| [364] 〜リズール〜 |
- 月宮 リオ - 2007年03月18日 (日) 12時55分
〜プロローグ 記憶〜 続きです。
「わぁ・・・」 たったそれだけのことなのに、リズは胸を締め付けられるような 苦しい、不思議な気持ちになった。 大きく 高く 体中に鼓動が響き渡る。 「兄様・・・これは一体・・・体中に鼓動が響くこの感覚は 一体何なのですか?この木は・・・」 初めての感覚に、リズの瞳には今にも零れ落ちてしまいそうな ほどの涙がたまっていた。 すると、リジがリズの頭に軽く手をのせ、 「俺もな、初めてここに連れてきてもらったとき、泣きそうになった・・・。」 「・・・連れてきてもっらというのは・・・?」 リズが不思議そうに首をかしげる。 木を見つめ、りジは静かに流れるように話し始めた。 「『この木は、もう100億年近くこの場に根はって、生きてるんだ・・・。今度、生まれてくる子にはリジが連れてきてあげるんだぞ』昔、俺は父様に連れてきてもらったんだ。 今言ったことも父様が言った。 『今度生まれる子』それはリズのことだ。 だから今日、リズを連れてきた。」 リジの瞳は優しくゆれていた。 「こっちにおいで、リズ。」 リズの手を引き、ふわりと木の前に舞い降りる。 そっと木に触れてみる。 「兄様、この木の名は何ですか?」 「今、100億年近いって言ったけど、この木、全然そんな風に 見えないだろ?」 「そう言われてみると・・・そうですね。 たっても1000年くらいにしか・・・。」 2人の言うとおり木はしっかりと大地に根をはり、幹もしっかりとして、葉っぱも青々として生き生きしていた。 とても、そんなに時間のたった木には見えなかった。 リジはそっと木に触れる。 「−ミステリー」 優しく、木をなでながらそう呟いた。 「え・・・?」 突然そう言われ何のことだか分からなかったリズは聞き返す。 リズを見て微笑むと再びリズの頭をなでた。 「この木の名だ。ミステリの意味は神秘・・・。 不思議という意味もあるかな。」 リズも木に触れ、そのまま体を摺り寄せる様に耳を木にあてた。 「ミステリ・・ぴったりの名ですね・・・兄様。」 「あぁ・・・。」 目を閉じ、静かに呼吸だけをする。 すると、木の中から水の音がした。 「水の音・・・心地良い・・・。」 胸と水の音が重なる。 段々、まるで母の胸にうもれるような感覚になるリズ。 この木の側はとにかく落ち着く、気持ちの良い場所だと思った。 「兄様・・・私・・・この木が好きです。まるで母様のよう」 「あぁ、そうだな。俺も思った、初めてきたとき・・・。」 目を開けるとリジが優しく微笑む。 瞳に熱いものが込み上げてくる。 リジは、眩しそうに目を細めて木を見上げていた。 「兄様・・・。」 「ん?何・・・っておわ!リズ!?え?何?どうした!?」 振り向いたとたんリジはリズの顔を見て焦る。 リズは泣いていた。 自分が泣かせたのかとオロオロとする。 「兄様。リズは何故泣いているのでしょうか。自然に涙が・・・ 零れるのです・・・。」 ポロポロと涙を零すリズにリジは、優しく微笑んだ。 「リズ・・・帰ろう。父様と母様が心配する。」 涙を拭き取り、リズも優しく微笑み返した。 「はい・・・兄様。」 手をつなぎながら2人は自分達の家、トゥルース城へ向かった。 2人は『トゥルース・エンゼル』の王子と姫君。 つまり、一国というか天界の王子と姫君なのだ。 普通なら2人だけで外に出るのは危険なことで禁止されている。 なのに、こっそり抜け出してきたのだ。 なんともわんぱく・・・いや、元気の良い兄妹だ。
2人は笑い合いながら、城へと飛んでいった。
〜プロローグ 記憶〜

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