| 【シリーズ】親子で読む物語。第16回 日本の国旗「日の丸」を大切にしましょう (15659) |
- 日時：2025年06月20日 (金) 00時04分
名前：芥川流之介
日本の国旗「日の丸」を大切にしましょう
ある日、太郎君とおじいさんが縁側で将棋を指していました。二人が対戦するたびに太郎君は力をつけて、ちかごろはお爺さんが負けています。そんなおじいさんに気を遣った太郎君は、庭先に飾られた「日の丸」の話を聞くことで、おじいさんのご機嫌をとることにしました。「ぼくの家には、オリンピックで見た『日の丸』の旗がどうしてあるの」「うん。あの『日の丸』は日本の国をあらわす旗だ。世界中の選手は表彰台で自分の国の旗をあげるのが一番の目標なんだよ」と、おじいさんは得意になって説明しました。
「それでは、なぜ日本は『日の丸』なの」と太郎君がたずねました。おじいさんはにこやかな顔で答えました。「今から千四百年以上まえの西暦六〇七年に聖徳太子という人が、そのころ大きくて強い国だった隋（今の中国）という国に手紙を送った。そのとき、その隋の国王に対して、日本のことを『日出ずる国』と呼んだのが始まりなんだ。『日出ずる国』とは『朝日がのぼる国』のこと。太陽は、日本がある東から昇って、中国のある西へ沈む。だから、日本が中国からみて『日出ずる国』なのは間違いないんだ」
「へえ～。しかし朝日は日本から昇って、中国へ沈むといったら、あの大きな国のプライドが許さないんじゃないの」「うん。隋の国の王は少し怒ったといわれている。しかし、それにもかかわらず日本の国を『日がのぼる国』と宣言した聖徳太子の心の中には、本当に日本が『日の国』であるという気持ちが強かったからなのだよ」「ふ～ん。そうなんだ…」聖徳太子によって私たちの国の名前が「日本」となり、そのあとで国旗が「日の丸」になったのです。「日本」と「日の丸」は何と今から千四百年以上も前の日本人の心の中で決まっていたのです。
「しかしね。太郎。聖徳太子の時代から千年以上もすぎた一八六八年に、日本の国が二つに分裂しそうになったのだ」と、おじいさんが言いました。その年に日本で「戊辰戦争」と呼ばれる戦争がおこって、「官軍」とよばれる軍隊と「旧幕府軍」と呼ばれる軍隊が戦ったのです。結局、徳川幕府の影響力をなくして、日本の伝統である天皇を中心とする国づくりをめざした「官軍」が勝ちました。「太郎。この戦争ではどちらの軍隊も『日の丸』を掲げて戦ったのだ。それがなぜだかわかるかい？」と、おじいさんが言いました。戦争に勝った官軍は「錦の御旗」という旗を使いましたが、「日の丸」も掲げたのです。両方の軍隊が同じ「日の丸」を使ったということは、どちらの軍隊も、「われわれは日本の国のために戦っているのだ」という気持ちをもっていたことを表しています。だから戦争が終わったあとに日本の国旗として「日の丸」を使っても、何も問題が起こりませんでした。
たまたまそのころアメリカでも国を二つに分けた「南北戦争」がおこっていました。アメリカ大陸の「北半分の軍隊」と「南半分の軍隊」との戦いです。この戦争では南軍と北軍が別々の旗を使いました。その結果、北軍が勝って、今のアメリカの国旗は北軍の旗をもとにデザインされました。「おじいさん。それなら南軍の旗はもうなくなったの？」と太郎君がたずねました。「実はね、今も南軍の旗を持ち出して町の中を行進している人たちがいるのだ。ところがそれが問題になっている」と、おじいさんが答えました。実際に、数年前にアメリカの政治家が、軍の施設内で南軍の旗をかかげることを禁止しようとしたら、アメリカの大統領トランプさんが反対しました。「言論の自由があるから、南軍の旗を使うことを禁止する必要はない」と言ったのです。
アメリカの人たちが自由と個性を尊重しているのは素晴らしいことですが、そのために国旗や旗の使い方で国が二つに分裂してしまうのは残念です。日本では国旗や旗の使い方で国が二つに分かれることは一度もありませんでした。それは今から千四百年以上まえの聖徳太子の時代の日本人の心の中に、日本が「日の国」であり「日出ずる国」であるという気持ちが既にできあがっていたからです。「だからね。太郎。江戸時代から明治時代に変わるときの『戊辰戦争』が終わったあとに『日の丸』を掲げても、日本の国はまったく分裂しなかったのじゃ」と、おじいさんはうれしそうに言いました。太郎君は「日の丸」に感謝して、今回だけは将棋で負けることにしました。
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