| ルソーと福沢の対話。天皇永続の原因と意義【1】読者ご理解のための導入部。「かぐや姫と神武天皇の御対話」 (15825) |
- 日時:2025年11月15日 (土) 17時35分
名前:政治思想マニア
竹取のかぐや姫
むかしむかしの大昔。お爺さんが山へ竹を切りに行くと、金色に光る美しい竹が揺れていました。
お爺さんが竹をコンコンと叩くと、中から「出してください。出してください」という声が聞こえます。
お爺さんが竹を切ると、中から光輝く女の子が出て来ました。
お爺さんとお婆さんは、女の子に「かぐや姫」という名前をつけて、自分たちの子供として育てることにしました。
姫が髪を結い上げると、この世のものとは思えない美しさです。
三人の有名な男たちが姫に求婚してきました。
一人目の男は音羽御殿という大きな建物に住んでいる大金持ちで「ハトヤマ」という名前の総理大臣でした。
日本最高の「総理大臣」という日本最高の肩書が姫の心を強く揺さぶりました。
「ハトヤマ」のお爺さんも有名な総理大臣だったのです。
しかし「ハトヤマ」がつい油断して、「日本列島は日本人だけのものではない」と本音を吐いてしまったので、姫に、「ルーピーは火星に帰れ」と言われ、嫌われてしまいました。
その次に、市民活動家という金も名誉もない「カンナオ」という総理大臣に出世した男が求婚しました。
お金にきれいな人生を歩んできた男の生き方が姫の心を強く引き付けました。
「カンナオ」は日本で一番お金に清潔な政治家だったのです。
ところが、この男はなんとキタチョーセンから金を受け取り、それに怒った日本の神々が引き起こした大地震の後片づけに失敗したので、姫から「日本最狂の総理。出て行け!」と言われてしまいました。
最後に、「歴代最高の総理」と呼ばれる男が求婚しました。
この男は、敵が何回モリトモ蕎麦やカケ蕎麦をぶつけても倒れずに平気で食べてしまいます。
絶対に倒されない男の強さが姫の女心を強烈に魅惑しました。
この男は田舎の若い娘たちにも人気があったのです。
ところが、なぜか男の妻の「アキエ」が男の足を引っ張るようなことを何度もしでかします。
ついに男は姫から、「国を治める総理ならば、妻ぐらいしっかり治めなさい」と言われてしまい、泣きながら姫の前から消えていきました。
日本の男たちは誰も姫の心をつかむことができませんでした。
とうとう天皇様が姫の噂を聞いて恋文を送ってきました。
ところが姫は天皇様も袖にしてしまいました。
そして満月が近づいてきたころ、姫が激しく泣くようになりました。
お爺さんがひどく心配して、かぐや姫に泣いている理由をたずねました。
かぐや姫が言いました。
「私はこの国の人ではなく月の都の人です。十五日の満月の夜に月へ帰らなければなりません。お爺さん、お婆さん。長らくお世話になりました」
その満月の夜のことです。
空から月の国の人が雲に乗って降りて来て、「さあ、かぐや姫。月に帰るのです」と言うと、それまで閉めてあったはずの戸がすべて開き、かぐや姫は外に出てしまいました。
かぐや姫は天皇様のために和歌を一首よんで紙に書き、それをお爺さんに渡して、月の人たちと一緒に月の国へ帰ってしまいました。
お爺さんから姫の和歌を受けとった天皇様は、こぼれる涙をぬぐいながら、いつまでも美しく澄んだ満月を眺めるのでした。
月の都のシンデレラ
さて、つぎの日のことです。
月の都に帰ったかぐや姫は、ながらく会っていなかったお友達と久しぶりの再会をはたしました。
最初に会ったのは、フランスから月の国の都へ遊びに来ていたシンデレラです。
「まあ。シンデレラ。お久しぶり」
「あら。かぐや姫。お元気そうね」
「ありがとう。あなたもお変わりない?」
「ええ。元気よ。ありがとう」
シンデレラは口では「元気よ」といいましたが、どことなく寂しそうで元気がありません。
「ねえ、シンデレラ。顔色がよくない。どこか悪いんじゃない?」と、かぐや姫がたずねました。
「実はね……」
シンデレラは少し目を赤くして言いました。
「実は、私の王子様が死んでしまったの」
「え…?病気にかかったの?」
「ちがう。革命が起こったの……」
「革命…?」
「フランス革命」
「え~。シンデレラの王子様はフランス革命で殺されたの?」
「ギロチンで首を撥ねられた」
「うそ~。なんと恐ろしい……」
「だから、もうフランスには帰れない」
「そんな…」
「本当よ」
「それなら、魔法のつえでシンデレラさんを綺麗にしてくれた妖精のおばあさんは、どうなったの?」
「革命軍の銃で撃たれた」
「え~っ」
「本当よ」
「シンデレラさんを乗せて舞踏会へ運んだ黄金の馬車は?」
「おばあさんが死んだ瞬間、もとのかぼちゃにもどった」
「あなたが履いていたガラスの靴は・・・?」
「おばあさんが消えたら、こなごな」
「ひどい話ね……。あっ…。そうだわ。シンデレラさん。あなたにお姉さまが二人いたでしょう。少しいじわるなお姉さまよ。あのお姉さまたちはどうなったの?」
「行方不明」
「行方不明って……。何年間ゆくえ不明なの?」
「フランス革命が一七八九年だから二百年以上ゆくえ不明」
「信じられない…。それで、フランス革命のために何人死んだの?」
「百万人」
「百万人も…?」
「フランス革命がやっと終わったと思ったら、ナポレオンという田舎者が出てきて、『革命を輸出する』などと言って外国と戦争を始めて、それでさらに百万人が死んでしまった」
「うそ~。信じられない」
「本当よ」
「なぜ革命が起こったの?」
「あのころ、王妃マリー・アントワネットが貧しい人たちを馬鹿にしていて、しかも、『パンがなければお菓子を食べればいいじゃない』などと言ってしまって……」
「こういう噂はインターネットがなくても伝わるのが速いのよね」
「私も本当は貧乏な娘だった。だから怒った農民たちの気持ちがよくわかる」
「ねえ。一度フランスに帰ってみたら?」
「今のフランスには王様のいる所がない」
「ベルサイユ宮殿があるわよ」
「宮殿があっても、今のフランスは王様がいることを許さない」
「え…?フランスは王様を認めないの?」
「そう。だから私はフランスに帰れない。シクシク」
「そんなに泣かないで。明日から私がお話の相手になるから」
「ありがとう…」
かぐや姫はシンデレラと別れたあと、むかし自分が棄てた天皇様の一族がまだ地球で生きているのかどうか心配になりました。
かぐや姫は月の王様の御殿に行って、天皇様のことを尋ねました。
月の王様は、「天皇様のご一族はみなお元気で、現在146代目の立派な王様である」と答えました。
姫は安心しました。
安心したら良いことを思いつきました。
「そうだ。明日、シンデレラに楽しいお話が書いてある本を読ませよう。かならずシンデレラが元気になる」
月の都の白雪姫
その次の日のことです。
かぐや姫がシンデレラに読ませる本をさがしに月の都の神保町古書店街に入ると、一軒の古本屋に童話の本が飾ってありました。
姫が店のなかに入って本を開いてみると、面白そうなお話が書いてあります。
昔々のことです。ドイツの国の都に美しい女王様が住ん でいました。女王様は自分が世界で一番美しいと信じて いました。女王様が魔法の鏡の前に立って、「鏡よ、鏡よ 鏡さん。世界で一番きれいな人は誰?」と尋ねると、鏡は 必ず、「それはあなたです。ユリコ知事。お年はまったく 関係ありません。世界で一番あなたが美しい!」と、女王 様の名前を伝えます。女王様は自分が世界で一番美しいと 思って満足でした。
ところが今日の答はいつもと違っています。女王が何度 鏡に尋ねても、かならず「白雪姫」と答えます。
女王様の手は怒りに震えました。女王様は急いで物売りの お婆さんに化け、ひそかに東京都庁を出て、姫の家に行き 「今日は。娘さん。おいしい贈り物だよ。」と嘘をついて、 大きなリンゴを渡しました。「まあ、おいしそうなリンゴ」 と言って姫が一口かじると、姫はバタリと倒れてしまい ました。そのあと家に帰って来た小人の召し使いたちが ひどく悲しんで、ベッドの上に姫を寝かせました。
次の日のことです。たまたま一人の王子様が白雪姫を発見。 かってに家の中に入ってきました。「おお。なんと美しい姫 なのだ。まるで眠っているようだ。」王子様は思わず白雪姫 にキスをしました。
するとキスしたはずみで、毒リンゴのかけらが白雪姫の のどから飛び出しました。それと同時に白雪姫の両目が 開きました。王子の愛でユリコの呪いが解けたのです。 王子は白雪姫に、「今日からずっと私と一緒にいなさい」 と言いました。王子様と結婚した白雪姫は、いつまでも 幸せに暮らしました。
かぐや姫は、この本を読みながら呟きました。
「これだ。この本が良い。シンデレラも王子様と結婚したのだから、この本を読んだらまた元気になる。この本を読ませよう」
かぐや姫が本を買って牛車に乗りこみ、月の靖国通りを新宿方面に進んでいくと、
なんと前の方から本の主人公・白雪姫が七人の小人をお供にして、こちらに歩いて来るではありませんか。
「まあ。白雪姫。月の都に来ていたの?今、あなたの本を買ったのよ!」
「ありがとう。ただ…その本はグリム兄弟がドイツの民話をまとめて書いた本」
「それは失礼しました。それにしても、疲れているよう…。どうかしたの?」
「私のふるさとドイツで革命が起こった」
「えっ…。また革命……?」
「第一次世界大戦の終わりごろに、ドイツの水兵さんと労働者のおじさんたちが暴れて、それで皇帝ウィルヘルム二世がオランダに亡命して……。とうとうドイツに王様がいることができなくなった」
「皇帝ウィルヘルム二世は白雪姫さんのご親戚?」
「私に接吻して私を生き返らせてくれた王子様の父親よ」
「まあ。それはお気の毒…。そうすると、白雪姫はドイツに帰れないの?」
「帰れない。ドイツは共和国になってしまった。シクシク…」
「なぜ革命が起きたの?」
「第一次世界大戦でドイツの人たちが疲れてしまい、ドイツが負けたのにウィルヘルム二世は戦争を終わらせなかった。それで多くの水兵さんと労働者のおじさんたちが怒って暴れた。王様はオランダへ逃げるときに多くのお金を特別列車に詰めこんで逃げた……」
「それでは国民が怒るでしょう…」
「まだある…。国王がいなくなったあとのドイツにはヒトラーというケダモノが現われてポーランドを侵略した。そのときに王様はヒトラーを褒めたたえた……シクシク」
「あきれたこと…」
そのときかぐや姫は、シンデレラも白雪姫と同じように王子様に死なれて悲しんでいることを思い出しました。
「そうだ。この二人を会わせて話をさせれば、二人で心を慰めあうだろう」
こう考えたかぐや姫は、白雪姫と七人の小人を自分の牛車に押しこんで、シンデレラのガラス御殿に連れていきました。
シンデレラのガラス御殿
かぐや姫 「シンデレラ。白雪姫を連れてきました。お気を強く持ってくださいな」
シンデレラ 「どうもありがとう。…でも、フランスの王室が滅んだのは仕方のないこと。だって、王妃マリー・アントワネットは国民を棄ててパリを出るときに、自分が乗る豪華な馬車に銀食器や衣装タンス、多くの食料品、さらに酒蔵一つ分のワインまで積み込んだ。それで馬車の速度が下がって捕まって…とうとう国王ご一家はフランス人から見離されてしまったのだから」
白雪姫 「どこの王様も同じね」
シンデレラ 「かぐや姫さん。あなたが棄てた日本の天皇様は大丈夫?」
かぐや姫 「いまの王様は最初の王様から数えて146代目」
シンデレラ 「まあ…。146代も続いているの?」
かぐや姫 「千五百年は続いている」
白雪姫 「え~。一つの家系で千五百年以上も続いているの?」
かぐや姫 「そう」
白雪姫 「信じられない…」
シンデレラ 「なんと、かぐや姫は、その天皇様を棄てた」
白雪姫 「もったいない…」
かぐや姫 「だって、鳩山由紀夫、菅直人、安倍晋三の次だった。そのあとに石破茂が待っているのよ」
白雪姫。 「それならば当然ね」
シンデレラ 「私も振るわ」
白雪姫 「それならば、なぜ天皇家は千五百年も続いているの?」
かぐや姫 「はて…?」
白雪姫 「ふしぎね……」
シンデレラ 「う~む」
かぐや姫 「あっ…。ひょっとすると……」
白雪姫 「なに?」
かぐや姫 「竹取のお爺さんから聞いたことがある。初代の神武天皇は立派な天皇だったと」
白雪姫 「名前も強そう…」
シンデレラ 「男は強くなければダメ。やさしいだけの男なんて男じゃない」
かぐや姫 「一度、自衛隊に入ってみろ…」
白雪姫 「なんですの?」
かぐや姫 「いや。こちらのこと…」
シンデレラ 「あっ。わかった」
かぐや姫 「なにが?」
シンデレラ 「天皇家が千五百年も続いた理由」
白雪姫 「どうわかったの?」
シンデレラ 「日本の天皇はみな神武天皇を見習って国民のための政治を行った。それで千五百年以上つづいた」
白雪姫 「なるほど」
かぐや姫 「そうだ。それ以外に千五百年も続く理由が考えられない」
シンデレラ 「ねえ…。今から三人で神武天皇のところへ行ってみましょうよ」
かぐや姫 「今から?」
白雪姫 「昔にもどるの?」
シンデレラ 「かぐや姫は牛車で平安時代から飛んで来た。今度は反対に進むだけよ」
白雪姫 「あいかわらずフランス人は走り出すと止まらない…」
シンデレラ 「なにか言った?」
白雪姫 「なにも・・・」
シンデレラ 「だったら、はやく乗って。乗って」
かぐや姫 「これは私の牛車(怒)」
神武天皇の宮殿
かぐや姫 「神武天皇様。こんにちは」
神武天皇 「はい。どなたですかな…。おや。きれいな女性が三人も……」
かぐや姫 「わたくし、かぐや姫と申します」
神武天皇 「ほう…。私の子孫を棄てて月へ行ってしまったという伝説の美女ですな」
かぐや姫 「どうも…。今日は天皇様に伺いたいことがあって参りました」
神武天皇 「ほう…。それにしても、となりの人はどなたかな?」
シンデレラ 「パリのシンデレラと申します……」
神武天皇 「フランスの女性。さすがに輝いておる」
シンデレラ 「それほどでも…」
神武天皇 「いや。さすがに…。それで、そのとなりの人は?」
白雪姫 「白雪姫です。ドイツから参りました」
神武天皇 「やはりドイツの女性は落ちついている。ぜひ妻のアキエに見習ってもらいたい」
白雪姫 「アキエ…。それは何ですの?」
神武天皇 「いや。なに。わが国のことじゃ。たいしたことではない。」
かぐや姫 「天皇様。ひとつ伺ってもよろしいでしょうか」
神武天皇 「なんなりと」
かぐや姫 「天皇様のご子孫が国王として千五百年以上も続いている理由を知りたいのですが…」
神武天皇 「はて…?」
かぐや姫 「かくさずに教えてください」
神武天皇 「本当に知らないのじゃ」
シンデレラ 「神武天皇様のご子孫は世界で一番歴史の長い王家なのです」
神武天皇 「ほう…」
白雪姫 「私もシンデレラも、それが大変うらやましい」
神武天皇 「どうして?」
シンデレラ 「かぐや姫は日本に帰ることができるのに、私と白雪姫は帰れない」
神武天皇 「それは気の毒な…」
かぐや姫 「神武天皇様は何か家訓のようなものを子孫に残しておられませんか?」
神武天皇 「残していない」
シンデレラ 「長く続いている会社には家訓があって、代々の社長がそれを守っています」
神武天皇 「いや…。家訓など残しておらん」
シンデレラ 「それでは政党の綱領のようなものは・・・?」
神武天皇 「わしは、綱領をつくるまえに消滅した鳩山由紀夫の民主党ではない」
白雪姫 「変ですね……」
天壌無窮の神勅
かぐや姫 「それでは、神武天皇様は何かご先祖様から家訓を伝えられていませんか」
神武天皇 「それなら、ある」
シンデレラ 「どのような…?」
神武天皇 「むかしむかし。私の先祖の、その先祖の、そのまた御先祖の…何回やろうか?」
かぐや姫 「一回で結構です。最初のご先祖さまから始めてください。」
神武天皇 「天照大神という神様がおられた」
白雪姫 「人間の先祖なのに神様…?」
シンデレラ 「それはあとで…」
神武天皇 「ある日のこと。天照大神が雲の上から地上をごらんになると、地上の国は争いばかりじゃ。人々は貧しく疲れている。『これはいけない』と思った天照大神は家来を集めた」
白雪姫 「家来も神様?」
シンデレラ 「それもあとで…」
神武天皇 「家来も神様じゃ…。それで天照大神が、『地上の国が乱れている。人々の苦労が絶えない。いまから私の子孫が地上に降りて、地上を平和な国にしなさい』と、命令なさった」
かぐや姫 「それで、だれが地上に降りたのですか?」
神武天皇 「ににぎのみこと」
かぐや姫 「それは、どういう神様ですか?」
神武天皇 「天照大神の孫じゃ」
シンデレラ 「ににぎのみこと…」
白雪姫 「ずいぶん賑やかな名前ですね」
神武天皇 「『にぎわう。にぎやか。にぎにぎしく』は、人が多く集まって活気ある様子じゃ」
かぐや姫 「陽気でけっこうね」
白雪姫 「私の国のドイツは、真面目なのは良いけれども窮屈で……」
シンデレラ 「人のことは言えないのに…」
白雪姫 「何かおっしゃった…?」
シンデレラ 「いえ。べつに…」
神武天皇 「…それで、その『ににぎのみこと』のひまごが私じゃ」
かぐや姫 「そうすると、神武天皇様は天照大神の五代目の子孫…」
神武天皇 「そうじゃ」
白雪姫 「しかし、神様がいつ人間になったのかしら…」
シンデレラ 「あなたもそうとう窮屈よ」
かぐや姫 「その天照大神の命令が、天皇家に伝わる家訓のようなものですね」
神武天皇 「そうじゃ」
神武建国のみことのり
シンデレラ 「ところで、天皇様。日本ではじめて都を作ったのも天皇様ですか?」
神武天皇 「そうじゃ」
かぐや姫 「いつごろ作ったのですか?」
神武天皇 「地上が平和になってきたころに、私が『ここに都を作ろう』と宣言した」
かぐや姫 「だれに宣言したのですか?」
神武天皇 「豪族たちを集めて宣言したのじゃ」
シンデレラ 「どのように?」
神武天皇 「私は天照大神の命令を受けて地上を平定してきた。人々が幸福になるのは良いことではないか。ここで私と一緒に都を作り、国を作っていこう、と」
かぐや姫 「たったそれだけですか?」
神武天皇 「それだけじゃ」
白雪姫 「ほかに何か言わなかったのですか?」
神武天皇 「『ほかに』とは…?」
白雪姫 「たとえば、『私にさからう者はギロチンで首をはねる』とか…」
シンデレラ 「それはフランスへの嫌味?」
白雪姫 「いや。べつに…」
神武天皇 「私は、『みんなが幸福になる国を作ろう』と呼びかけただけじゃ」
かぐや姫 「豪族たちは何と答えたのですか?」
神武天皇 「それが良い。そうしよう。そうしようと…。みんなで約束したのじゃ」
かぐや姫 「たったそれだけですか?」
神武天皇 「そうじゃ…。そのほかに何が欲しいのかね?」
白雪姫 「あまりにも簡単すぎる」
かぐや姫 「ほかに何か言わなかったのですか?」
神武天皇 「『ほかに』とは?」
シンデレラ 「たとえば、『ワシにさからう者は全員ガス室に送る』とか…」
白雪姫 「それはドイツへの皮肉?」
シンデレラ 「いや、別に…」
神武天皇 「そんなことを言われても…。ほかに何もないのだから仕方がない」
かぐや姫 「そうすると、天皇さまは『みんなが幸福になる国を作ろう』と呼びかけた。これは人々との約束ね。だから、神武天皇は子孫への家訓を残していない」
神武天皇 「だから、『家訓など残していない』と、さっきから言っておる!」
白雪姫 「ふ~む」
神武天皇 「ただ…ひょっとすると…ワシが御先祖の命令に従ったから、ワシの子孫もそれを見習ったのかもしれぬ」
かぐや姫 「『御先祖の命令』とは、天照大神の命令ですか?」
神武天皇 「そうじゃ。『私の子孫が地上におりて、地上を平和にしろ』という命令じゃ」
シンデレラ 「その命令が天皇家の家訓となって、神武天皇の子孫もみな家訓を守った…」
神武天皇 「それじゃ。それ以外にワシの子孫が千五百年も続いた理由は考えられぬ」
シンデレラ 「それだけで王家が千五百年も続くかしら…」
白雪姫 「どうも迫力がないわねえ」
神武天皇 「なにか足りないのか?」
シンデレラ 「何かこう…。力ずくで国民を押さえて言うことを聞かせたというような……」
神武天皇 「あっ。それは良くない」
シンデレラ 「どうして?」
神武天皇 「力ずくで上にあがった者は、力ずくで下に落とされる」
シンデレラ 「そう言われれば、そうかも…。」
神武建国の詔には誰もさからえない
神武天皇 「天照大神は、『国民の幸福のために国を治めろ』と命令なさったのじゃ。ワシはその心を汲みとり、国民と約束して一緒に実行しただけだ」
かぐや姫 「あっ!」
白雪姫 「なに?」
かぐや姫 「見えてきた…」
シンデレラ 「なに。なに?」
かぐや姫 「最初に神武天皇が国民と一緒に天照大神の命令を実行した。そのとき神武天皇は家訓を残さなかったけれども、すでに天照大神の命令が『天皇家の家訓』だったのよ」
白雪姫 「しかも神武天皇の次の天皇から見ると、天皇家には家訓が二つある。一つ目は天照大神の『命令』。二つめは神武天皇の『国民との約束』」
シンデレラ 「この二つの家訓は二つあるようだけれども、どちらも『みんなが幸福になる国を作る』という目的だから、本当は一つの家訓」
かぐや姫 「しかも、『みんなが幸福になる国を作る』と言われたら、だれも反対できない」
白雪姫 「それで天皇家が千五百年も続いた」
シンデレラ 「なるほど」
かぐや姫 「だいぶ秘密が見えてきた」
白雪姫 「あ。ちょっと待って。本当に千五百年間の天皇がみな家訓を守ったの?」
シンデレラ 「おう…。それを確認していなかった」
かぐや姫 「う~む」
神武天皇 「千五百年のあいだ、146代ほとんど全ての天皇が家訓を守っているよ」
白雪姫 「なぜ、それが解るのですか」
神武天皇 「守っているからじゃ」
かぐや姫 「だから、なぜ守っていると分かるのか。それを尋ねているのです」
神武天皇 「古宮春人という人が『和歌で読み解く・天皇と国民の歴史』という本を育鵬社から出版して詳しく説明している」
かぐや姫 「それを私たちが買って読むのですか?」
神武天皇 「きみたちが読まなくても、正しいことが書いてある」
シンデレラ 「それでは、私たちは買わずに読んだつもりになっても良いのですね」
神武天皇 「買わなくてもよい」 (本当は、買ってあげましょう)
かぐや姫 「きゃ~。わかった。わかった」
シンデレラ 「こんなに難しいことが解って、最高~~♪♪」
白雪姫 「そうだったのか…。かぐや姫さんの国では天皇様が一番偉い人になることが決まっていて、その天皇様は国民が幸福になる政治を行わなければならない。だから誰も天皇様に逆らわず、126代も天皇が続いたのだ」
シンデレラ 「そういえば、王様と国民が争うよりも王様と国民が協力して良い政治を行うほうが、効率が良いわ」
白雪姫 「国民だって、すぐに意見が分かれて喧嘩をはじめて、結局バラバラになってしまう」
かぐや姫 「そういえば、ミンシュトウ政権…」
白雪姫 「なに?」
シンデレラ 「アメリカの民主党?」
神武天皇 「日本にも民主党政権というものがあったのじゃ」
かぐや姫 「政権を取ってから6年半で党が消滅した」
白雪姫 「たった6年…」
シンデレラ 「それでは、天皇様はすぐにバラバラになる国民を今もまとめているの?」
かぐや姫 「そうみたい…」
白雪姫 「それなら、わたしたちの国の政治よりも、かぐや姫さんの国の政治の方がよほど安定しやすい」
シンデレラ 「そうだ。それもあって天皇家が千五百年も続いているのよ」
神武天皇 「だいたい結論が出たようじゃの」
白雪姫 「神武天皇様。どうもありがとうございました」
三人の娘はふたたび牛車に乗りこんで、月の国の都へ帰っていきました。その夜の月は、かぐや姫に振られた天皇様がいつまでも眺めていた月と同じ十五夜の美しく澄んだ満月でした。
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