この、陰惨な状況はなんなのだろう? と唖然としました。
これが本当に、21世紀を迎えた、国連の常任理事国の一員たる国が行っている政策なのか? と、愕然としました。
人間の根幹を蹂躙する弾圧そのものとしか、言い様がありません。
これでは、手枷足枷をつけられた状態で、どんな暴力の下にも彫像のように立つ事と、中国が発する言葉をオウム返しのように繰り返す事のみを要求しているようなものではないか……と思います。
それを拒否した者は即逮捕の後、裁判とすら呼べない手続きをへて、容赦のない刑罰、拷問を受け、最悪は処刑される。
これを読んでいる間中、あまりの惨状に、時折これを現実ととらえる事すら拒絶しそうになりました。
なぜならば、今まさにこの瞬間さえも、チベットではこの惨劇が起こり続けているからです。
そして巻末の、解説として酒井信彦さんの「その後のチベットと日本の対応」、初版と改訂版の訳者あとがきは、非常に考えさせられるものでした。
今現在におけるチベットの厳しい状況と、これに冷淡に対応し続けた日本の報道機関の姿勢を厳しく問い、さらには1990年以降の、チベット問題に関連する世界情勢が記されています。
注釈および参考文献の紹介だけでも19ページあり、それらのほとんどは英語の本なので……ちょっと……自分で確認はできないですが、とりあえず、この本の中にあった犠牲者の数や弾圧の実状などは、誇張や嘘のない真実のものである……と信じて良いのではないかと、私は感じています。