| ルソーと福沢の対話。天皇永続の原因と意義【2】咸臨丸の船長室 (15826) |
- 日時:2025年11月15日 (土) 17時43分
名前:政治思想マニア
咸臨丸の船長室
ここは日本ではじめて太平洋を渡った「咸臨丸」の船長室である。
船長の勝海舟と客人の福沢諭吉、さらに幕府の目をかすめて船に乗り込んだ坂本竜馬が天皇について意見を交わしていた。
西洋の本を読んだ多くの学生が「天皇はいらない。共和制が最高の政治形態だ」と主張していたからである。
天皇が消えた日本…。これを想像したことのない三人は、学生たちを説得する理屈を持っていなかった。
いや……もっとはっきり言うと……そもそも日本の王室が外国の王室のように消滅しなかった理由が三人に解らなかったのである。
自分でもよく解らないものを若者に説得できるはずがない。三人の悩みはここに収斂した。
さらに、この船の中には、福沢諭吉が創建した大学の学生がひそかに乗りこんでいた。
その学生も天皇制反対である。
その学生は、「日本の天皇が千年以上も続いているのは日本国の後進性を表すもの。日本はフランス革命のような大改革を行なわなければならない」という考えであった。
学生の友人のなかには、「国家はいらない。天皇も国家も消滅するのが歴史の必然である」と主張する者も少なくなかった。
勝海舟は、日本の若者を説得するには若者たちが尊敬するフランスのルソーに会って、直接ルソーの真意を尋ねる以外にないと判断した。
三人をのせた咸臨丸はサンフランシスコへ向かう針路を急遽変更して太平洋を南下。さらにインド洋を通過してアフリカ大陸の南端を北上。ついに地中海を渡ってフランスに到着した。
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