| 【シリーズ】親子で読む物語。第17回 日本の国歌「君が代」を大切にしましょう (15665) |
- 日時:2025年07月07日 (月) 01時09分
名前:芥川流之介
日本の国歌「君が代」を大切にしましょう
ある日、小学六年生の次郎くんが学校の玄関に花子さんの教科書が落ちているのを見つけました。音楽の教科書です。あすは音楽の授業があるのに花子さんはすでに家に帰っていました。次郎くんは花子さんの家に教科書をもっていくことにしました。次郎くんが天神様の神社のまえを歩いていると、音楽の教科書をさがしに学校へ行く花子さんと出会いました。「これがおちていたよ」と次郎くんが教科書をさしだしました。「ありがとう」と言って花子さんが教科書を受けとるときに、なぜか神社の拝殿から強い風が吹いてきて教科書がめくれました。教科書のさいごのページが開きました。そこには「国歌・君が代」と書いてあり、「君が代」の歌詞と楽譜が書いてありました。
「国歌か。ぼくは元気の良い国歌がすきだな」と、次郎くんが言いました。花子さんも、「そうね。進め。進め…というような国歌がよいわね」と言いました。すると神社の拝殿がボーッと明るくなりました。夕暮れなのに、誰もいない拝殿が明るくなりました。その光がだんだん強くなり、大きくなりました。ついに拝殿から光があふれて、二人が立っている道にまで光が広がりました。二人のまわりが昼のように明るくなりました。そこへ拝殿の奥から神主のような人が右手に笏を持ち、宙に浮いたまま外に出てきて二人のまえに立ちました。二人はものも言えず驚いてしまいました。
「お前たちはそんなに『進め。進め』の国歌がすきなのか」と、神主さんがいいました。「あなたはどなたですか」と、次郎くんがなんとかたずねました。「私はこの神社の神・菅原道真である。お前たちがそれほど元気の良い国歌がすきならば、フランスの国歌を教えてやろう。フランスの国歌は元気がよいぞ。『いざ祖国の子らよ』ではじまる。そして最後に、『武器を取るのだ、我が市民よ。隊列を整えよ。進め。進め。敵の不浄なる血でわれらの畑を染めあげよ』で終わるのじゃ。おまえたちは、敵の血でわれらの畑を染めあげるのが好きなのだな?」と言いました。「とんでもない」と次郎くんが言いました。「もっとほかの国歌はないのですか」と、花子さんがたずねました。天神様がこたえました。「それでは中国の国歌を教えてやろう。これも元気がよいぞ」
♪いざ立ち上がれ。隷属を望まぬ人々よ。我等の血と肉をもって、我等の新しき長城を築かん…。起て。起て。起て…。敵の砲火に立ち向かうのだ。進め。進め。進め。♪
「どうじゃ。これも元気がよい国歌だ。次郎はこれが好きなのだろう。次郎。大人になったら敵の砲火に立ち向かえ!」と天神様が命令しました。次郎くんは驚いてしまいました。「それでは、君が代の歌は、どのような意味なのですか」と花子さんがたずねました。「よい質問じゃ。もともと君が代の歌は、このような歌だったのだ」と天神様が言いました。
わが君は千代に八千代に細れ石の 巌となりて苔のむすまで
「これは、『天皇陛下のご寿命は永遠に続いていただきたい。小さい石が少しずつ大きくなって大きな岩になり、さらにそれに苔が生えるまでもの長いあいだ』という意味じゃ」。「しかし、これでは『長生きしてください』というだけの歌にすぎないなあ」「そうか。そうか。やはり次郎は『敵に向かって進め。血をながせ…』のほうが好きなのだな」「いや。そういうわけでは…」花子さんが、「この歌はいつ、誰が作ったのですか」とたずねました。「実はな、だれにもわからないのじゃ。むかし私が生きていた平安時代に作られた『古今和歌集』という本のなかに、この歌がのっている。だがこの歌は『詠み人知らず』といって、誰が作ったのか今も解らない歌なのじゃ」「ふ~ん」「しかも、そのころは天皇様だけではなく、自分の親や恋人などの大切な人も『君』と言った。だからこの歌は天皇様だけでなく、自分の親や恋人の長生きをねがう歌でもあったのじゃ。君が代の歌は決して外国の国歌のように王様だけや国民だけを讃える歌ではない」
「あら。それも素敵ね。自分の親や恋人が永遠に生きることを願った歌。その歌をだれが作ったのかわからないけれども、みんなが気に入って長いあいだ歌ってきた」「そうじゃ」「そうか。その歌が自然と天皇陛下の永遠を願う歌になったのだ」「そのとおり」「日本の国歌は天皇様と国民が一つであって、ともに永遠であることを願う自然で愛情あふれる歌なのね」と、花子さんがつぶやきました。「そうじゃ。わかったか。それがわかれば良い」と天神様がいうと、二人のまえからスーッと消えてしまいました。二人のまわりが暗くなりました。二人は別れて家に帰りました。
次の日、学校で音楽の時間に「国歌・君が代」を習いました。次郎くんと花子さんは天神様が言ったことをそのまま音楽の先生に説明しました。先生はひどく驚き、その日から友達はみな二人を尊敬するようになりました。
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