| [20] 遊園地にて |
おお振り - 2012年10月05日 (金) 20時15分
久しぶりのデートは、オーソドックスに遊園地。 評判も上々なソコでひとしきり楽しんで、さあ次は何で遊ぼっか、それともちょっと一休みする?なんて話をしてた矢先。 たまたま偶然目に入ったアトラクションに、俺の足が止まった。 「……ね、巣山。アレなんかどうかな」 視線の先には、 「──納涼、ってか?」 お化け屋敷。 そーいや阿部に聞いたけど、ここのお化け屋敷は結構スゴい、らしい。 カップルでここに来て、彼女にいいとこ見せようなんて思った男子が逆に腰抜かしちゃったりして、彼女がそれ見て幻滅したとかって事もあるくらい、らしい。 阿部と三橋はどうだったんだろ。 三橋ってお化けダメなのかな。ビビりだもんなー。何にでもビビってるもんなー。でもアイツ、ゴキブリ平気だしな…。色んなもんにビビってる分、お化けとかは平気だったりして。 「まー、確かにあっちーけど」 顔を滴り落ちていく汗を拭って、巣山がうーんと考え込む。 ただ単に汗を拭いてるだけなのに、何でこんなかっこいいんだろう巣山って。着てるもんもオシャレだしさ。でも着慣れてる感じするんだよね。カッコイイよね。 あ!そうだ。今度、俺の服も巣山に見立てて貰っちゃお!次の次くらいのデートはそれでもいいな。 「ヘタに順番待ちしてるよりか、涼しいかもな」 「うん」 「けど、大丈夫なん?ここ、結構怖いって聞いたぞ?」 おまえ怖がりじゃん、なんて、心配そうな目がこっちを見る。 そうなんだよねー。俺、お化けとかもダメなんだよねー。興味はあるけど、こんなトコ入ったら絶対夢でうなされる。自信ある。 けど。 「ひとりじゃないもん。大丈夫!」 うん、と頷いた。 だって、今日のお化け屋敷には、傍に巣山がいるんだもん。 今夜の夢に見てうなされても、そしたら一緒にいてくれた巣山も思い出せばいい。巣山は俺を置いていっちゃうような冷血漢じゃないかんね! 「じゃ、行ってみっか」 さんさんと照りつける太陽の光に目を細めて、巣山が歩き出す。巣山に見とれてちょっとだけ遅れちゃった俺は、慌てて巣山の隣に陣取った。 「──ね、ね、巣山」 「ん?」 「中入ったらさ、手、つないでいい?」 冗談めかして、顔の高さまで挙げた手を握ったり開いたりしながら聞いてみる。そういうの、巣山は怒らないけど、でもいきなりやって、もし驚いた巣山が弾みで手を払ったりしたら、それは面白くないからさ。 巣山は、ちょっとだけ顔を赤くして、 「っつか、中で俺がビビっても、お前笑うなよ」 「笑わないよー!っつかそんな余裕ないよ多分!」 「だったらいーけど」 「よし!じゃあそんな事にならないように、俺、ぎゅってしてる!」 「……そっか」 どこか安心したみたいに微笑った巣山を間近で見て、思わず足元がよろめいた俺を、巣山はがっちり支えてくれた。
ああもう何ていい男!

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