| ルソーと福沢の対話。天皇永続の原因と意義【10】天皇は国民と対立したことが、ほとんどない (15853) |
- 日時:2025年11月20日 (木) 22時11分
名前:政治思想マニア
天皇は国民と対立したことが、ほとんどない
福沢 「ルソーさん。ルソーさんには申し訳ないけれども、日本の王家はフランスやイギリス国の王家とまったく違います。日本の王家は1500年以上続いていますが、国民の反感を買うということがほとんどありませんでした。それどころか、『国民が貧乏なときに自分だけ贅沢はできない』といって何年も御所の雨漏りを修繕しなかった仁徳天皇のように国民から慕はれ尊敬された国王が多かったのです。」
ルソー 「えっ?…そんなことは信じられない。」
福沢 「なぜ信じられないのですか?」
ルソー 「国王というものは必ず人民の自由を奪い、勝手なことをするものです。」
龍馬 「ルソーさんも世界を知らないな…。」
福沢 「ルソーさん。仁徳天皇のほかにも多くの天皇が国民から慕われ尊敬されました。たとえば江戸時代に『天明の大飢饉』と呼ばれる大飢饉が起って、多くの国民が餓死しました。ところが時の徳川幕府はなにも有効な手を打たない。餓死者の数はふえる一方である。国民は、『幕府は頼りにならない』と考えた。」
ルソー 「ほう…。」
福沢 「人々は当時の光格天皇に、『幕府を叱ってほしい』と願い出た。光格天皇は、軍事力も政治権力も経済力も幕府に抑えつけられているにもかかわらず、徳川幕府に、『幕府の米蔵から国民に無料の米をさしだせ。』と命令した。それで幕府が米蔵から米をさしだして多くの国民が救われた…ということがありました。」
ルソー 「え?…それは嘘でしょう?」
福沢 「嘘ではありません。本当のことです。」
ルソー 「とても信じられない。」
福沢 「ルソーさんが信じなくても、これは本当のことです。」
ルソー 「福沢さん。もしその話が本当ならば、それは大変なことですよ。」
福沢 「なぜ、これが大変なことなのですか?…日本人には少し驚く程度のことです。」
ルソー 「福沢さん。よく考えてください。…よいですか。福沢さんが私に語った今の話は、権力者によって軍事力も政治力も経済力も抑えられている国王が、権力者に向かって、『お前の金を国民に与えろ』と命令したということです。…そのようなことはありえない。…そもそも、軍事力も政治力も経済力もない国王が生き続けていることだけでも信じられない奇跡です。まして、その国王が権力集団に命令を下し、さらに権力集団がその命令に従った…などということは、絶対にありえない。」
海舟 「『絶対にありえない』と、勝手に決めつけられても…。」
龍馬 「実際にあったのだから、仕方がない。」
ルソー 「私にはとても信じられない!」
福沢 「ルソーさん。日本ではそのようなことは普通のことです。日本には昔、織田信長という乱暴者がいました。信長は延暦寺という寺院を焼き討ちして僧侶を…つまり、おたくの国でいうと神父さんや牧師さんを…さらに子供など二千人から三千人の首をはねて殺しました。ところが、この織田信長はそのときの正親町(おおぎまち)天皇が大変に貧乏だったので多額の金を寄付しました。さらに信長は自分の家来に、『天皇の御所と京都の町を守れ』と、命令したのです。」
ルソー 「それも信じられない。…そもそも、その織田信長という武士は天皇の首をはねて自分が天皇になればよかった。それなのに、なぜそうしなかったのか。…私にはわからない。」
学生 「そんなこと簡単ですよ。」
福沢 「なんだ。君は。何度もえらそうに…。」
学生 「すみません。僕は塾長先生が作った大学の学生です。」
龍馬 「低能義塾大学ネ」
福沢 「慶應義塾大学です!」
学生 「塾長先生と何度も話ができるから、つい嬉しくなって…」
福沢 「それで君は何を言いたいのだ?」
学生 「織田信長は天皇を利用したのです。その反対に天皇を殺したりすると、国民から猛烈な非難をあびる。だから信長は天皇を利用したのです。」
ルソー 「おや…。」
学生 「ルソーさん。なにか?」
ルソー 「おやおや…。」
学生 「ルソーさん。何ですか?」
ルソー 「なんとまあ…。」
学生 「ルソーさん。一体、なんですか?」
ルソー 「学生さん。あなたは解ったようなことを言いますね。」
学生 「僕はわかっていますよ。高校や大学の先生は、みな僕のように説明しています。」
ルソー 「それでは伺いますが、なぜ軍事力も政治力も経済力も失った国王が、『利用するに値するもの』になるのですか。しかも学生さんは今、『天皇を殺したら国民から猛烈に非難される』と言いましたね。それではなぜ、軍事力も政治力も経済力もない人を殺しただけで国民から猛烈に非難されるのですか?」
学生 「う…。天皇家は優雅で代々続いた家柄だから…。」
ルソー 「それでは事実を確認しましょう。どこの国でも王家は優雅で代々続いた家柄です。もしその理由だけで権力者が王家を滅ぼさないのならば、世界中の王家は今も残っているはずです。しかしわがフランスの優雅をきわめたブルボン王家も、クラシックバレーを発展させたロシアのロマノフ王家も革命で消滅しています。ドイツの王家も同じです。…学生さん。いったい何が、軍事力も政治力も経済力もない天皇家に利用価値を与えたのですか。この『何』を説明してください!」
学生 「う~」
龍馬 「低能!」
福沢 「慶應!!」
ルソー 「学生さん。あなたは、今の日本に天皇家がある理由を説明できていないではありませんか。それなのに、偉そうに解ったようなことを言うものではありません(怒)」
学生 「だったら、ルソーさんは、いま日本に天皇家がある理由を説明できるのですか?」
ルソー 「説明できないから、『信じられない!』と何回も言っているのです(怒怒)」
学生 「そんなことを言っても、天皇は126代連続して1500年つづいているのだから仕方がない…」
ルソー 「なに?日本の王室は1500年も続いている?しかも126代も?……おい!学生さん。」
学生 「な、なんですか。」
ルソー 「言うにこと欠いて見え透いたデタラメを言うものではありません。あなたは真面目に対話する気があるのですか!」
福沢 「もしもし。ルソーさん。学生君が言っていることは本当なのです。126代はどこまで正確かわからないけれども1500年は正確な事実です。」
ルソー 「なに…?福沢さん!」
福沢 「はい…(少し怯)」
ルソー 「福沢さん。あなたまでデタラメを言うのですか!」
龍馬 「これはどうにも…。弱ったなぁ。」
福沢 「ルソーさん。すみませんが、お気を静めてください。ゆっくり説明しますから、最後まで聞いてください。」
海舟 「ルソーさん。ご自身の知識を広めるおつもりで、ぜひ福沢さんのご説明を…。」
ルソー 「わかりました。…それでは次の記事でゆっくり伺いましょう」
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