| 作為的、恣意的に論点整理 - 「女性宮家」こそ違憲の疑い濃厚 (3402) |
- 日時:2016年09月07日 (水) 20時08分
名前:童子
平成24年10月10日 『産経新聞』正論
日本大学教授 百 地 章
いわゆる 「女性宮家」 の創設については、2月以来、6回にわたって行われた有識者ヒアリングでも賛否両論が拮抗(きっこう)しており、新聞各紙でも 「2案併記」、落とし所は 「尊称案」 などといった報道が繰り返されてきた。
事実、ヒアリングに呼ばれた12人のうち、「女性宮家」 賛成は8人で反対が4人、一方、「尊称案」 は筆者を含め賛成が7人で反対はわずか1人であった。
■ 作為的、恣意的に論点整理
ところが10月5日、内閣官房は突然 「尊称案」 を否定し、「女性宮家案」 を中心に検討を進めるべきだとする 「論点整理」 を発表した。 背景に何があったのか。
推測の域を出ないが、「女性宮家」 を支持してきた羽毛田信吾前宮内庁長官や風岡典之現長官ら宮内庁幹部、それに園部逸夫内閣官房参与ら女系天皇推進派と、内容はともあれ、成果を挙げたい官僚らとの結託の結果であることは、まず間違いあるまい。
「皇室制度に関する有識者ヒアリングを踏まえた論点整理」 と題する全文81ページの報告書は、極めて作為的・恣意(しい)的なものである。
報道関係者向けに配布された 「論点整理 (概要)」 では、A4判のわずか2ページの取りまとめの中で、「尊称案」 は 「付与は困難」 「実施困難」 と、理由も示されないまま重ねて否定されている。 それに代わって突然、「国家公務員案」 なるものが登場した。
他方、「女性宮家案」 に対しては、ヒアリングの中で 「男系で継承されてきた皇統の危機に備えるのが宮家であって、『女性宮家』 など意味がない」、「歴史上一度も存在したことがなく、女性皇族の結婚を機に、皇室の中に突然、民間人男性が入り込んでくる危険極まりない制度である」 などといった厳しい批判があった。
さらに 「女性宮家案」 のうち、「民間人男子配偶者と子にまで皇族の身分を付与する案(I-A案)」 には、「女系皇族を容認するもので、憲法違反の女系天皇に繋がる危険がある」 との批判が、「男子配偶者や子には皇族の身分を付与しない案 (I-B案)」 に対しては、「1つの家族でありながら、夫婦や親子の間で、『姓』 も 『戸籍』 も 『家計費』 も異なる奇妙な家族となってしまうことへの疑問」 などの重大な欠陥が指摘された。
にもかかわらず、「論点整理」 では 「更なる検討が必要」 と述べただけである。
「論点整理」 では、旧皇室典範44条に倣い、女子皇族が結婚して民間人となられた後も 「内親王」 「女王」 などの尊称を保持する 「尊称案」 について、一種の身分制度であり、そのような特別待遇を施すことは、法の下の平等を定めた憲法14条との関係において疑義を生じかねないとしている。
■ 伊藤博文の 『皇室典範義解』
しかしながら、「尊称」 はあくまで 「称号」 であって、身分を示すものではない。 このことは 伊藤博文著 『皇室典範義解』 の中で述べられており、筆者もヒアリングではっきり指摘した。
にもかかわらず、論点整理では強引に違憲と決めつけたわけだが、それを言うなら、歴史上まったく例のない 「女性宮家」 こそ、新たな 「身分制度」 の創設に当たり、はるかに憲法違反の疑いが濃厚となる。
実は、このほど、筆者の尊敬する元最高裁長官の方から 「メモ」 を頂戴した。 旅先からの走り書きであったが、「男子皇族が宮家として特別扱いされるのは、皇位継承にかかわるからであって、皇位継承と無関係な女性宮家は法の下の平等に反する」 「尊称すら許されないというのに、なぜ女性宮家が許されるのか」 とあった。
けだし至言である。 憲法第2条の 「皇位の世襲」 が 「男系継承」 を意味することは、憲法制定以来の政府見解であり、皇位継承権者たる男子皇族に対し、「宮家」 という特別の身分を付与することは憲法の予定するところである。
しかし、皇位継承権を持たない女子皇族に対して、結婚後も 「女性宮家」 なる特別の身分を与えることは、「華族その他の貴族の制度」 を禁止した憲法14条2項に違反するといえよう。
■ 旧宮家の男系男子孫を皇族に
ヒアリングでは、「皇族数の減少にいかに対処すべきか」 「皇室のご活動をいかにして維持すべきか」 の2点のみが問われ、「皇位継承権者をいかに確保すべきか」 という最も肝心な点については敢えて触れないものとされた。 露骨な 「旧宮家」 外しである。
皇族数の減少に対処し、将来、悠仁親王が即位される頃にお支えできる宮家を創設して皇室のご活動を維持するとともに、皇位の安定的継承を確保する方法は1つしかない。
いうまでもなく、連合国軍総司令部 (GHQ) の圧力で無理矢理、臣籍降下させられた旧宮家の男系男子孫のうち相応(ふさわ)しい方々を 「皇族」 として迎えることである。
にもかかわらず、敢えてその選択肢を排除し、強引に 「女性宮家」 を創設しようとする女系天皇推進派の皇室破壊の企てを何としても阻止しなければならない。
まさに 「皇室の危機」 である。

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