《谷口雅春先生に帰りましょう・第二》

 

本流宣言掲示板」「光明掲示板・第一」「光明掲示板・第二」「光明掲示板・第三

谷口雅春先生に帰りましょう・伝統板・第二
この掲示板の目的
この掲示板のルール
本掲示板への書込法
必ずお読みください
管理人への連絡
重要リンク
TOP PAGE

コピペで文字に色や下線をつけて太字にする方法
 

 

【シリーズ】親子で読む物語。第14回  欲張る心をすてて、正直で勇敢な心を持ちましょう (15654)
日時:2025年05月30日 (金) 22時42分
名前:芥川流之介

欲張る心をすてて、正直で勇敢な心を持ちましょう


〔一〕 
むかし、奈良に深切な歯医者がいました。その近くに住んでいる男が、前歯が虫歯になったので、この医者に一本抜いてもらおうと思って歯医者のところへ行きました。そのころは虫歯を一本抜くと銭二百文(今の二千円)を歯医者に払うことが決まっていたのですが、この男はけちで欲張りだったので、医者に「虫歯を百文で抜いて下さい」と言いました。深切な歯医者は、はじめは「虫歯を抜くだけならば、ただで抜いてやってもよい」と思っていたのですが、男の値切ろうとする気持ちがおもしろくないので、「絶対に百文では抜かない」と答えました。二人はしばらく言い争いをつづけました。

そのうちに男がしびれを切らして、「それならば三百文で歯を二本抜いてくれ」と言いました。男は虫歯でもない健康な前歯とその横の虫歯の合計二本を歯医者に抜かせて、三百文を払って家に帰りました。男は「得をした」と思っていました。しかし男はその日から前歯二本がなくなったので、ものを言っても息が前歯のあったところから抜けてしまって正しくしゃべることができなくなってしまいました。

〔二〕
次は下総の国(千葉県)です。下総国の三山(みやま)村の二宮神社がある森の中にふしぎな洞穴がありました。洞穴はひどく奥深いので、洞穴がどこまで続いているのか誰にもわかりません。ある日、村の男が自分の家の米櫃(こめびつ)から茶碗に一杯の米を入れて洞穴のなかに置いておきました。すると誰も洞穴に近づかないのに米と茶碗が消えてなくなり、そのかわりにその男の家の米櫃にある米が増えていました。米櫃のとなりには男が洞窟に置いた茶碗が並んでいました。

その男のとなりの家に住む女が洞窟のなかに取れたばかりの柿を十個おいて、「わたしの家に柿の実はたくさんあるけれどもお金がありません」と洞窟の奥にむかって言いました。すると女が家にもどったときに洞窟の柿の実が消えてなくなり、そのかわり女の家の玄関の上り口に小判が十枚積んでありました。村の人たちは「あの洞穴にはタヌキが住んでいる」「いや尊い神様が住んでいるのだ」と、色々なことを言いました。そのうち村に噂がひろまりました。「洞穴の奥からものすごい速さで竜神が外へ飛び出した。竜神の目はおそろしく強い光を放っていた」という噂がひろがりました。

そのころこの三山村に正直な男が住んでいました。この男には美しい妻がいたのですが娘を生んだ時に死んでしまい、今は別の女が男の妻になって住んでいました。この女は、五歳になる娘が自分の生んだ子ではないので夫が畑に出て行ったすきに娘を洞窟へ連れ出し、洞窟の奥にむかって「この娘をさしあげますから、どうぞ私が死ぬまで楽しく暮らせるようにたくさんのお金をください」と言って、娘を洞窟においたまま一人で家にもどってしまいました。日が暮れるころに森に強い風が吹き出しました。洞窟の奥から二つの光る目が次第に大きく輝きはじめました。娘はおそろしくなって洞穴を出ました。そのときすでに日が沈んで真っ暗になっていました。しかし娘は洞窟から出てくる強い光で道を見ながら家に帰ることができました。

娘は男にとりすがって、「こんなことがあった」と伝えました。男はひどく驚きました。男が娘の話を聞いているときに、洞窟から飛び出した竜神が家の中に入ってきました。竜神の目は大きく、爛々と輝いていました。それを見て男が勇気を出して、「この娘は私の娘だ。洞窟へ行った女は娘の母ではない。女の言うことを聞いてはならぬ。たとえ竜神であっても実の父である私の許しなく娘を奪ってはならない。はやく消え去れ」と言うと、竜神は娘を放っておいて女に巻き付いて強く締め上げ、女を放り出したあとに再び宙に浮いて洞窟のほうへ飛んで行きました。

竜神が飛び去ったあと、男と娘が家の中を見ると部屋の奥に大判小判が山のように積んでありました。二人はそのお金で、死んだ女のために立派な墓を作りました。そのあと男と娘は大判小判を使って死ぬまで豊かに楽しく暮らしました。大判と小判はなぜか二人が三山村のためにどれほど使ってもまったく減らなかったということです。

(『沙石集』の二話を翻案)





名前
メールアドレス
スレッド名
本文
文字色
ファイル
URL
削除キー 項目の保存


Number
Pass
SYSTEM BY せっかく掲示板