| 書評 『日本人を狂わせた洗脳工作 ─ いまなお続く占領軍の心理作戦 ─』 (3414) |
- 日時:2016年09月09日 (金) 08時53分
名前:童子
『日本人を狂わせた洗脳工作 ─ いまなお続く占領軍の心理作戦 ─』 関 野 通 夫 著 定価500円 自由社 ブックレット
天皇陛下は年頭の御言葉の中で、「本年が終戦から70年の節目の年であり、戦争の歴史を十分に学び、今後の日本のあり方を考えていくことが大切であり、私どもに課せられた義務であり、後に来る時代への責任である」 とお述べになった。
この御感想から始まり、70年総理大臣談話や憲法改正の事案がマスコミを賑はせてゐる。 歴史を見直す書籍も陸続として刊行されてをり、本書もその中の一冊である。 刺激的な書名であるが、上梓に至る経緯を辿ると、的確な書名であることがわかる。
現在もわが国に敵意を示す国があり、反日侮日の言動を弄(ろう)してゐることは理解できるにしても、同胞である日本人が、何故に今もなほ、自国を貶(おとし)めることを国の内外で行ってゐるのか、その根源を探求することであったと、著者は述べてゐる。
その諸悪の根源として本書で取り上げたのが、連合国軍総司令部 (GHQ) が、占領国・日本で施した 「ウオー・ギルト・インフォメイション・プログラム (War Guilt Information Program 略してWGIP) である。
これがどのやうな内容であり、どのやうに実行されたが、簡潔に纏められてゐる。
結果的には戦後の日本人の思考に重大な影響を与へ、現在も清算出来ず 「後に来る時代への責任」 も果してゐない今日の状況を憂慮し、「一刻も早くお届けすべきだと判断」 (「あとがき」) して、上梓したといふ。
WGIPが、どれほど日本の歴史、文化、価値観、立場を否定し、事実を曲げて教育してきたかを改めて考へる上で、時宜を得た刊行である。
このWGIPなるものの文書を剔(てき)出(しゆつ)した 文芸評論家・江藤 淳氏の著書 『閉ざされた言語空間』 (平成元年刊) では、WGIPを 「戦争についての罪悪感を日本人に植えつけるための宣伝計画」 と名付けてゐる。
著者は、江藤が取り上げたWGIPの存在を否定するかのやうな電子百科辞書の記述に疑問を抱き、探索の末に証拠文書を確認してゐる。 自動車メーカー製造技術者 (元ホンダアメリカ現地法人社長) の経歴を有し、事実をもとに物事を思考する著者の本領が発揮されて、「客観的証拠」 としての事実 (WGIP原資料の存在) を公開した功績は大きい。
本書でも触れられてゐるが、日本の左翼・反日派に共通する 「結論を導くのに使った情報 (証拠) の検証を行わない」 等のやり方の対極に位置するものである。
GHQが、終戦直後の昭和20年9月に先づ新聞に対して開始した 「検閲」、及び昭和21年5月3日に開廷された極東国際軍事裁判 (所謂東京裁判) に焦点を合せた本書では、慎重にしかも隠微に手順を踏んで実施された 「WGIP」 により、日本人がどのやうに洗脳されていったかが分りやすく示されてゐる。
これらの詳細は本書に譲るとして、一例を挙げれば、検閲を忠実に実行した 「朝日新聞」 への指令内容も明らかにされてゐる (因みに東京裁判における東條元首相の陳述に関する 「天声人語」 を、江藤は 「奴隷の言葉」 と評してゐる)。
昭和27年4月28日の独立回復 (講和条約発効) 以後も、GHQが起草した現憲法を始め、検閲と東京裁判の内容を、我われ自身の責任で見直し清算してゐない実態の根源を示してゐる書でもある。
WGIPの文書発掘については、同じ著者による 『正論』 5月号の論文も参照されるとよい。
GHQによる日本文化伝統の破壊工作や共産主義思想に覆はれた当時の思想的状況に挑戦し、東京裁判の不当性、無効性を訴へ続けた 竹山道雄氏 の著書 『昭和の精神史』 (昭和31年刊) 及び前述の 『閉ざされた言語空間』 との併読をお勧めしたい。
『昭和の精神史』 は講談社学術文庫に、『閉ざされた言語空間』 は文春文庫に入ってゐる。
(元川崎重工業(株) 山 本 博 資)
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