『秋冬』は1984年さまざまな歌手による競作として歌われヒットした曲です。一番売れたのは「高田みづえ」のレコードですが、今でもNHKの歌謡番組などで時々歌われる。それを聞くたびに演歌歌手のだらしなさに嫌気がさします。高田みづえは歌詞で「心のみずも」と歌っているが、そのような日本語は存在しません。「みずも」は「水面」、「心の水面」のことですが、それは「心のみなも」が正しいのであって、「みずも」などという日本語は存在しないのです。日本語変換ソフト、たとえば「IME」や「ATOK」で「MIZUMO」と入力し変換キーを押してみればすぐわかることです。「国語辞書」で確かめれば確実です。私が聞いた限り、ポット出の新人歌手から大ベテランの島倉千代子まですべての歌手が「みずも」と歌っていた。残念ながら森昌子、石川さゆりも間違って歌っていました。
「演歌は日本の心」と演歌歌手たちはよく言うが「みなも」という美しい日本語はそのうちだらしない歌手達によってほおむり去られるかもしれません。
この曲の作詞者中山丈二さんはこの曲がヒットした時にはすでに亡くなられていました(享年36歳)。もし生きておられれば高田みづえが「心のみずも」と歌い続けることもなかったのだが---。中山さんが36歳という若さで急逝されたために日本の歌手達のだらしない実態がはからずも暴露されたわけです。
演歌歌手が例えばNHKから『秋冬』を歌って欲しいと要請されたときどうするか、プロ歌手ならまず、楽譜を読んで確かめるのがあたりまえなのだが、歌手達はただひたすら高田みづえの歌を丸暗記しそれを歌うだけ---。演歌歌手のほとんどは楽譜が読めません。楽譜を読む勉強をしようという意欲さえない。中学生がコーラス部やブラスバンド部に入れば必然的に楽譜を読む練習をし、そして読めるようになる、小学生でさえ同じです。
私は別に演歌に恨み、つらみがあるわけではないのだがどうしても好きにはなれない。そのうえにこのようなだらしない実態を知るにつけますます演歌嫌いになります。
今、演歌がどういう位置にあるかはレコード店に入ればすぐにわかります。演歌は店のもっとも目立たない片隅の棚に置かれ、しかもその棚の面積は年毎に狭くなっている。
藤十郎さんは今中学3年生だそうです。演歌歌手にとってはありがたい存在です。藤十郎さんのいうことなら森昌子も石川さゆりも耳を傾けると思います。二人を叱咤し、プロ歌手としての自覚を持つよう励まして欲しいと思います。