| ルソーと福沢の対話。天皇永続の原因と意義【7】社会契約(国家を造るときの国民同士の約束) (15849) |
- 日時:2025年11月19日 (水) 18時48分
名前:政治思想マニア
社会契約(国家を造るときの国民同士の約束)
福沢 「ルソーさん。そうするとルソーさんは、目の前のフランス・ブルボン王朝国家を否定して『社会契約論』をお書きになった。それがフランス革命の理論となった。そして実際に、あなたが亡くなった11年後にフランス革命が勃発して、ブルボン王朝は消滅した…。」
ルソー 「その通りです。」
福沢 「それならば…続けてうかがっても良いですか?」
ルソー 「どうぞ。ご遠慮なく。」
福沢 「イギリスにジョン・ロックの社会契約論があり、フランスにはあなたの社会契約論があります。それならば、日本にも社会契約論があっても良いのではありませんか?」
ルソー 「あっても良いですよ。日本に日本的な社会契約論があるのは当然です。」
龍馬 「えっ…。日本にも社会契約論があるのが当然なのですか?」
ルソー 「そうです。私は『社会契約論』の第二編第十一章に、『すべての国の国民は、自分たち固有の歴史と個性にしたがって法を作ることができる』と書きました。日本に、『日本的な社会契約思想』があって、その思想によって日本の憲法や法律が作られる。これは当然のことです。」
学生 「本当かなあ…。」
海舟 「式神!わかっているな。」
式神 「まず、『中公版』の273頁に、『各人民はそれ自身の中に、固有のやりかたで準則を整理し、その立法を自分だけに適合させる何らかの理由をもっている』と、書いてあります。」
海舟 「ふむ。」
式神 「次に、『岩波版』の79頁には、『各々の国民は、それ自身の中に、特別な仕方でそれらの原則を秩序づけ、その立法を彼らのみに固有なものとする、なんらかの原因をもっている』と、書いてあります。」
龍馬 「ふ~む。そうすると、日本人は日本のみに固有な憲法と法律を作ることができる…ということですね。」
ルソー 「そうです。」
学生 「あの~。お取込み中に恐縮ですが、さきほどから皆さんが言っている『社会契約』って、何ですか?」
龍馬 「ありゃ~。この学生は…。わかって話しているのだろうと思っていたら、こいつは全然わかっていない。」
海舟 「こまった奴だ…。」
ルソー 「学生さん。私が言っている『契約』とは、簡単にいうと、『約束』です。また、『社会』とは、具体的には『国家』のことです。だから『社会契約』とは、新しく国家を造るときの人間同士の約束です。この『約束』は個人と個人の約束(プロミス)ではなく、国家建設という公事の約束だから契約(コントラクト)と言っているだけのことです。」
学生 「なんだ。そんなことか。…それならば、偉そうに『社会契約』などと言わずに、『国を造るときの国民同士の約束』と言えば簡単なのに…。」
龍馬 「ばか。その言い方の方が面倒だ。」
福沢 「ルソーさん。ここで話をもどしましょう。…イギリスにジョン・ロックの社会契約論があり、フランスにはあなたの社会契約論があります。それならば、日本にも社会契約論があっても良い…ということですね?」
ルソー 「そうです。日本に日本的な社会契約論があるのは当然です。もちろん、どこの国の社会契約であっても、『自由と平等』という大原則に反することは許されません。しかし、日本の人たちが自分の国の歴史や個性に根付いた日本的な社会契約を行う。そして、その社会契約を根拠とする日本独特の憲法や法律を作る…。これが許されるのは当然です。…それとも何ですか。福沢さん。福沢さんは、『日本やインドの憲法がフランスの憲法と同じでなければならない』と思っておられるのですか?」
福沢 「いや。そういうわけでは…。」
海舟 「う~む。わたしは、『日本に社会契約思想があるのは間違いだ』と、思い込んでいた。」
ルソー 「それは日本の三流ルソー研究者が言い広めた嘘です。おたくの国の学者や研究者は、『何であっても西洋の真似をすれば、それでよい。それが一流だ。』と思い込んでいるのではありませんか?」
龍馬 「そういえば、そうかも…。」
福沢 「ルソーさんのおっしゃるとおりです。日本の学者は学者稼業として楽だから、そうなってしまった。」
海舟 「うむ…。確かにそうだ。明治時代初期の文明開化以来、日本の人文科学と社会科学は完全に西洋中心主義だ。というよりも奴隷根性だ。欧米の言葉を片仮名で表記すれば、その瞬間、その主張はレベルが高くて正しそうなものに見えてしまう。この精神構造が日本近代150年のあいだに庶民の間にまで浸透してしまった…。これは恐ろしいことだ。」
学生 「日本の大学や高校の先生は馬鹿ばかりなのですよ。」
龍馬 「お前は人のことを言える立場ではないだろう。」
海舟 「それにしても、日本的な社会契約思想がありえるとは思わなかった…。」
福沢 「私も同感です。…それならば、世界ではじめてルソーさんのご意見を伺いたいことがあるのですが…。」
ルソー 「なんでしょうか?」
福沢 「神武天皇と言う人が出した『建国のみことのり』と言われる宣言についてです。」
ルソー 「神武天皇。…なんのことか私にはわかりませんが、どうやら今から面白い対話になりそうですね。」
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