらせている。
何人かの人々が携帯電話を使い外部に連絡する。
エレベーターガールも管理センターに事態を報告し、
人々には液体に近づかないよう、震える声で指示を出した。
しかし……

液体生物は、体の一部を伸ばし、腕のように持ち上げると、
壁に向かって思いきり打ち降ろした。
空中庭園に面した硝子壁に蜘蛛の巣状のヒビが入る。
「きゃあ」
飛び散る硝子の粉から顔を背け、テニーは悲鳴をあげた。
エレベーター内は地獄のようだった。

瞬きする間に警察と消防隊が駆けつけ、
あっという間に庭園の人々を避難させ、バリケードを組んだ。
「特殊な銃を使いますので、頭を低くして下さい」という声に従い、
エレベーターに取り残されたテニー達は屈み込んだ。

ボスンという鈍い音がして、
ひび割れていた硝子壁は粉々に飛び散り、液体生物はひしゃげた。
ボトボトと液体の一部がしたたり落ちる。
束の間の沈黙に、テニーはそろりと頭を上げた。
ザッザという足音がして機動隊員達が隊列をなして駆け寄ってくる。
ギザギザに割れた硝子壁をプロテクターで覆われた腕で砕き落とし、
安全に人が通れるように処置を施すと、
「子どもさんから、こちらへ!」と叫んだ。

その力強い声に、人々は気を取り直した。
大人は立ち上がって、放心状態の子ども達の手を引き、
なだめたり叱り飛ばしたりしながら歩かせて機動隊員の元へ送り出した。
子供が避難したあとは、大人達が庭園へ下り立った。
テニーはエレベーターガールの女性が最後になるのを知り、
すぐに逃げたい気持ちを抑えた。

液体の化物がぴくりとも動かないため、
機動隊員達が2名、エレベーター内に踏み込み、
怪我人を優先して担ぎ出した。
最後にテニーとエレベーターガールが庭園へ降りようとすると、
機動隊員がそれぞれに手を差し出してくれた。
だが、その手を取る前に、彼らは倒れた。
いつの間にか、天井に張り付いていた液体生命の一部が、
隊員達の頭めがけて、腕を降り降ろしたのだった。
「きゃあ」

ガクンガクンと上下に激しい振動。
エレベーターはテニーとエレベーターガールの二人を乗せたまま、
凄まじい勢いで上昇を始めた。
「エレベーターの速さじゃない」
「止めろ、中にはまだ女性が二人残っている!」
「止めろ、止めるんだ!」
大声での指示が飛び交い、機動隊員達が発砲したが、
液体の化物はビクともせず、エレベーターの動きも止ることはなかった。

機動隊員達が蒼白な顔でエレベーターを見上げると、
真っ赤な炎の矢が一直線に空をよぎった。
「あれは?」
「通信です、精霊アンドロイドが出動しているそうです」
「彼女達か!」

「情熱」と「清流」を乗せた深紅のエアバイクは、
ハイスピードで暴走するエレベーターに突進した。
エレベーターに飛び乗った真っ赤なボディのアンドロイドの姿を見つめ、
テニーとエレベーターガールはほっとした。
「だいじょうぶ。安心しな」
アンドロイドであるはずなのに、「情熱」の顔には、
頼もしい表情が浮かんでいたのだった。

人間とのコミュニケーションのために与えられた豊かな表現能力は、
こうした危機的状況下において、最も有用に利用される。
「壁に寄ってな!」
「情熱」は腕を変形させながら叫んだ。
先ほどの表情で、すっかり「情熱」を信頼した
テニーとエレベーターガールは、即座に壁にぴったりと体を付けた。
間髪入れず「情熱」の腕が炎を噴射する。

激しい火炎に焼かれ、液体生物は黒く溶け出した。
のたうちまわる化物の留めを刺すため、炎はさらに熱を上げる。
「ああ」
あまりの熱気に肌がひりひりと傷みだす。
テニー達が顔を覆うと、いつの間にか側に立っていた、
真っ青なアンドロイド「清流」が、ふうっと息を吹きかけた。
たちまち粒子の細かい霧がかかり、二人を包み込む。

霧の向こうで、花火のような美しい炎がはじけ、液体の化物は倒れた。
テニーとエレベーターガールはエアバイクに乗せられ、
「情熱」と「清流」はバイクを支えるように、自力で飛んだ。
青空の中に、テニー達を乗せた赤いバイクと精霊アンドロイドの姿を見つけ、
人々は歓声を上げて、四人を迎えた。

劇的な救出劇に現場が混乱する最中、
テニーは初めて目にする精霊アンドロイドに心奪われていた。
「無事で良かった」
「情熱」が明るい笑顔でテニーとエレベーターガールにウインクした。
「精霊のあなた達が戦ったということは、あれは……」
エレベーターガールは震える声で言った。
「情熱」は顔色を少し変え身を引いたが、「清流」が変わりに答えていた。
「あれは、この星の外から来たものです」
「惑星外生命体……」

その日を境に、テニーは変わった。
精霊アンドロイド達が人類の生活圏で正式にアクションを起こすには、
ガイドと呼ばれる人間と、ある程度生活を共にするという制限がつくという。
星の環境保持を目的とする管理局だが、
既に人が生活圏として確立した地域においては特別に、
人間の生活自体が保護項目に追加される。

つまり、守るべき人間の生活を知るための、ガイドという存在である。

従って選ばれる人間は、多くの場合一般市民であるという。
ガイドの選出は精霊アンドロイドに一任される。

あの場にいた誰もが、それを望んだだろう。
彼女達に選ばれれば、自分は変わらなくとも、一瞬にして特別な存在になれるのだから。
テニーもそれを望んでいた。

だが選ばれたのはテニーではなく、あのエレベーターガールだった。
さんざん悔しがった揚げ句、テニーは目覚めた。
奇跡を願うだけの自分の滑稽さに。

窓を開けて、朝の空気を吸う。
テニーは、大きく深呼吸した。
世界の何処かで、
「情熱」と「清流」が惑星外モンスターと戦っているけれど、
それを感じることは出来ない。
また、平凡な一日がはじまる。

(でも……)
テニーは、青空を見上げて思った。
(でも、かまわない。私は見つけたんだもの)
大きな伸びをすると、階下で母の呼び声がした。
「テニー、あなた宛に、小包み来てるわよー!
 変なもの買ったんじゃないでしょうねー?」
「受け取っといて!それ、本だから」
「本?なんの本よー!」
しかめ面して、母親が宅急便を受け取っている。
「アンドロイド工学の基礎知識」
母親は小包みを取り落とし、まあ、まあと顔をほころばせた。
「あの子もやりたいこと、見つかったんだねえ」



これも随分前に見た夢になります。
テニーという名前は書き起こす際に、付け直したものです。

私の視点は、ほぼテニーの視点でした。
アンドロイド達を追いかける時だけ、誰でもない視点になっていました。
大勢の素体アンドロイドが働いている船内は物凄く広くて、
人がアリのようなスケールでした。

素体の彼女達は真っ白で透けるようで、
体は小柄で、身長は140センチくらいの感じがしました。
「運命」「情熱」「清流」の三名は、もう少し大柄で、
170センチくらいはあったんじゃないかと思います。
「清流」はもしかしたら別の名前だったかもしれません。
漢字で、「流」という字が入っていたような気がするのですが……
夢の中の台詞を、音で聞いて覚えているのか、
目で文字を読んで覚えているのか、その辺も微妙です。
私の場合、時々、漫画の吹き出しを読んでいるような感覚があったりします。
こうした曖昧さも夢ならではですね。

「情熱」はちょっと不良っぽい女性アンドロイド。
問題児ではあるけれど、素体達の人気は一番高いみたいです。
「清流」はお姉さんのような存在で、
色つきのアンドロイド「カラー」の中でも、最も優秀です。
「運命」は女神様みたいな感じでした。

ドラマチックなのは、エレベーターガールの方でしょうけれど、
ここでは、主人公を視点を借りる事の多かったテニーの方に据えています。
彼女の物語はこれからはじまるようです。
アンドロイドの開発に携わることを夢見ているのかもしれませんね。
夢に出てきて元気な姿を見せて欲しいです。

今宵も素敵な夢が訪れますように。
続きの夢を見れればまた……



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