| [11] 歪む空 03/01/20(Mon) |
- 匿名 - 2016年05月28日 (土) 08時54分
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| [12] 歪む空 03/01/20(Mon) |
- 匿名 - 2016年05月28日 (土) 08時55分
歪む空 03/01/20(Mon) 荒 れはてた岩山に隠れるようにそのキャンプはあった。 異形の者達の侵略によって多くの街が壊滅されてしまった。 異形の者達は金属でできた、ねじれた人形のような姿をしていた。 そして、彼らには知能も心も無かった。 食欲旺盛な化物。それが異形の者達の姿だった。 宇宙より訪れたこの化物に、人は一方的に食われるばかりであったのだ。
生き残った人類はわずかだった。 生きている都市は地下都市のみであり、それもごくわずかだった。
地下都市に住むことを許された者、「都人」達は、 安全な防御地層の中、昔ながらの平穏な暮らしを続けていた。 太陽の無い地下に住む、彼ら都人の生命線は、広大な地下農園。 この農園があるからこそ、彼らは外に出ずとも暮らしていける。
しかし都人となり、地下都市への入居を許される者は、ごく一握りであった。 多くの人類は荒れ果てた大地に放り出され、 異形の者達に脅え、肩を寄せ合い、細々と生きていた。 彼らは「野人」と呼ばれた。
岩山の野人のキャンプを一人の女が訪れた。 このキャンプが客を迎えるのは一年ぶりだった。 異形の者達の執拗な攻撃によって、どこのキャンプも孤立していた。
大方の予想通り、岩山のキャンプを訪れた女はハンターだった。 ハンターとは荒野で食料となる獣達を狩る者の事だ。
生き続けるためには、荒野での食料調達は欠かせない。 防御壁の中の都人達には、豊かな地下農園や地下牧場があるが、 野人に許されているのは、この荒れ果て、ただれた大地だけだった。
どのキャンプも優秀なハンターの育成には力を注いでいる。 野人の世界では、ハンターは最も貴い職業だった。 岩山のキャンプは、女ハンターの腕を見たがった。
荒野に出て男達と岩蜥蜴を狙う。 女ハンターは獣の道を熟知していた。 その日は大漁であった。
優秀なハンターである彼女を、 このままキャンプに留めるように多くの者達が望んだ。 その声はキャンプの指導者であるヘッドを動かした。
「あんた、このキャンプに居着いては貰えんかね?」 「断る。私はひとつ所にはいられない身だ」 「だろうと思ったよ……」
男はわかっているという風に瞳を伏せた。
「あんたほどの腕なら、どこのキャンプでも手放したがらなかったろう。 でもそりゃあ、普通のハンターならばの話しだ」
女は何も言わなかった。
「他の者に気づかれないように、発ちなさい」
男は、日もちするように焼きしめたパンと干した肉とを女に持たせた。 女ハンターは早朝には姿を消していた。
「待ちな!」 どすの聞いた声で呼び止められ、女は立ち止まった。 岩山のキャンプから大分離れた、ひび割れた岩の転がる荒れ地だった。 6、7人の男が、女を取り囲んでいた。
「なんでヘッドの誘いを断った?」 「俺達のキャンプに不満があるのか?」 男達の問い掛けに女は答えた。 「不満はない。私は他のキャンプの誘いも断っている」 女はそれだけ言うと、何事もなかったかのように歩き出した。
「待てよ!」 「俺達にはあんたみたいな腕のいいハンターが必要なんだ」 「半年前、異形の者達にやられて ベテランハンターの半分が殺されちまったんだ」 「頼む! キャンプに居着いてくれ!」
「どこも事情は同じだ。私を引き止める理由にはならん」
女が歩みを止めないのを見ると、男達は顔を歪めた。
「少しばかり怪我させてでも!」 「あんたにはキャンプにいてもらう!」 男達はソードを抜き払い女に斬りかかった。 女のマントが風に舞う落ち葉のようにひらひら踊る。 女が体を優雅に回すだけで、男達のソードは全てかわされていた。
青空を切り裂くように、サイレンが鳴り響いた。 無人の見張り台からの異形の者達の襲来を告げる警告音である。
金属光沢を持つ青黒い影の一群が、硬直する男達の視界に入った。 「や、やつらだ!」 男達の顔が凍りついた。 「キャンプの場所を知られちゃならん!」 「バラバラになって逃げろ!」
男達の動きにあわせ、異形の者達も数体ずつのグループに分かれる。 恐ろしい狩りの時間がはじまる。
男達は逃げた。 岩場を飛び越え、砂を蹴り、全力で走った。 しかし、異形の者達は確実に男達を追いつめた。 気づけば、バラバラに逃げたはずの男達は1ヶ所で 身を寄せあって震えていた。
間近に迫る、黒光りする一回り大きい身体。 目も口も鼻も無い、のっぺりとした不気味な顔。 鋭く尖った手足。
異形の者の冷たい手が男の身体を持ち上げた。 「ひっ!」 男は泡を吹いて失神した。
「気を失えるなら失った方がいい」 女ハンターの声だった。 「生きながらやつらに吸収されるのは辛いだろう」 男達は気を失った。
彼らが捜索隊に見つかった時、回りには何も無かった。 異形の者達の姿も、屍も、そして女ハンターの姿も。 全員の無事な姿を見て、ヘッドは涙ぐんだ。 「よかった、よかった……」
次の目的地へ、女は歩いていた。 計ったように正確な足取りであった。 砂漠を越え、渇いた川底を渡る。 ひらけた台地の上に立つと、彼女は彼方を見た。 青い空の上に、陽炎のように揺らぐ大都市があった。
生い茂る深い緑に、そびえ立つ高層ビル。掛かる色硝子の橋。 それこそが異形の者達の手を免れた、唯一の都市。 破壊されていない、この星最後の地上の楽園。 人類の最後の希望、オアシスだった。 オアシスの中に、無数の黒い人影が蠢く。 金属のような冷たい煌めき。 女は蜃気楼に浮かぶ幻の都市を見つめ、歯を食いしばった。
「必ず、たどり着いてやる……」
このオアシスの奪回こそ、彼女達、異形の者達と戦える力を持つ、 作られた者達「使人」の使命であった。 地下都市が荒野に放った希望の矢のひとつが、 今、ゆっくりと希望の扉へ手をかけようとしていた。 空に浮かぶ蜃気楼は消えたが、女の胸の中には消えることの無い深い憎悪が、 作られた悪しき感情の塊がたぎっていた。
この夢の中で、私は大剣を携えた女狩人でした。 彼女は冷静で、意志の強い人だったように感じました。 彼女は、この後ある地下都市のひとつに雇われ、都人の座を得ます。 安全といわれている地下都市にも多くの問題があるようでした。 一番の問題は食料。地下農園の収穫は年々落ち込んでいるのです。 そこで地下都市は彼女を雇い入れて、 外の世界の土や生命を地下へ持ち帰るように依頼します。
この後も少しお話は続いたのですが、はっきりと思い出せません。 たしか小さな男の子が出て来たと思うのですが…… 都人と野人の区別なく、人々が再び共に暮らせる日が来ると良いのですが。 その時が来たら、役目を終えた女狩人さんはどうなるのでしょう? 彼女の戦いが幸せな形で終ることを願って……
今夜も素敵な夢が見れますように。 続きの夢を見れればまた……

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