| 尖閣も原爆も、中国は「五輪の裏で密かに動く」 ― なぜ沈黙する翁長沖縄知事 (3279) |
- 日時:2016年08月19日 (金) 15時15分
名前:童子
現代ビジネス 8月19日(金)7時1分配信
ドイツから日本に告ぐ。 尖閣も原爆も、中国は「五輪の裏で密かに動く」ことを忘れるなかれ
川口マーン惠美
■ 今、そこにある危機
7月12日、オランダのデン・ハーグの国際仲裁裁判所は、南シナ海で中国が主張している領海には根拠がないという結論を出した。 国連海洋条約に基づいて行われた司法判断である。
裁判所は、中国が作っている人工島も「島」とは認めなかったし、スカボロー礁周辺などで、中国がフィリピン漁船を妨害したり、攻撃したりしていたのも、国際法違反だとした。
ドイツでもこのニュースはちゃんと報じられた。 地図で示された中国が主張しているという境界線はあまりにも不自然だったので、それを見たドイツ人も「あれ?」と思った。 ただ、そのあとの中国の動きをフォローしたメディアは少なかった。 だから中国が判決を紙くず呼ばわりしたこともドイツ人は知らない。
ある日刊地方紙のネット版が、「中国に圧力をかけるのは逆効果」 というタイトルで、「大国は国際判決を無視するものだ、アメリカだって……」 といったかなり偏向した寄稿文を載せていたが、これは例外だ。 ほとんどのメディアは「その後」を報じていない。
しかし、それは当然でもある。 ドイツは南シナ海から遥か遠いし、中国が何をしようが安全保障上の懸念は少ない。 だから私は、「日本人もアフリカのマリの紛争には興味がないし」 などと思ったのだが、実はこれが大間違いだった。 日本人は、日本にとって重要なはずのニュースにも、なぜかあまり反応していない。
今、尖閣諸島に中国船が押しかけている。 勘違いしている人がいると困るので解説すると、尖閣諸島は日本の領土だ。 中国が領有を主張し始めたのは、外務省のホームページによれば、「1968年、周辺海域に石油資源が埋蔵されている可能性が指摘されたあと」 である。
国際法では、陸から12海里(約22km)の領海が、その沿岸国の主権下にある。 そこからさらに12海里が接続水域で、船の航行は自由だが、出入国管理、通関、衛生上などのさまざまな規制についての権限は、やはり沿岸国が持つ。 そのあと排他的経済水域というのが続き、その向こうが公海となる。
■ 200隻もの中国船が日本の接続水域に
今年の6月ごろから尖閣付近での中国の空海軍の活動が激しくなった。 そして、6月9日、海軍のフリゲート船が尖閣付近の接続水域に侵入した。
同15日には、海軍の情報収集艦が口永良部島の領海を、その翌日にもやはり情報収集艦が北大東島の接続水域に侵入した。 これまで中国海警局の船が侵入したことはたびたびあったが、軍艦となると明らかに次元が違った。
以来、その規模はどんどん拡大し、8月にはほぼ毎日、200隻もの中国船が日本の接続水域にいる。
船団の中心には軍艦がいて、それを海警局の船が取り囲み、一番外側に漁船がたくさんいる。 漁船といっても、もちろんただの漁船ではない。 漁師を装った民兵が乗っている。 また、海警局の船の多くは機関砲を積んでいることも確認されている。
要するに、武装した外国の船団が、日本のすぐ近くまで入り込んできているのだ。 中国が尖閣周辺で盛んに威嚇行動を始めたのは2008年頃だが、今回ほど大胆であからさまなことはかつてなかった。 侵略行為としての第一線はすでに超えている。
日本人はのんきにオリンピックを見ている場合ではないのではないか。 思えば、中国の初の原爆実験は1964年10月、やはり日本人が東京オリンピックに夢中になっていた時だった。 こうなるとオリンピックは国難の元なのかもしれない。
土地というのは、いくら地図に記載があり、歴史的経緯があり、それを見れば誰の領土かが一目瞭然であっても、最終的には住んだ人の物になる。 実効支配である。他人の住んでいる土地の領有権を主張しても相手にはされない。 北方領土や竹島では、領有を主張する国の首相が早々にやってきて、実効支配を世界に印象付けた。
これらを取り戻すにはおそらく戦争をしなければならないが、どこの国も戦争などおいそれとはできない。 だから結局は泣き寝入りでおしまいということになる。 ドイツもこうして、戦後、固有の領土を失った。 北方領土と竹島も同じで、日本は (おそらく) もう取り戻せないだろう。
■ なぜ翁長知事は沈黙し続けるのか
尖閣諸島がその二の舞にならないよう、領海でプレゼンスを示すことを目的に、2011年7月より、「頑張れ日本! 全国行動委員会」 が石垣島の漁師さんたちとともに尖閣の周辺で漁業活動をしていた。 尖閣は良い漁場だった。 石垣島だけでなく、鹿児島などの漁師たちも、何十年もここでハマダイやマグロなど高級魚をとっていたのだ。
私も2012年6月、漁師見習いとして、「頑張れ日本!」 の船で尖閣に行ったことがある (http://gendai.ismedia.jp/articles/-/32950)。 その時は台湾船がすぐ近くまで迫ったが、しかし、まだ今ほど騒然としていたわけではない。
状況が変わったのはそのすぐ後で、日本の漁船の目の前に堂々と中国船が来るようになった。 1千トンクラスの中国公船が日本の漁船を威嚇した。 海域はだんだん危険になり、そのうち廃業、休業に追い込まれる漁船も出てきた。
しかし、終始一貫、海上保安庁は中国船を追い返すわけでもなし、拿捕するわけでもなし、反対に漁をする日本の漁船の前で通せんぼをした。 彼らは上からの命令なしには動けない。 そうするうちに、漁師以外の人間には出航の許可が出なくなった。 日本の領海なのに、日本人は尖閣諸島に近づくことさえできなくなってしまった。
ちなみに、この頃、尖閣周辺ではサンゴ密漁も行われていた。 誰も文句を言わないのでとり放題で、12年から13年にかけてこの付近のサンゴは取り尽くされたという。
いずれにしても、当時も今も、日本政府はことを荒立てないことを国是としている。 中国が出てくるのは、「頑張れ日本!」 が挑発するからだという人も、当時はいた。 中国人は悪くない。 彼らを怒らせる日本人が悪かった、と。
この2年ほど、「頑張れ日本!」 の漁業活動はできなくなった。 つまり、“挑発” はしていない。 では、中国船がいなくなったかというと、その反対で、すでに尖閣周辺には中国船しかいない。 日本の領海に日本人は入れないが、中国人は我が物顔で動き回っている。 石垣の漁師が言う、「あそこは中国だよ」と。 今は、軍艦までいるのだ。
おかしいのは沖縄の大手新聞 「沖縄タイムス」 で、中国船の領海侵入を主要記事に入れない。 16日、外務省が尖閣周辺の中国船の様子を撮影したビデオを公開したが、それも1面には載っていない。
さらに不思議なことに、沖縄県下で侵略まがいのことが起こっているのを、肝心の翁長知事は知らないらしい。 抗議声明は一切なく、8月17日の時点でも沈黙が続いている。
考えてもみてほしい。 もし伊豆大島周辺に一部武装した中国船が200隻現れたとして、都知事が知らないふりをするということがあり得るだろうか? 「地元の市長として危機感を感じている」 というコメントを出したのは、石垣島の中山市長だった。
■ 領土が減り、領海が減っても平気なのか
さて、今後のシナリオとして考えられるのは、台風などで中国船が一斉に尖閣の島影に避難すること? そうすれば中国の実効支配の第一歩だ。
そこでようやく政府が自衛隊を出したりすれば、中国はここぞとばかりに 「緊張」 を演出するだろう。 原爆投下を仄めかすかもしれない。 たとえそれらが脅しだとわかっていても、私たちはおそらく受けて立つ振りさえしない。 日本人は戦争を放棄した平和を愛する国民なのである!
しかし、現実としては、戦争の方は日本を放棄してくれたわけではない。 このまま眺めていれば、尖閣の次は沖ノ鳥島で、日本はどんどん小さくなる。 国際裁判所に判断を仰いでも無駄だということはすでに証明済みだ。
オリンピックのあいだ、私たちは皆で日本選手を応援し、表彰台の日の丸に感動した。 あの感情は、オリンピックと共にどこからともなく現れて、それが終わると、消えてしまうのだろうか。
いや、今回こそ、オリンピックが終わったら目線を日本の周辺に戻し、いったい何が起こっているのかだけでも真剣に見たほうがよい。 日本がそう簡単になくなるとは思わないが、領土が減り、領海が減っても平気でいるならば、いつか日本は国民を守れなくなるだろう。
それにしても、勝手に国境線を引き、国際判決を紙くずだと切り捨てる国が、国連の常任安保理事国だというのはおかしな話だ。
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